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歌舞伎町ホストクラブの歴史に学ぶ、ビジネスの基本

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記事:田中真美子(リーディング倶楽部)
 
 
煌びやかなホストクラブ、世の女性で一度は覗いてみたいと興味を持ったことがある方は少なくないのではないか。
 
私が若かった頃、1990年台後半から2000年代にかけては、ちょうどホストブームっぽいものがあって、テレビに出演して有名になったホストも何人かいた。
ホストクラブへ潜入したり、お店を紹介するような番組も結構あったような気がする。
 
テレビで紹介されるような一流店はとても豪華な内装で、同じく紹介されるホストもカッコいい人が多く、丁寧に扱われてチヤホヤされてみたい! と思ったものだ。
 
一方で、芸能人や女社長などのセレブみたいに、お金をいっぱい持っている人でないと敷居が高いのではないかと感じたり、ボッタクリなどの怖い目にあったりしないか、とホストクラブに対してネガティブなイメージもあった。
 
行ってみたいな、と興味は持ったことがあるものの、やはり怖さもあって未だホストクラブへ足を踏み入れたことは無い。
 
そんな私のような庶民が持つ、ホストクラブへの漠然とした興味の一部を満たしてくれる本がある。
 
「夢幻の街 歌舞伎町ホストクラブの50年」だ。
著者は石井光太氏で、主にノンフィクションを中心に執筆活動をされている作家の方だ。
初版は2020年9月と最近出た本で、新型コロナウイルス感染拡大に関しても言及されている。
小池百合子東京都知事が夜の街への外出を控えて、と記者会見で述べていたように、歌舞伎町のホストクラブなどの風俗営業がクラスター感染の震源地として槍玉にあがっていたのは記憶に新しい。
 
本書では、ホストクラブが生まれてから現在に至るまでの歌舞伎町ホストクラブの歴史を知ることができる。
 
歌舞伎町のホストクラブといえば愛本店、ニュー愛といった店名を聞いたことがある方は多いのではないか。
その愛本店、ニュー愛を経営していた故愛田武社長が率いる愛田観光が歌舞伎町でホストクラブを始めて成功するまで、ニュー愛で12年連続でナンバーワンホストを務め、メディア露出で世間一般にも有名人となった零士の生い立ちから成功まで、などテレビにも良く出ていたホストのサクセスストーリーなんかは、割ととっつきやすく、非常に読みやすい。
 
さらに本書の中で時代が進むにつれて、様々なホストのエピソードが紹介される。
次々と登場するホストの名前にどんな人物なのか興味が湧き、本を読みながらスマホに登場するホストの名前を打ち込んで画像検索したくなるので手元にスマホは必須だ。
 
さて、ホストクラブは程遠い世界だと思って読み進めていたのだが、読んでいくうちに自分の仕事で直面しそうなことや、役に立ちそうなことが書かれていることに気付いた。
 
バブル崩壊やリーマンショック、石原慎太郎都知事が進めた歌舞伎町浄化作戦、風営法の改正など、ホストクラブ業界もその歴史の中で何度も危機に直面してきた。
その危機を乗り越えられた店、乗り越えられなかった店、それぞれのエピソードが紹介されているのだが、乗り越えて生き残った店には共通点があり、それは一般企業においても十分に参考にできる内容だと感じた。
 
一つは経営者に人を惹きつける魅力、人間性があることだ。この人と一緒に仕事がしたい、共に店を盛り上げていきたいと思わせる魅力がトップにあるからこそ、多くの人財が店に集まるのだ。
元ホストで成功したホストクラブ経営者の中には、D・カーネギーの名著「人を動かす」を読んで経営手法や人心掌握術を学んだ経営者も登場する。
 
次にビジョンを明確に持ち、それを経営者が従業員であるホストと共有し後継者を育成できているか。例えば元カリスマホストがお店を開いてお客を集めたとしても、経営に回ったカリスマホストのネームバリューだけではいつかはお客様は離れていってしまう。
しっかりと後進育成ができる仕組みを作りホスト育成できているかどうかが継続してお客様を集める鍵となる。
 
最後に複数店舗展開により大組織化、多角経営を成功させていること。
単独店舗の経営でなく、複数店舗を展開しグループ展開していた店は体力もあり危機も乗り越えられたようだ。
さらにホストクラブ経営だけでなくグループ企業として美容院やジム、さらに芸能事務所まで経営しているグループもあり、それぞれがシナジー(相乗効果)を発揮することで業界トップの座を獲得するに至ったようだ。
 
いかがだろうか。いずれもホストクラブ以外の一般企業でも通用することではないだろうか。
本書に登場するエピソードの中でも私が特に驚き、感心したのは元カリスマホストの手塚マキ氏が経営するスマッパ! グループの取り組みについてだ。
ホストのボランティア団体を立ち上げ、歌舞伎町の清掃活動に取り組んだり、清掃ボランティアのNPOに加わったり、新潟中越地震の際には新潟まで義援金を届け避難所を訪問したり、社会貢献活動に力を入れているようだ。
 
社会貢献活動を通してホストを育成し、成長したホストが店を盛り上げることで訪れたお客様がさらに満足し売上が上がる。売上が上がることでホストの生活も安定するし、社会貢献を通じて世間に認められることにもなる。
近江商人の「三方よし」の考え方に通じるところがあるなと私は感じた。
 
ホストクラブの歴史ってどんなものだろう? と単純な好奇心から読み始めた本書であったが、読み終わった時には、これはビジネス書としても読めるな、という感想を持った。
荒くれ者のホストをどう束ねて経営手腕を振るうか、といったエピソードなど男性にも多いに参考になるところがあるのではないか。
男女ともにおすすめしたい一作である。
 
 
 
 
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2021-05-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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