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80年代に青春を謳歌したあなたにおすすめ! あの頃の恋愛の記憶に染みるミステリー

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記事:田中真美子(リーディング倶楽部)
 
 
1980年代後半、あなたは何をして過ごしていましたかー?
 
80年代後半といえばバブル景気にわいた華やかな時代だ。
私はまだその頃は子供だったのでその浮かれた時代の恩恵は受けていない。
もしかしたら自分の父母が受けたバブルの恩恵を間接的に受けていたのかもしれないが、それは小さな子供だった私にはわからぬことだ。
 
私の80年代のイメージといったらあれだ。クリスマスだ。
山下達郎のクリスマスイブをBGMに牧瀬里穂(A BATHING APE を立ち上げたファッションプロデューサーのNIGOの奥さん、APEももう古いのかな)が新幹線で帰ってくる彼氏を待っているJR東海道新幹線のCMが特に記憶に残っている。
 
他にも、女性の結婚適齢期がクリスマスケーキに例えられ、24歳までは売れるけど、25歳をすぎると売れなくなっちゃう、みたいな風潮があった。
今の世でこんなことTwitterでつぶやこうものなら、各方面からバッシングされて大炎上するだろうなぁ。
 
さらに、クリスマスイブは恋人と一夜を過ごす大事なイベント日として認知されていて、都会では1年以上前からクリスマスイブに高級ホテルの部屋を予約しないと取れなかったそうだ。
 
80年代後半から10年以上経ったバブル崩壊後の90年代後半に貧乏くさい青春時代を過ごした私たちロスジェネ世代からすると、夢のような時代だ。
この時代に青春時代を過ごすことができていたなら……、って憧れたことがある40代は私だけではないはずだ。
 
さて、そんな80年代に青春時代を謳歌した、現在50代の皆さんに特におすすめしたい、とっておきのミステリー小説がある。
乾くるみ氏の「イニシエーション・ラブ」だ。
 
舞台は1980年代後半、物語はちょっと冴えない男子、主人公の鈴木君が代打で呼ばれた合コンでマユという可愛い女の子に出会って恋に落ちるところから始まる。
 
ひと目見た時からマユに惹かれた彼と、彼の友人やマユの友人も交えてともに青春を過ごす中で、次第にマユも鈴木君に心を開いていき、やがて二人は恋に落ちて……という、爽やかな青春ストーリーが展開される。
 
ところが、それで終わらないのがこの作品のミステリーたる所以(ゆえん)である。
 
本作はside-Aとside-Bの二部構成になっているが、side-Aで展開された爽やかな青春の一幕から様子が変わり、side-Bでは鈴木とマユの間に不穏な空気が流れ始める。
 
ネタバレになるのでここで多くは語らないが、最後まで読み進めると、鈴木の視点を通して恋の始まりから終わりまでを追体験することができる。
まさにタイトルにふさわしく、青春時代に誰もがイニシエーション、通過儀礼として経験した甘酸っぱい恋愛の追体験だ。
 
そしてラストにはあっ! と驚く衝撃の展開が待っている。
 
文春文庫版の裏表紙には「最後から二行目(絶対に先に読まないで! )で、本書は全く違った物語に変貌する。」とあるがまさにその通り、本作が傑作ミステリーと呼ばれるにふさわしい仕掛けが隠されている。
 
作中には80年代後半に大ヒットしたドラマのタイトル「男女7人夏物語」や、80年代に活躍したロックバンド「BOØWY」の名前が出てきたり、当時の流行や時代背景がわかる用語がふんだんに散りばめられ、それ読むだけでも80年代を知る人にとっては懐かしく、楽しんで読むことができるだろう。
 
しかし、それだけでは終わらない。
最後まで読むと作者の緻密な計算が仕掛けられていることに気付く。
きっと読んだらまた最初から読み返えさずにはいられないだろう。
 
最初に私は80年代に青春を謳歌した方におすすめ、とお伝えしたが、そうでない人にもぜひ読んでもらいたい。
恋愛は普遍的なテーマなので共感できる部分があるし、ミステリーとしても傑作だからだ。
実際、私も80年代は子供だったが非常に面白い作品で、あっという間に読み終わってしまった。
 
80年代に青春していた方にはよりおすすめだ。
現在50代の男性に本作を貸して読んでもらい、感想を聞いたのだが、当時を懐かしみ、主人公の鈴木に共感しすぎて、最後までこれがミステリーだと気付いていなかった。
 
私にとっては衝撃のラストに気付かず読み終わったその男性がミステリーだ。
 
このように、「イニシエーション・ラブ」は80年代がドンピシャの人もそうでない人も楽しめる作品だ。
まだ80年代は生まれていなかったという若い人には80年代の若い男女の描写はかえって新鮮に映るかもしれない。
読者の世代によって、色んな受け取り方のできる作品なので、様々な世代の人で読んで感想を言い合ったりしてみると面白いかもしれない。
 
ちなみに、本作は2015年に松田翔太主演、前田敦子ヒロインで映画化されている。
「映像化不可能」と言われてきた本作の映像化にどんなトリックが使われたのか、原作を読んだ後もまた新たなミステリーとして楽しむことができるので読後に映画を観るのもおすすめしたい。
 
 
 
 
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2021-05-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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