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掃除できない女が、会社で掃除の英才教育受けた話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ひより(ライティングゼミ日曜コース)
 
 
私は掃除が嫌いだ。
理由は簡単。面倒くさいからである。
部屋なんて人生の控室みたいなもので、メインステージは外の世界。
メイクとか服とか、外から見えるところが綺麗ならそれで良い。
わりと本気でそう思っていた。
 
今の会社に入るまでは。
 
私の勤め先は、創業70年の歴史を持つ小さな会社である。年季が入った見た目はもちろん、業種的にも、お世辞にも華やかとは言えない。
そんな我が社だが、訪れる方々からは「綺麗な会社ですね!」とお褒めの言葉を頂く。
つい先日も、ピカピカの床を見て土足禁止と勘違いしたお客様から「スリッパはどこですか?」と聞かれて驚いた。
それほどまでに徹底しているのである。私の苦手な、掃除と整理整頓が。
 
社内でローテーションする掃除当番は、掃除機、拭き掃除、トイレ掃除ととにかくやることが多い。それも事務所の隅々まで徹底して行う為、それぞれ1時間はかかる。その間、仕事はそっちのけである。
大掃除ともなれば、最早社員総出の一大行事だ。私が特に驚いたのは、60本近くある蛍光灯を1本1本全て外して布巾で拭う作業と、掃除機を分解して洗うこと。そもそも掃除機が分解できることを知らなかった。
文句ひとつ言わず、黙々と作業する掃除ハイの先輩達を目の当たりにし、新入社員はみな一様にドン引きするのである。もちろん、私もその一人だった。
 
そんなピカピカの職場で働いているからだろうか。以前は気にも留めなかった自分の部屋の有様に、帰宅する度ギョッとするようになっていった。
机の上にはメイク道具が散乱し、クローゼットに収まりきらない服が床に山積みになっている。しわくちゃのシャツと思われるものを拾い上げると、大量の埃が舞って思わず顔を背けた。
 
どうして今まで平気だったんだろう。
 
ふと見ると、くすんだ鏡に映った自分と目が合ってしまった。
まるで、部屋と一緒に自分も汚れていくみたい。そう思った瞬間、私の掃除スイッチがONになるのを感じた。
 
まず食事を忘れるほどの集中力で断捨離を行い、出たゴミの量は45リットルの袋5つ分にも及んだ。小さな部屋によく収まっていたなと苦笑する量である。
こうして無駄な物が無くなってしまえば、自分の部屋ひとつ掃除することくらい何てことはない。
手順は身体に叩きこまれているので、億劫になる暇もなくテキパキと進んだ。
掃除嫌いは、いつの間にやら克服されていたのである。
会社で受けた掃除の英才教育に、心から感謝した。
 
掃除を終えて、気が付いたことが3つある。
まず、掃除は汚れたらやるというものではなく、汚れが付かないように日々行うものだということだ。掃除が日常の一部になると、当然部屋はいつも綺麗である。やがてはその状態が自分の「普通」になってくる。そうなると、以前は気にも留めなかったちょっとした汚れに敏感になり、すぐ対処するのでもう部屋は汚れない。自分の中の「普通」の基準を上げることも、掃除の目的のひとつなのだ。
 
2つ目は、自分が大切に出来る量しか、持ってはいけないということである。
物にしても部屋にしても、手入れが行き届かない所から汚れていくからだ。
その限界は人によって違うので、日々の掃除や整理整頓を通して把握しておく必要がある。
例えば可愛い服を沢山揃えてみても、その全てを使いこなせるとは限らない。
私の場合、平日は制服で仕事に行くので尚更だ。
その点、少数精鋭の服でまとめられたクローゼットはお手入れ楽々である。
買う時も相当厳しく吟味するようになった為、無駄な買い物が減った。
物を大切にするということは、買い物をする時から始まっているのである。
 
そして3つ目は、先の2つが掃除だけでなく、生活のあらゆる場面で活かされるということである。
細かい変化に敏感に気が付く力も、問題に気づいた時点で即行動に移す瞬発力も、散らかった部屋で生活していた頃には無かったものだ。これが今、仕事でとても役に立っている。
又、大切に出来る量を持つという概念は人間関係でも活きている。
以前は、SNSで沢山の人と交流する友人を見る度に羨ましく思っていた。
しかし最近は、心から信頼できる人がほんの数人いてくれるだけで、人生は十分に豊かだと思っている。そんなかけがえのない人達と、そこから繋がるご縁を、ひとつひとつ大切にしたい。
 
掃除命の会社に感化され、今では随分綺麗になった私の部屋。
気持ちが明るくなったからか、以前は絶対に手を出さなかった明るいパステルカラーがクローゼットに並んでいる。
ストレス食いが無くなった為体重がすとんと落ち、家族や久しぶりに会う友人からも変わったね! と言ってもらえることが増えた。
 
掃除は、ただその場を整えるためのものではない。
数えきれない程の教訓が詰まった、まさに人生のレッスンである。
 
部屋なんて人生の控室だと思っていたかつての私には、その通りだと伝えたい。
だからこそ、手をかける必要があるのだ。
万全の準備があってこそ、メインステージで輝けるのだから。
 
 
 
 
***

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2021-05-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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