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梅雨を楽しくする梅仕事


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:串間ひとみ(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
6月と言えば梅雨。雨が降り続く、どちらかと言えばあまり好ましくない時期だったが、今の私には、6月ならではの、ちょっとした楽しみがある。それは梅仕事だ。
 
2016年申年、私は初めて梅干し作りに挑戦した。
 
「申年の梅は薬になる」という、料理教室の先生の言葉に興味がわいた。その時はあまり深く考えなかったけれど、12年に1回しか作れないという特別感が、私を梅干しづくりに向かわせた。限定品とか、レア物という言葉に弱いのだ。
 
調べてみると、平安時代、第62代の村上天皇(ちなみに今の天皇は126代目)が流行り病を梅干しで治したとか、江戸時代の申年に流行った病に、梅干しを食していた人はかからなかったとか、申年は天変地異が起こることが多く、梅が不作になるためその年の梅は貴重になることが多かったとか、「申」と「去る」をかけて、「悪いことが去る」というダジャレ的なものまで、諸説あるらしい。
 
そもそも、梅干しにはどんな効果があるのだろうか?
 
その効能を調べてみると、梅干しが流行り病を治したとか、病気の予防に役立ったというのは、あながち嘘でもないのではないかと思えてくる。もちろんすべてに、医学的見地がどれほど見込めるか、詳しくは分からないが、効能としては以下のようなものがある。
 
よく知られているのは、強い殺菌作用や抗菌作用による、食中毒防止だろう。お弁当に入れて、その保存性をあげるという使い方は、お弁当生活を1度でも経験した人は、おそらく知っている代表的な効能だ。
 
個人的に1番嬉しいのが、強力な抗酸化作用。人間の老化は、活性酸素が体を錆びさせる(酸化させる)ことが、原因の1つと言われている。梅干しの中に含まれるポリフェノールの一種が、これを抑える効果があるというのだ。いわゆるアンチエイジング効果。
 
また、クエン酸による疲労回復効果。体内にたまった疲労物質である乳酸を体外に排泄するのを促してくれることにより、疲れが取れるというのだ。梅干しの酸っぱさが苦手という人もいると思うが、クエン酸によるものなので、疲労回復物質の味だと思ったら、少し好ましくなるのではないだろうか。
 
他にも、ピロリ菌の働きを抑える、腸内環境をととのえる、胃腸機能を高める、食欲増進、二日酔い防止にもなどなど、いろいろあるらしい。
 
そしてこれからの季節は、塩分とクエン酸を含む梅干し入りの水分を摂取することで、熱中症予防にもなりそうだ。
 
そんな日本のスーパーフードとも言える梅干しだが、作り方はいたって簡単。程よく熟した梅の実を洗って水けを拭き取り、ヘタを取って、塩をまぶす。白梅酢がでてきた、段階で梅漬けと呼ばれ、2~3週間すれば食べることができる。これに塩もみした赤紫蘇を加えて色付けをする。これを7月に土用干し(天日干し)すれば、出来上がり。
 
梅干しを作るついでに、梅酵素ジュースも作る。冷凍した梅と白砂糖を瓶の中に、ミルフィーユのように交互に重ねていき、1日1回手で混ぜ合わせるだけで、2週間ほどで出来上がり。
 
どちらも作る工程は、シンプルなのだが、これがとても楽しいのだ
 
まず、熟した梅の実の香りはうっとりするようないい香りがする。青梅を購入して、熟していくのは待っている間、部屋中がこの香りに包まれ、幸せな気持ちになる。梅の実の香りのルームフレグランスがあったら欲しいくらいだ。残念ながら、梅の花のフレグランスはあっても実の方は、お目にかかったことがない。
 
次に、1つ1つ、ヘタを取っていく作業なのだが、水洗いの段階で自然に取れてしまうもの、竹串で取る際にポロッと気持ちよく取れるもの、なかなか取れないもの、ヘタ1つとっても個性がある。意外と集中してやってしまう作業だ。
 
梅に塩をまぶして白梅酢を出す作業。本格的にやる人は、かめを利用しているのだろうが、私は、ジップロックか果実酒用の瓶を使っている。ジップロックの場合は、上下を変えたり、瓶の場合は転がしたりしながら白梅酢が出てくるのを待つ。重しがなくても、それなりに白梅酢が出てくる。作り始めてから、このやり方が失敗したことは1度もない。難しそうな作業も、家にあるもので、代用できるのだ。
 
赤紫蘇の色だしは、塩をまぶした赤紫蘇を、ひたすら絞ってアクを抜く作業。1年分の握力を使い切る勢いで、絞るので、手の疲労が半端ないが、白梅酢に漬けた途端、びっくりするようなきれいな赤色になる。まるで魔法をかけられたようだ。
 
そして土用干し。7月の晴天が3日続く日を選んで、干す。3日3晩、徐々に水分が抜けて小さくなっていく姿は、エネルギーをぎゅっとため込んでいくようで、愛おしい気持ちになる。
 
こうして、自分が手を加えたものが、少しずつ形を変えて、自分の身体にいいものになっていく様は、面白い。難しそうだと思っていたことができることも嬉しいし、シンプルだけど、1つ1つの作業は、丁寧にやっているので、これらの作業をしている間、自分自身と向き合っているような気持ちになるのだ。
 
普段食べているもの、特に加工品は、どのように作られているか分からないものも多い。食品表示などを見ても、「それ何?」っていうものもたくさん含まれている。それは市販の梅干しにも言える。けれど、こうやって手作りしたものは、何が入っていて、どのように作ったかをすべて把握できている。もともと体にいいうえに、安心して食べることができる。
 
スーパーで梅が並んでいるのを見ると、心が躍る。
 
「今年も梅仕事の季節が来た!」
 
と、ワクワクする。
 
梅干しは6月にしか作れない。その事実を知っている人が、梅干しを食べている人の中でどれくらいいるだろうか? 実際に作るようになって、申年でなくとも、梅干しができるその短い期間は、特別だと思えるようになった。
 
世の中が、大きく揺れ動いていても、昔からこうして変わらないものがある。5月に個人宅の鯉のぼりを見ることが少なくなったように、時代が変わって昔と同じようにできないものもあるのかもしれないけれど、梅仕事みたいに、その気になれば、季節を楽しめる日本の伝統文化はたくさんあるのだと思う。
 
限定品に弱い私は、見事に梅仕事という季節限定の楽しみにはまった。でも、こんな楽しみは、もっともっと増やしたい。お家時間が増えたからこそ、きちんと季節を感じ、自分自身と向き合える時間は、心を豊かにしてくれる貴重な時間。日本にあるものの良さを知れば、私たちの生活は、もっと面白いものになりそうだなと思う。嫌いだった梅雨も楽しめるくらいに。
 
 
 
 
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2021-06-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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