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お弁当の3原則と攻略法


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記事:かりんとう(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
小学校の頃、遠足の一番の楽しみはお弁当だった。黄色に輝く卵焼き。我が家ではお弁当の日にしか食べられない特別な食べ物。優しい甘さがじんわりと口に広がる。驚いたのは、それが砂糖の甘さだってこと。お料理に砂糖を使うと知ったのは遠足から20年も経ってからだった。
 
お弁当の唐揚げも大好きだった。大きくて柔らかいお肉。家で食べる唐揚げとはまた違う。そう、我が家のお弁当の唐揚げは冷凍食品だったのだ。それでも、大手食品会社に研究された味はやはり美味しい。
 
これらが食べられるのは、お弁当のときだけ。お弁当は特別なもの、との図式が私の中に形成されていった。
 
時は経ち、今や私が子どもの為にお弁当を作る方になってしまった。が、料理はてんで苦手。毎回ネットで簡単お料理を調べながら、なんとか家族のごはんを作り上げる。こんな私にとって、お弁当作りはまさに苦行だ。
 
子どもが保育園に通っていた頃のこと。月に一度のお弁当の日が近づくと〆切前の漫画家のように追い詰められていった。食を大切にしていた園で、冷凍食品は禁止。白砂糖禁止。手作りで、野菜たっぷりの栄養バランスが取れた彩りの良いお弁当を作らねばならない。
1週間前から私でも作れそうなおかずのリサーチを開始。ネットで調べたり、スーパーの惣菜コーナーをチェックしながら勉強し、おかずリストに書き出していく。茶色のおかずばかりだと園から注意されるので、彩りよく。赤、黄、緑の3色が入るように。毎月だいたい10種類ほどのおかずをピックアップしていた。
前日にそのメモを片手に買い出し。お弁当を詰めて隙間があるといけないので予備のおかずの材料も購入。いろんな野菜を使うため、材料費は毎回6,000円ほどかかっていた。
 
研究の結果、お弁当の3原則を作り上げたのもこの頃。
 
① まとまりのある形(ぽろぽろするものは食べにくい)
② 水分少な目(水分が出ると隣のおかずと混ざったり、夏場は腐りやすくなる)
③ 場所を取るもの(ミニトマト、卵焼き、芋類など固形のもの。野菜炒めなどは形がないためお弁当箱が埋まりにくい)
 
この3つを念頭に、作るおかずを厳選する。なにせお弁当の日は子どもにとって特別な日。失敗は許されない。
 
さて、お弁当作り前日は早目に就寝。たいてい上手く作れるか心配でなかなか眠れないまま朝を迎える。4時に起き、お弁当作りスタート。外はまだ真っ暗だ。料理は段取りというけれど、料理苦手の私は段取り苦手。なかなか並行して作れず、1品1品順番に作る。卵焼きは巻くのに失敗し、2回3回作るのが常。1回で卵2個使うので、計6個。鶏さんごめんなさい。他のおかずも失敗してもいいように多めに準備。ようやくお弁当を詰め終わるのは6時頃。もう外は明るい。
 
2時間かけて出来上がった努力の結晶は、おにぎり、唐揚げ、3度目の正直卵焼き、沢庵をぶっ刺したちくわ、さつま芋のはちみつ煮、きゅうりの塩もみ、ミニトマト、スナップエンドウ……。赤、黄、緑色が揃った、いわゆる普通のお弁当の出来上がり! 達成感! 料理下手は、普通をこなすのに5倍の時間と労力がかかるのだ。今月もやり切ったよ、わたし!
 
小学校、中学校でも、お弁当の日はときどきやってくる。もう誰にも怒られないけれど、冷凍食品は悪い気がして使わないし、彩りもバランスもやっぱり気になる。気合いを入れてがんばった。いや、気合いを入れなければお弁当は作れないのだ。
 
こうして毎月がんばってお弁当の日を乗り越えていたが、このあとお弁当ミッションはラスボスのステージへと急展開するのである!
 
その名は、子どもの高校入学に伴う「毎日お弁当」。
子の成長と共に上達するはずの料理スキルはなぜかまったく変わっていない。どうやら毎回動画の通りに作るだけで頭を使わないから身に付かないらしい。さすがに今までのお弁当作りを支えた「早起き」の力技も、毎日は体力的に無理だ。どうしよう!
 
追い詰められた私が思い出したのは、自分の子どもの頃のお弁当だった。遠足のときの砂糖入りの卵焼きと、冷凍食品の唐揚げだ。それは、紛れもなく美味しく食べてもらいたい、との母の愛情弁当だった。
 
ああ、私「ねばねば星人」になっていた。
ちゃんと作らねば。彩りよく作らねば。身体にいいものを作らねば。
その「ねばねば」は、誰のため? なんのため?
 
そう、すべて自分の自己満足のためだったのだ。
 
すっと肩の荷が下りた。
それから、料理が苦手でもできる「毎日お弁当」攻略法を書き出した。
 
① おかずは作り置きできるよう日持ちするもの2,3日分を前日の夜に作って、タッパーに入れ冷蔵庫保存。
② お弁当箱が埋まらないときのために冷凍食品もスタンバイしておく。
③ 週の真ん中水曜日は旦那にお弁当作り当番をしてもらう。
 
①おかずは事前に準備して、当日の朝は詰めるだけの状態にしておく。また、2,3日同じおかずが続いても問題なし。ちなみに、詰めるだけで4月は30分かかっていたけれど、6月には15分で詰め終わるようになってきた。成長だ!
 
②冷凍食品など文明の利器にも頼ろう。これは心のゆとりを生み、夜も安心してぐっすり眠ることができる。お弁当を作り続けるには健康第一!
 
③月~金まで毎日お弁当作りは気が休まらない。料理好きの旦那の手も借りる。ありがたいことに旦那も週に1度なら、楽しみながら作ってくれている。
 
卒業まで約800回のお弁当。
ラスボスの攻略法は、「大丈夫」の呪文を唱えることだった。
 
「同じおかずで大丈夫。手作りでなくても大丈夫。人の助けを借りても大丈夫。」
 
ねばねばの呪縛から逃れるために、こう自分に言い聞かせ、私は今日も明日のためにお弁当を準備している。
 
 
 
 
***

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2021-06-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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