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独り暮らしを始めた娘が、全然家に帰ってこなくなって、寂しくて悲しいけれど、めでたいと思うこと。

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:大牧海恵(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
4月から社会人になった娘が独立して家を出た。
 
「実家から通ったほうがお金も貯まるし、ごはんや掃除の心配もいらないから出ていきたくない」
娘はそう言っていたが、夫の考えは違った。
 
社会人になった子供を食べさせていく義務はないから出ていくのは当然のこと。
高校生の時からそう宣言されていた。
 
娘と仲良しで、一緒に出かけるのも、くだらない話で盛り上がるのも大好きだった私は、
娘が出て行ってしまうことを考えるだけで、涙が出てしまうほど悲しい気持ちになった。
 
大学受験を考える時期だったと思う。
 
「将来、自分で稼いで食べていくのだから、楽に入学できて、遊んでいても卒業できるような大学なら、行く必要はないから就職しなさい」
と言われ、英語が得意で、文系志望だった娘は、就職に有利な理系を狙うべく苦手な数学を頑張らなくてはならなくなった。
 
幸いなことに、高校で3年間担任だった生物の先生を尊敬していた娘は、生物の授業は大好きで成績もよかった。
理系で進学を目指す中で、将来は生物の先生になりたい、との夢も持つようにもなった。
 
結局、教育実習に行く時期と就職活動の時期が重なるので、先生を目指すと、教員が駄目だったら就職する、という道が絶たれてしまうということで、教職の課程は諦めたのだが、就職活動には理系の学部に在籍していることが有利に働いた。
 
「文系の子は説明会に申し込んでも枠がないから行かれないと嘆いている」 というのだ。
就職活動の頃は、コロナ禍になって以降、初の会社説明会ということもあり、人数の制限が厳しく、沢山の学生を集めることができなくなっていた。
理系の子たちはそんな中でも、説明会に呼んでもらうことができたので、夫の言う「就職ができる大学に行け」 というアドバイスに助けられたなと思ったりもする。
 
なんとか就職先も決まった頃、娘は、独立に向けて資金作りのアルバイトに精を出し始めた。
 
「就職して、ある程度お金が貯まってから家探しを始めればいいじゃない」 と言う私に、
「出ていくなら、卒業のタイミングが、引っ越しした後、家の中を整える時間が取れるから」 とか、
「4月は移動が多くていい物件が見つけやすいから」 と、
どんどん先へ進んでいってしまう。
寂しい……
住宅情報を眺めながら、「家は出るけど、近くに住んで、毎週ご飯食べに帰ってくるよ」なんて言っている娘に安心したりしていた。
 
私自身は、結婚するまで実家暮らしで、ご飯作りも掃除もお手伝い程度にしかやってこなかったし、
稼いだお金は、全部自分の好きなものに使い、生活に困ることなんてなかった。
結婚したら、毎日食事を作って、掃除も全部自分でしなければならないなんて大変! できれば結婚なんてしたくない。
とさえ考えていた。
あれ? どこかで聞いたような……
娘には間違いなく私のDNAが組み込まれている……
 
しかし、私は25歳であっけなく結婚し、親元から独立した。
結婚したら大変! と考えていた私だが、実際生活してみると食事作りも掃除も余り苦にならず、
それどころか、キッチンも部屋も全部自分好みにできるし、生活も責任はあれど、自分の好きなようにできる楽しさに目覚め、
初めて、自分の人生を生きている、と感じた。
 
だから、娘も早く独立したほうが良いことは経験上わかってはいたのだが……
 
立場は変わり、送り出した娘は、4月で23歳になった、独立したころの私とあまり変わらない年齢になり、一人暮らしを謳歌中である。
「毎週帰ってくるよ」 なんて言っていたのに、たまにしか帰ってこないし、夕食を食べたらそそくさと自宅へ帰ってしまう。
「すっかり別の家の人になってしまったね」 なんて夫に言ってみたりするが、「そうだねー」なんて、まったく、他人事である。
 
先日、娘の部屋に残っていた荷物を車で娘の新居へ運んだ。
「へ~! きれいにしているね」
実家にいるときの娘の部屋は、いつも、とても散らかっていて、ふざけてお部屋ならぬ汚部屋と呼んだりしていたのだが、新居はすっきり片付いていた。
脱ぎ散らかした洋服もないし、机の上に林のごとく乱立するペットボトルもない。
 
片付けなさい! と、あんなに口うるさく注意しても一切治らなかったのに……
私の友達も、「実家から出るまで部屋の片づけってできなかった」 と言っていたが、そういうものなのか?
独り暮らしは、結婚したのと違い「だらしないところを見られて、好きな人に嫌われたくない」 とかないし、注意する人もいないから、今まで以上に散らかるのでは? との私の予想に反して、娘の部屋はきれいに片付いていた。
 
部屋に置かれた家具も、猫足の白いチェストとテーブル、白のスツール、毛足の長いピンクのふわふわラグとクッションなどFrancfrancのディスプレイで見るような可愛いものばかりでそろえられている。
食事もいろいろ工夫して自炊しているらしく、とても楽しそう。
 
その様子を見て私は妙に納得した。
順番に繰り返されるんだ。
今度は娘が、自分の人生を歩き出したんだ……
 
おめでとう。
これからは、見守っていくことしかできないけれど……
たまには大きく成長した姿を見せに戻ってきてね。
あなたの大好きだったミートソースを作って待ってるからね!
 
 
 
***
 
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2021-06-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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