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祖母の死で、生を思う


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記事:川島志保(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
私の育ての親でもあった祖母が令和3年4月27日午後6時に永眠した。
かぞえで99歳、実年齢は97歳だった。
 
うちは岐阜の片田舎にあり、当時にしては珍しく両親が共働きだった。母は看護婦で、勤務も不規則だったため、毎日父方の祖父母の家に預けられていた。祖父母の家から幼稚園に行き、祖父母の家に帰宅し、夕飯を食べ、お風呂に入って、両親の帰宅を待った。
 
物心つく頃からそんな生活を送っていたため、小さい頃の私にとって祖母が「母」だった。
おばあちゃんと呼びながらも、その存在は母よりも重かった。
 
そんな祖父母とも、大学で岐阜を離れてからはあまり会わなくなった。
帰省しても友人や家族と過ごすことが多く、祖父母の家には顔を見せにいくだけだった。
ましてや、就職し、結婚し、家を構えてからは、1時間も祖父母宅に滞在することなんてなく、「いつもまた来るねー」と言い置いて帰ってきた気がする。
 
いつでも会えると思っていたし、いつでもそこに居てくれると思っていた。
それなのに、久しぶりに祖母とゆっくり過ごしたのがお通夜だったなんて。
 
祖母が亡くなる前、転院先の病院がコロナ感染を防ぐため面会が一切できなくなると聞き、顔を見に行ったのが祖母と言葉を交わした最期となった。
 
その時からある程度の覚悟はしていたはずだった。
訃報を聞いて、体調がおかしくなった。
祖母が亡くなった実感は一切持てず、ただただ力が出なかった。
幸いにも亡くなった翌々日がお通夜となったため、それまでに体調を整える時間はあるな、祖母も楽になれたのかなとすら思っていた。
 
お通夜で棺桶に横たわる祖母を見るまでは。
 
そこにいたのは祖母だった。けれども、祖母はもういなかった。
人が亡くなるとは、こういうことなのだと「死」を初めて体感した。
祖母の死はわかっていたことなのだから、涙なんて流さないだろうと思っていたのに。
「死」を体感して、よろめいて思わず棺桶を掴んでいた。
涙が溢れて止まらなくなった。
 
もう、おばあちゃんはいない。
 
寂しい、というより、ただ悲しさがこみ上げてきた。
喪失感。
 
近しい家族を亡くすのは、これが2度目だ。
祖父は20数年前に亡くなったが、当時は学生で今回ほどの衝撃はなかった。
 
だからお通夜からお葬式、お葬式から火葬場、火葬場からのお寺へと、人が亡くなった後の一連の儀式を体験するのは今回が初めてのようなものだ。
 
亡くなった人を弔うためにお通夜やお葬式をするのだと思っていた。
でも、今回のように儀式に全て参加していく中で、
残された人が気持ちの整理がつくように、
大切な人が亡くなったという現実を受けいれることができるように、
手順を踏んで行うものであるような気がしている。
 
お通夜で、祖母に向かって話しかけ、
叔母や従兄弟たちとやいのやいのいいながら祖母の思い出を語り合った。
お葬式で、和尚さまのお経と説法を聞いている間に、
少しずつ自分の感情が落ち着いていった。
 
そして、火葬場にて、
骨と化した祖母の姿を見た。
 
……人間いつか骨になるのだな。
 
どんな金持ちだろうが、どんな偉い人だろうが、太っていようが、美人であろうが、
死んだら人間、骨になる。
 
最後は骨なんだ。何も持っていけない。ただ骨になる。
 
では人間の生きる目的はなんだ?
私たちはなんのために生きているの??
死ぬこと?死ぬことが最終目的なの?
 
月並みな台詞が、脳裏に浮かぶ。
 
生きている間に何をするのかだ。
所詮最後は骨になることを知っていれば、
生きている間に何をしたのか。
いろんな体験をたくさんして、この世をしこたま楽しむのだ。
 
相手が生きていれば、声をかけた時に返事が返ってくる。
その返事をどう解釈するのか、それは生きている人間の想い。
 
相手が死んでいたら、返事は返ってこない。
でも、心の中にいる祖母はなくならない。
生も死も全ては、生きている人間の想い次第だ。
 
昔は死がもっと身近な存在だったはず。
昔の子どもは、早くから「死」を体感することが多かっただろうなーとも思う。
でも「死」を体感すれば、それだけ「生」に向き合うことができる。
 
私もそうだ。祖母の死によって、改めて自分の生を振り返っている。
 
祖父母宅は本家なので、
週末になると近所に住む親戚が顔をだしていた。
すると必ずみんなでご飯を食べていた。
 
一人で過ごすことが好きな自分だけど、
大家族で育ってたんだなぁということも思い出した。
 
あらためて、祖母に感謝の気持ちでいる。
毎日ご飯作るの大変だったろうになぁとか。
(……毎日の献立や食事の準備がどれほど大変だった、今だからわかること。卵は近所の卵屋さんで、バケツ単位で購入していたことも思い出した)
祖母から受けたものを祖母に全部返すことは無理だったけど、
小さかった私が見えなかったこと、
わからなかったことが、
改めて祖母の式を通して見えた。
自分の原点、人間関係における原風景も祖父母宅にあったことも。
 
ありがとう、おばあちゃん。
 
 
 
 
***
 
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2021-06-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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