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赤裸々な男の本音を知りたいあなたへのお勧め本はこれだ!


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記事:綿谷しふみ(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
恋愛に疲れ切り男の本心が知りたいとお嘆きの方に、お勧めしたい本がある。
その本とは田山花袋が書いた小説「蒲団」である。
 
変態めいたこの小説は明治時代に書かれた自然主義文学を代表する小説である
 
自然主義文学なんていうと小難しく感じるかもしれないが、なんてことはない。
 
ただたんに、ありのままを描いた文学作品というだけのことだ。確かにありのまま書いてある。誰もが思っていることかもしれないけれど、決して口に出してはいけないこと。しかも田山花袋の私小説というから驚きだ。
 
今の時代こんなことをSNSで発信しようものなら、炎上必死に違いない。
 
それを小説に描き出し後世にまでのこる作品にした田山花袋ってホントすごい。
 
では「蒲団」のあらすじをご紹介しよう。
 
この物語は仕事も結婚生活も順風満帆にも関わらず、平凡な生活につくづく嫌気がさし、この単調な毎日を抜け出すには恋しかないと思っている夢見がちな男が主人公だ。
 
年齢は30代半ば。浮ついた気持ちはこの年頃の男にありがちだと断言する図々しさ。
 
なんとしたことか図々しい男の願いが聞き届けられてしまった。文学者の彼のもとに弟子入りしたいと美貌の女学生がやってきたのだ。
舞い上がる男の平凡な生活はキラキラと輝きだしひとりよがりの恋が始まる。だけど、その恋は思うようにはいかず、その女学生に思い人がいることを知ることになる。
 
奈落に突き落とされはしたが、そこは大人である。本音と建て前を見事に使い分け、2人の恋を応援するそぶりをするのだ。
 
実際は応援なんて全くしておらず、若いカップルが深い関係なのかどうか、ただただそのことが気がかりで、嫉妬に荒れ狂う情けない男なのだけど、そんなことはおくびにも出さない。
 
物語は佳境を迎え彼女と思い人との関係は父親のしるところとなる。彼女は実家に連れ戻されキラキラとした非凡な日常はあっけなく幕引きとなる。ラストはあの有名なシーン。恋しさと寂しさで彼女の布団の臭いをかぎながらむせび泣く哀れな男の姿を描き出し物語は終わる。
 
この小説をすごいと思ったのは、男の本音と建前が見事に描かれていることだ。
 
彼の心のつぶやきに、共感する男たちは多いのではないだろうか。
 
たとえば、いくら才能があっても容姿の悪い女を男は相手にしないなんてことを花袋は書いている。
 
「なるほど。ムカつく」と思うのだけれど、世間を見渡すとその言葉にも一理あるようにも感じるのだ。
 
仕事ができることや経済力は男のモテに直結しているような気がするけれど、女は全く結びつかない。
 
結びつかないならまだしも、男のプライドを傷つけてしまうのか敬遠されることすらある。
そしてこれは決して言ってはいけない不都合な真実なのだ。
 
このこと以外にも、男の本音が面白いぐらいに描かれている。自然主義文学なのだからありのままを赤裸々にと、いったとこなのだろう。浮気がばれた男は「俺は自然主義なのだ」と言えばいいのかもしれない。
 
話を戻そう。男は体の浮気が許せず女は心の浮気が許せないと言われているが、この小説の主人公も例に漏れずそうらしい。
 
彼は女学生とその思い人が体の関係があるのかないのか、そのことにやけに固執しているのだ。心なんてお構いなしの体命。
 
こんなことなら自分が先に手を出しておけばよかったと悔しがる場面まである。
 
女の私からすると、体の関係よりも心のつながりがどれだけ深いのかが気になる。ぶっちゃけ体の関係があることよりも、プラトニックで心の交流が深い方が許せない。
 
浮ついた男心に眉をひそめたくなる小説だけれど、共感できる部分もあった。
 
何と! 彼は夫婦仲もよく可愛い子供がいるにもかかわらず、孤独感を抱えていたのだ。
 
自分を理解してくれない孤独、家庭の中での居場所がないように感じる孤独、そして心ときめく相手ではなくなった妻への孤独。
 
孤独を告白する場面がなければ、能天気でなんて幸せな男だろうと思うくらい恵まれた人生を歩んでいるように見えるのに。
 
人というのは本当にわからないものだ。だからこそ表面だけで人を判断してはいけないのかもしれない。順風満帆そうに見えても実は当人からすると全くそうでないこともあるはずだから。
 
だけどこの孤独。なんだかわかる気がする。孤独というのは色んなところに入り込んでくる。
 
職場で孤独を感じることもあれば、友人と楽しく過ごしている時ですら忍び込んでくることもある。
 
だからと言って倫理に反することをしていいわけではないけれど。
 
「蒲団」は主人公から通して見える男のズルさ、プライドで覆い隠されたか弱い心と本音が面白おかしく描き出されている。
 
浮気願望をもった男の気持ちが手に取るようにわかる最高の1冊ではないかと思うのだ。
 
パートナーとの関係に悩む女性にぜひとも読んでいただきたい本である。
 
 
 
 
***

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2021-06-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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