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てりやきバーガーは哲学の味

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:林豊秀「ライティング・ゼミ超通信コース」
 
 
「あのさ、てりやきバーガーってどうやってできたか知ってる?」
 
当時付き合ってた彼女にこう尋ねられた。
 
とある日曜の昼下がり、ドライブの帰りに立ち寄った大手バーガーチェーン店でのカップルの他愛もない会話。
 
 
こういう場合、男側の態度は聞いてるのか聞いてないのかはっきりしないのが常だ。
僕もご多聞にもれず、気のない返事で「さあ? 知らない……」と返した。
 
 
「うーんもう……相変わらずね。でも何故か聞きたいでしょ?」
 
軽く眉をひそめた彼女に、このままじゃさすがにまずいかな……と思った僕は、少し反応よく、「まあね……」と返事した。
 
 
「仕方ないなあ。じゃあ教えてあげる……」
 
 
少し機嫌が治った彼女は、嬉しそうに話し始めた。
 
 
「昔あるところに、アメリカ人の旦那さんと日本人の奥さんがいて……」
 
「旦那さんはハンバーグが好きで、そればっかり食べてるの。でもね奥さんはどうしても和食というか日本のものが食べたくて、食べたくて……。そんな中二人がおいしく頂ける、満足できるものは何かないかなって考えて、てりやきバーガーを思いついたんだよ!」
 
 
「……」
 
なんとまあ稚拙なオチだこと。
 
というか、確かてりやきバーガーの発祥は大手のMバーガーだ。
バリバリの日本企業だし、ちょっとそのパターンはないんじゃないか?
 
微妙なオチに満足できなかった僕は、そんなことしなくても交代で洋食・和食を変わりばんこに食べればいいのでは? と返してみた。
 
 
そうすると彼女は軽く首を振りながら、諭すような表情で答えた。
 
「だって、それじゃあ常にどちらかが我慢してるってことになるじゃない? そんなのいやだよ!」
 
 
「……」
 
 
 
後日、確か会社関係の飲み会でだったと思うけど、酒の肴にこの話をした。
するといろんな本を読み込んでいる同期の奴に、「お前の彼女ってすごい哲学的だな」と言われた。彼曰くこの考え方は「弁証法」ってやつに似ているらしい。
 
「弁証法」とはドイツの哲学者ヘーゲル、もしくはマルクスによって定型化された、哲学的思考だ。
 
その論理の骨子は、以下の正・反・合のかたちで表される。
 
正(テーゼ)     ・・・主題、命題、主張、自説
+ 反(アンチテーゼ)  ・・・否定、対立、矛盾、他説
= 合(ジンテーゼ)   ・・・正・反の対立・矛盾が統合された状態
 
例えばAという主張【正(テーゼ)】をもっていたとすると、その反論や対立する考えB【反(アンチテーゼ)】を、包括的に統合したC案【合(ジンテーゼ)】を生み出そうとするものだ。
 
簡単に言えば、「対立する2つの事柄を、どちらか一方を選択することでなく、安易な妥協もせずに、同時に満足させるアイデアを見出す」ということだ。
 
てりやきバーガーの話に戻すなら、
ハンバーグか和食かどちらかを選択するということでなく、
ある時は洋食、ある時は和食というように妥協するのでなく、
お互いが常に納得するような解=てりやきバーガーを見出すということになる。
 
 
なるほど……
 
現金なもので、アカデミックな方向から説明を受けると妙に納得してしまう。
と同時に、「あいつ、こんないいことを言ってたのか……」と彼女に感心した。
 
そして何と言っても、
ジンテーゼという言葉の響きと、対立を解消しつつ両者を満足させる考え方がとてもクリエイティブでクールに感じた。
 
 
 
それから僕は色んな場面で、この弁証法の考え方を取り入れるようになった。
特に仕事の面で有益な切り口になることが多かった。
 
例えば、
頻繁な仕様変更による納期問題で対立していたわが社の営業と工場のケースでは、仕様変更と納期の両立→全ての変更が納期に直結するのか?に着目し、変更した際の納期延長日数を部位別に表にし営業に配布して解決したり……。
 
そういう意味で「弁証法」は、僕のバイブルのうちの一つとなっていったような気がする。
 
 
 
それから2年ほどの月日が流れて……
僕たちは別れることになった。
 
残念ながら彼女が教えてくれた哲学を二人の間には適用することはできなかった。
ジンテーゼどころか安易な妥協さえできなかった。
 
後から思うと……
てりやきバーガーの話は、いや彼女の作り話は、単純に僕に対するメッセージだったのかもしれない。
そういう意味で僕は彼女の思いをくみ取らず、思考だけを摘み取ったのかもしれない。
 
でも長い人生でみたとき、僕らの別れは悲しいだけではないはずだ。
この別れという反(アンチテーゼ)は、僕らそれぞれの方法での合(ジンテーゼ)をとおして、きっと互いの成長へ導くのだから。
 
 
 
現代は、分断と対立にあふれている。
 
コロナにおけるマスクやワクチンに対する考え方の相違しかり、状況はますます悪化してるように感じる。少し前で言えば大統領選もそうだ、相変わらず戦争の火種も消えない。
 
こんな時代だからこそ相手を理解し、互いの主張を合(ジンテーゼ)することが必要だ。相手の主張する反(アンチテーゼ)こそが自分を高めてくれるという意識をもって……。
 
日曜の昼さがり、あの頃のようにてりやきバーガーをほおばりながら僕はそう思った。
 
元気にしてるかな……、理恵ちゃん。
 
 
 
 
***

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2021-06-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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