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黄色い帽子のおじさんが増えれば子どもも大人ももっとハッピーになるのかもしれない


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記事:内藤睦(ライティング・ゼミ書塾)
 
 
子どもが生まれて以来、昔見ていた幼児番組やアニメをよく見る。
「おかあさんといっしょ」やドラえもん。ハイジやアラレちゃんなどをスマホで見せることもある。
そうやってかつて見ていた番組を見ると、いろいろ新たな発見がある。子どもの目線よりも大人の目線で、共感したり反発したりするのだ。
 
「おさるのジョージ」は、私が子どもの頃にあった「ひとまねこざる」シリーズの絵本が、アニメシリーズになったものだ。
アニメでは、ジョージがいろんなことを観察したり原因を考えたり、試してみたり、とジョージの好奇心旺盛さをうまく科学的な考え方の学びに活かした、オリジナルストーリーを展開している。
でも基本な話の流れは、
①ジョージが何かやらかす・もしくは思いついて試してみる
②うまくやろうと試行錯誤するがなかなかうまくいかない
③最終的にはハプニングが解決したり挑戦がうまくいったりして結果オーライ、ハッピーエンド
で、どれも一緒である。
 
このアニメを大人目線で見ていて気になるのは、ジョージのやらかすコトの大きさである。
おつかいを頼まれたものを、思いついた実験の材料にしてしまって全てムダにし、買い直すなんて序の口である。
ドーナツを1ダース買うはずだったのに100ダース買ってしまう。しかも大量のドーナツを小部屋に隠ぺいし、その部屋の扉を開けたおじさんはドーナツの雪崩に遭う。部屋も服も床もベタベタになるではないか!!
洗剤を一箱丸ごと無駄にしたり、1階を水浸しにしたりといったエピソードは、住まいへ与える被害がおそろしい。
 
でも、保護者である「黄色い帽子のおじさん」は寛容だ。ジョージが毎回何かやらかして被害を受けても、ほとんど怒らない。
いつでも「おまえはどうしたい?」とジョージの意見を尊重するし、よき理解者で「すごいぞ!」と褒めることも多い。
育児情報サイトやブログなどを見ると「彼のジョージへの接し方に育児スキルを学ぶ」といった類の文章があった。おじさんのように「きちんと説明し、失敗しても頭ごなしに怒ったりしないできちんと説明し、チャレンジさせてあげて褒めてあげましょう」というわけだ。
 
確かに、おじさんがジョージに対して接する態度には見習うものはある。
おじさんが寛容に見守るお陰で、ジョージは自主的に行動することで、いろんなことを学んでいる。サザエさんと同じく年を取らない設定なのだが、人間の子どもなら、きっと知的にスクスク成長しているだろう。
 
しかし。現実にあり得るのだろうか。そんなに心にも時間にも懐にも余裕がある育児が。
世の保護者は忙しい。仕事に家事に育児とタスクはいっぱい。夫婦で分担できる場合もあればできない場合もある。
子どもがグズグズしていたら目指す電車に乗れなくなるかもしれない。
寄り道しないで早く帰らないと晩御飯の用意が遅くなり、なし崩し的にその後も遅くなって寝かしつけも自分の睡眠時間も減ってしまう。
 
黄色い帽子のおじさんは、普段は高層マンションに住んでいるが田舎に別荘を持っていて、けっこう資産家のようだ。博物館で仕事をしていて、時間には比較的余裕があるようだ。
それだけお金と時間と心に余裕があるから、ジョージに対しても余裕を持って接することができるのではないだろうか。
 
先を見越しながら日々の食事の用意やお風呂の支度や洗濯などのタスクをこなそうとしたら、少しの時間のムダもなんだか惜しい。子どもの行動に寄り添って見守るだけの時間や心の余裕はなくなりがちである。黄色い帽子のおじさんのようになるのは難しい。
ああ、私ってダメな親なのかしら。
 
でもそこでふと思った。
これって、余裕があるないではなく、行動の自由を許してもらえるかもらえないか、ではないだろうか?
 
黄色い帽子のおじさんは、帽子だけでなく、黄色いワイシャツに黄色いネクタイ、黄色いズボンと、全身ほぼすべて黄色のコーディネートだ。
おじさんの回想シーンによると、少年の頃にはすでに帽子を始めトータルコーディネート黄色である。
自分の子どもがもし10歳かそこいらでそんなことをしようものなら、全力で止めない親がいるだろうか。いや、いない。
私たちの多くは、子どもの頃やりたかったことを、大人である親の目から見て「社会的に見てそれは〇〇だから△△しなさい」という形で行動を軌道修正させられた経験があるのではないだろうか。「周りの人に〇〇と思われたら恥ずかしいから△△しなさい」とか「迷惑かけないように××しなさい」とか。
日本人は、そうやって自分のしたいことよりも「社会から見たらどう見られるか」を気にしながら行動するようになる気がする。それが親から子に伝わる。
 
かたや、欧米的な子育ては、「あなたはどう思うの?」と、子どもでも意見を尊重しているといわれる。
アメリカにホームステイした時、滞在させてもらったお家では、子どもが「野菜は食べたくない」と言えば親はそれを尊重して無理に勧めなかった。教会に行く時に、親が「きちんとした服を着なさい」と何度か言っても子どもが頑として受け入れない場合、親はため息をついて諦め、カジュアルな服装のまま連れて行った。
 
私ならそこで子どもを一喝してしまうだろう。
でもそれは、私も子どもの頃にそうされたからなのだ。
子どもなりに「こうしたい」と言っても「何言ってんの!子どもだから何もわかってないんだから親の言うとおりにしなさい!」などと一喝され、却下された。
だから、自分の子どもに対しても、子どもの意見や行動を認めずに大人の規範に合わせた行動をさせる方向になりがちだ。
 
「日本は子育てしにくい社会だ」と度々言われる。
電車の中で赤ちゃんが泣くと迷惑がられるのは、「公共の場では静かにするという大人のルールが守れないなら連れてこないで」ということなのだろう。赤ちゃんなりの行動が尊重されにくい。
でもひょっとしたらそれは、日本では多くの大人が子どもの頃に、子どもらしい行動を叱られ、させてもらえなかったからかもしれない。
だから大人になってから、周りの子ども達が子どもらしく動こうとすると大人の規範に当てはめて考えようとする。子どもが大人の規範に合わせられないと、その親を咎めがちなのではないだろうか。
 
だとしたら、私たちはもう大人になってしまったけれど、できるところでもっと自由に行動してもいいのかもしれない。
ご飯の用意や掃除を少し簡単にして、自分の好きなことをする時間を作る。「親が笑顔だと子どもも笑顔になる」という言葉がある。それは、単なる顔マネというだけでなく、親が少し自由で気楽になって笑顔になることで、子どもに対しても「あなたも自由になっていいのよ」と強要しなくなるからではないだろうか。
そうすれば、結果的に「なぜこの人は〇〇しないのかしら」といった、他人に対する自分の持つ規範の強要をしなくなって、「自分は自分、他人は他人」と受け入れられるようになり、結果的にみんな生きやすくなるのではないだろうか。
 
そのためには、自分がしたいことをして、子どもにもしたいことをさせる。
黄色い帽子のおじさんが、黄色いものしか身に着けないことを、おじさんの親が許したように。
 
黄色い帽子のおじさんのような大人が増えることは、子どもが喜び自分の自主性を持つことにつながるだけでなく、
大人もハッピーにするのではないだろうか。
 
 
 
 
***

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2021-05-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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