小説の中のロックンロール
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:川口 公伸(ライティング・ゼミ「超」通信コース)
中学生の頃に音楽に興味を持ち始めた。
当時、既に流行りの音楽ではなくなっていたフォークソングというジャンルを聞くようになったのがきっかけだった。
そこからギターの弾き語りというものに興味を持つと、自分でもギターを弾けるようになりたいと思うようになった。
それまで、楽器は音楽の授業以外ではやったことがなかったが、教則本に沿って練習し、それなりに弾けるようになった。
それからしばらくすると、好きなミュージシャン影響を受けたというビートルズに興味を持つようになった。
これがロックというジャンルの音楽との出会いだった。
フォークソングからロックへ興味が移ったことで変わったのは、バンドというものへの憧れだったのかも知れない。
実際に高校生になってからはバンドを組んで、学園祭で演奏したいと思い、仲間を集めてバンドを組んだ。
しかし、当時の僕たちは楽器もほとんど出来ず、音楽についてあまりにも知らなかった。
結果的に、話だけ盛り上がったが学園祭のステージに立つどころか、ほとんど練習をすることもないままバンドは解散となった。
それでも、バンドへの憧れだけは残った。
そんなこともあり、小説でもバンドについて書かれたものを好んで読む。
それは、芦原すなおさんの「青春デンデケデケデケ」だったり、熊谷達也さんの「オヤジ・エイジ・ロックンロール」や「ティーンズ・エッジ・ロックンロール」など、書店で見つけては、気になる本を読んだ。
そんな中で、個人的に引き込まれたのは、越谷オサムさんの「階段途中のビッグ・ノイズ」という作品だった。
この作品では、廃部を言い渡された軽音楽部が学園祭で演奏をするまでが描かれている。
高校の学園祭で演奏するという目標があの逢の僕たちと重なったのだろう。
決して恵まれた環境ではない中で、仲間を集め、目標に向かっていく姿に共感した。
あの日自分たちができなかった事を、物語の中の主人公たちが叶えてくれた。
この作品で演奏されているのはほとんどがカバー曲だった。
僕たちが盛り上がったのも、実際は曲を決める事だったのかも知れない。
オリジナルの曲をやるということは一切考えていなかった。
「あの曲をやろう」とか、「この曲のボーカルは誰がやる」とかそう言ったことが一番盛り上がったのかも知れない。
そしてそこに技術が追いつくのかどうかという問題が出てくるのだろう。
物語の中でも、顧問の先生が助っ人としてステージに立っている。
さらに、取り上げられているのがカバー曲であるため、原曲を聞くことで演奏シーンを感じることができる。
実際にこの小説で知った曲も多く有り、聴く音楽の世界も拡がった。
本来であれば、文字のみで書かれた小説なので音を感じることは無いはずなのだが、原曲を聞くことで学園祭でのライブについてイメージすることができた。
最近では音楽の構成も変わり、世界的なギターメーカーの経営も厳しくなっているということもニュースで流れていた。
ギターがメインとなっているロックという音楽は時代遅れとなりつつあるのかも知れない。
既にビートルズはいなくなってしまった。
世界的に活躍をしているバンドも解散だったり、活動を休止したりということも続いている
それでも、かつてビートルズに憧れてギターを始めた人達が沢山いて、その人達が組んだバンドがあった。
そのバンドに憧れた僕は、バンドを組んで学園祭のステージに立ちたかった。
この作品の主人公も、兄が高校生の頃に学園祭で演奏している姿を見て、憧れて高校の軽音部に入る。
しかし、時代は変わっており、軽音部は廃部寸前の状態。
さらには、上級生の不祥事から廃部を言い渡されるところから物語が始まる。
それでも厳しい条件の中から、活動を続け、仲間を集め学園祭でのライブを成功させる。
諦めないで行動をしていくことで、目標を達成させる。
あの頃の僕たちは、バンドを組んで演奏したいと話は盛り上がったが、行動が伴わなかった。
あれから、20年以上たった数年前、偶然のきっかけからバンドを組んで演奏することができた。
練習のためにレンタルスタジオに入ったことや、どんな曲を演奏するかと言った話し合いは今でもとても楽しいものだった。
そんな思いがあったからなのかも知れないが、この作品はとても好きな作品となった。
時に、文字しか書かれていない小説の中からロックンロールが聞こえることもあるようだ。
僕にとって「階段途中のビッグ・ノイズ」はそんな一冊だった。
***
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