サイコロを振るのは誰だ
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:西片 あさひ(ライティング・ゼミ超通信コース)
「ごめん。謝らないといけないことがある」
夏のあの日。
その文から始まるメールを見て、私は唖然とした。
え、どうして?
あれだけ応援してくれたのに。
何かの間違いに違いない。
そう思い直して、もう一度内容を読んでも結果は同じ。
なんだかめまいがしてきた。
ぐるぐるしながら私は4ヶ月前のことを振り返っていた。
中学三年生の春。
私は恋をした。
相手はクラスメートの女の子(以下、Aさん)。
三年生になって初めての登校日。
通っていた中学校では一年ごとのクラス替えだったので、この日はドキドキだった。
いったい、誰と一緒のクラスになるんだろう。
みんなと仲良くなれるかな。
そんな気持ちでいっぱいだった。
そして、Aさんは現れた。
ぱっちりとした目。
すらっとした見た目。
人なつっこい表情。
一瞬で恋に落ちたのが分かった。
このクラスになって本当に良かった。
そんなことを思ったのを今でもよく覚えている。
中学校に入ってから、「志望の高校に合格すること」が私の目標だった。
しかし、この日を境に目標が一つ増えた。
それは、「Aさんと仲良くなって、付き合うこと」。
なんとしても、この目標を達成するぞ。
そう心に誓い、行動を開始した。
さっそく、Aさんに必ずあいさつするようにした。
朝、教室に入ったら「おはよう」、夕方授業が終わって帰るときは「またね」と声をかけた。
Aさんは笑顔で返してくれた。
「この笑顔を見るために、学校に通っているんだ」
声をかけるたびに、舞い上がっていた私。
しかし、一ヶ月ぐらい経ってから、あることに気付いた。
それは、女の子と話すのが、私にはとても苦手だったことだ。
男友達とは何の気兼ねもなく話すことができた。
しかし、女の子とは緊張して何を話していいか分からなくなってしまうのだ。
ましてや、好きな女の子ならなおさらだ。
あいさつ以外、何一つAさんに話しかけられなかった。
まずい。
このままじゃ、いつまで経ってもAさんと仲良くなれない。
悩んだ私は、クラスメートの男友達(以下、Bくん)に相談することにした。
Bくんはとてもフレンドリーな性格。
誰とでも仲良く話すことができる人物だった。
私とBくんは教室の席が近かったこともあり、よく話をしていた。
「Bくんならきっといいアドバイスをくれるだろう」
そう思った私は、Bくんに相談することにした。
私の話を聞いたBくんは力強く言った。
「俺がAさんからいろいろなことを聞いて、西片くんに伝えるよ」
「西片くんとAさんが付き合えるようにプロデュースするから、任せてくれ」
本当に頼もしい味方ができたと思った。
Bくんについて行けばきっと上手くいく。
そんな気がした。
Bくんを経由してAさんのことを知っていった。
好きなキャラクターの話、アーティストの話。
Bくんから話を聞いてさ。と言って、Aさんにいろいろな話を振った。
Aさんは笑顔で私に話をしてくれた。
本当に嬉しかった。私に笑顔で話してくれている。
このまま行けば、もしかしてAさんと付き合えるかも。
既に大きな勘違いにしていることに、気付いていなかった。
夏休みに入ると、AさんともBくんとも、しばらく会わなくなった。
Aさんとはまだ直接会えるような関係じゃなかったし、Bくんは部活三昧の毎日。
夏休みが明けたら、Aさんに話しかけてもっと仲良くなるぞ。
定期的に来ていたBくんからの連絡がないことを気にもせず、中学生最後の夏休みを堪能した。
そして、ついにその日がやってきた。
8月はじめの夏休みのある日。
しばらく連絡が来ていなかったBくんから、突然メールが来たのだ。
「お、久しぶりだな」
そんなことを思いながらメール画面を開くと、思いも寄らない内容が書かれていた。
「ごめん。謝らないといけないことがある」
「俺、Aさんと付き合うことになった」
目を疑った。
なんで?
あれだけ、私を応援するって言ってたのに。
そんなそぶり全然なかったのに。
いろいろな気持ちが込みあげてくるが、言葉にならない。
理由を聞いてみると、実に簡単なことだった。
Bくんによると、はじめは私のためにAさんと話していた。
しかし、そのうちBくん自体がAさんと仲良くなり、付き合うことになったとのことだった。
しばらく連絡がなかったのは、私に申し訳ない気持ちでいっぱいだったかららしい。
図らずも、私がAさんとBくんのキューピッド役になっていたのだ。
ひどい。
俺のこと、だましていたのか。
Bくんには怒りを覚えた。
私はあんなに頑張っていたのに。
ん、待てよ。本当に頑張っていたのか?
はっとした。
そもそも、私が間違っていたのではないか。
Bくんに全部委ねていたのだ。Aさんと仲良くなる方法を。
私は自分自身の頭で考えず、ただ乗っかっていただけ。
本当にAさんと仲良くなりたかったら、付き合いたかったら、自分で努力しなければならなかったのだ。
そのことに気付いてから、Bくんへの怒りは減っていった。
むしろ、自分の振る舞いに恥ずかしくなった。
そして、AさんとBくんが付き合ったことに素直に喜べるようになった。
あれから、およそ20年。
あの時の教訓は今でも生きている。
人生、上手くいくこともあれば、そうでないこともある。
時には、難しい判断を迫られることもあるだろう。
しかし、これだけは言える。
どんなときも大事なことは自分で考え、決める。
自分の人生のサイコロは自分で振る。
そうすれば、たとえ失敗したとしても後悔なく過ごせる。
そう思えてならないのだ。
***
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