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問題の本質とは? 庭木の剪定から学んだ怒りの対処法


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:相澤 めぐる(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「やっぱり高い脚立がないと無理かもねぇ」
伸び放題の庭木の枝を見上げて、私はため息をつく。
狭いマンション庭ではあるけれど、我が家には前の住人が植えてくれた椎の木や梅など数本の庭木がある。いつもは年に一度、馴染みの植木屋さんにお願いして剪定をしてもらう。ところが、コロナ禍の昨年は、我が家の近くの病院でクラスターが発生したこともあり、高齢の植木屋さんに剪定を依頼するのをためらってしまった。ステイホームで時間はたっぷりある。自分で手入れをしてみるのも悪くないかも。そんな軽い気持ちで庭仕事に取り掛かった。
 
マンションの1階の庭に植えてある木なので、高さはそんなにない。2階の部屋のベランダには届かない程度だ。びゅーんと持ち手を伸ばすことができる高枝ハサミは以前購入していたので、それと3段の脚立でなんとかなると思っていた。
 
ところが。
なかなか上手く届かない。
脚立に乗り、高枝バサミを精一杯伸ばして狙った枝を切ろうとする。しかし、それは目当ての枝とは違っている。もっと新芽が出ている飛び出た枝を切りたいのに、届いてエイッと切ったのは、全く別の枝。枝の生え際の方も、モサモサと葉が茂っているので、今ひとつよく見えない。それで、冒頭のセリフとなったわけだ。
 
もう諦めようかと思ったけれど、とりあえず根本の生い茂っている葉だけでもスッキリさせる作戦に変更することにした。チョキチョキチョキ。おっ、これならいい感じで切れるかも。
チョキチョキチョキ。もう少し切ってみる。すると、視界が開けて、切りたかった枝がどこから生えているのかがわかった。
 
「もしかしたら、この生え際を切ったら切りたかった枝に繋がっているのかも」
チョキン、と切ってみる。
当たり!
目当ての枝が根本の方からバッサリ切れた。
 
当たり前だけれど、枝は幹から生えている。伸びた枝先にばかり着目するのではなく、生え際を見極め、そこを切ればいいのだ。それなら充分手持ちの道具で届く。
それからは、私は夢中になって剪定を続けた。
チョキチョキチョキ。爽快感。
 
全く別の話になるようだが、怒りに対しても同様のことが言えるのかもしれない。
私はここ何年かの間、キレること、怒りが爆発してしまうことについてよく考えていた。
子どもが10年前に生まれてから、私は些細なことでキレることが増えた。子どもに対してではない。それは母に対してだったり、夫に対してだったり。しかも、同じ出来事に対して、腹が全く立たないときもあるのだ。自分でもわけがわからなかった。
 
でも、この庭木の剪定をしながら、ふと思いついた。
「もしかしたら、怒りにも元の部分があるのかも」
 
キレる時や怒りが爆発する時は、その直前の出来事がきっかけだと考えがちだ。でも、それ以前に何かしら怒りや不満を感じるものが少しずつ積み重なっていて、自分でも気づかないうちにそれが溢れそうになってギリギリを保っているところに最後の一撃でキレてしまうのではないだろうか。
 
子どもが小さいときは、全てが子どもの都合で動く。
洗い物の途中だったとしても、赤ちゃんが泣いたらおっぱいをあげたり、オムツを替えなければいけない。えーと、どこまで洗ったっけ。やっとお昼寝してくれたから、この間に夕飯の支度をしよう、でも少しだけスマホをチェック。えっ、もう起きちゃった! 結局、夕飯の支度ができてないや。
 
こんな感じで、全てが中途半端なまま。その場その場で時間が止まる。細切れで毎日が進む。それは、気が付かないうちに大きなストレスになっていたのだと思う。それでも、子どもは可愛いし、成長も楽しみだ。喜びも大きいから、フラストレーションが溜まっていることには気づかなかったのだ。
 
まだ息子が幼稚園に入る前だったと思う。いつもなら私と息子でお風呂に入るのだけれど、その日はちょうど夕方にお風呂場で水遊びをして、息子だけ簡単に入浴を済ませたことがあった。ああ、今日は久しぶりにゆっくりひとりでお風呂に入れる、湯船にも存分に浸かれるとウキウキしていた。仕事から帰った夫が先に入浴して、その間に夕飯を温め直し、さあ、お風呂に入ろうと裸になって浴室に入ったところ、お湯がない! なんで?!
 
たぶん、人生で一番くらい、私はブチ切れた。
夫がいつもの習慣で、自分が最後だと思ってお湯を抜いてしまったのだ。「私もまだ入ってないからね」と言っていたにもかかわらず。
ほとんど泣きそうなくらい怒っている私に対して、夫は、「またお湯をはればいいじゃん」と困惑しながら言ったが、結局その日は私もシャワーで済ませた。自分でも、なんであんなに怒りが爆発したのかわからなかった。でも、とにかく悔しくて、悲しかった。
 
今ならわかる。私は疲れていたのだ。いっぱいいっぱいだったのだ。
小さなフラストレーションが少しずつ少しずつ溜まっていて、お風呂のお湯を抜かれてしまったことが最後の一撃となったのだ。
 
怒りの根本がわかったからと言って、それをどう対処すればいいのかはまだわからない。でも、ブチ切れのきっかけとなった直前の出来事にばかり着目するのではなく、疲れていないか、不満は溜まっていないか、自分の様子に普段から目を向けることが大切なのではないかと思う。最後の一滴が溢れるまで溜めておくのはよくない。溢れる前に出すのだ。
 
生え際はどこか、生い茂った葉を切って、問題の本質が見えるように整理する。そうすることで、きっと爆発する前に怒りを上手く対処できるのではないかと思う。
 
スッキリした木を見上げ、私もスッキリした気持ちに気付いた。
 
 
 
 
***
 
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2021-06-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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