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白黒映画クリエイターの見た世界


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記事:村人F(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
何度見ても面白い。
そう断言できる映画の1つには、間違いなく「七人の侍」が挙げられる。
私も3回見たが、その度に完成度の高さに驚いてしまう。
黒澤明監督によって紡がれた緻密なストーリーもさることながら、三船敏郎のおとぼけキャラなのに尋常じゃないスター性を持つ魅力も凄まじい。
侍もそれぞれ個性に溢れていて、キャラクターが立っている。
世界的の有名なクリエイターに最高の作品と絶賛される理由がよくわかる、歴史を超える大傑作だ。
 
その映画を最近見返したのだが、ふとこんなことが頭をよぎった。
白黒映画を作っていた彼らには、世界がどのように見えていたのか。
 
七人の侍など、昔の映画は白黒で作られている。
そんな作品をずっと作ってきた人たちに、現実のカラフルな世界がどのように見えたのか気になったのだ。
 
これが白黒の絵をカラーで見てみようだったら、まだなんとかなるだろう。
ぬり絵という幼稚園児からやっている遊びと同じような作業だからだ。
そのため、いい色を選べるかはともかく、こちらの難易度はそこまで高くはないと考えている。
 
しかし、カラフルな世界を白黒で見るとなると、相当な苦労をするんじゃないかと思う。
なんせ赤とか黄色とか多くの色を使って生み出されたものを、白と黒だけで表現しなければいけないのだ。
そのためには色の濃淡、明るさなど繊細な感覚が必要となる。
だから私には全くできる自信がない。
 
だが、白黒映画を作成した彼らは、それをやってのけたのである。
なぜそのような色彩感覚が得られたのか。
それは、日常的にカラフルな世界を、白黒に変換する訓練をしていたからではないかと思う。
 
とある写真セミナーにて、カメラマンの多くは写真を撮るときにレタッチ、つまりどのように編集するか想像しながら構図を見るという話を聞いた。
今の景色はちょっと明かりが足りないけれど、このアプリを使えば光量を上げられるからいい作品になる。
そういうことを瞬時に計算して写真を撮れるらしい。
これは景色をそういう目線で見ているからできることなのだろう。
だから白黒映画を撮っている人たちも、カラフルな世の中を白黒に落としたらどうなるか。これを想像しながら周りの風景を見ていたんじゃないかと思う。
 
その結果生まれたのが、七人の侍における花畑で侍と百姓の娘が寝転がるシーンなのだろう。
そこには白い花が一面に咲き誇り、その下からうっすらグレーの茎が見えている。
白黒の世界でも十分に伝わる美しい風景だ。
これが生まれたのは、白黒だけでも表現できる美しさを考え抜いたからだろう。
 
しかし、映画を作る上でこの意識が必要なのは風景だけではない。
効果音や人物についても同じように考える必要があるのだ。
 
特に難しいのが時間の表現だ。
カラーの映画だったら赤い夕日があれば夕方という具合に、見た目だけで表現できるだろう。
しかし、白黒だとこれが通用しないのである。
 
だからカラスをカーカー鳴らして帰る時間だと示す、登場人物が家に帰宅している様子を映すなど、音や行動による工夫が必要になるわけだ。
 
こう考えると白黒映画を専門としたクリエイターは色だけでなく、音、人物など全てにおいて繊細な表現をしていたことがわかる。
だからこそ、時代を超える傑作を多く残すことができたのだろう。
 
そしてこの制限を意識することが、昔の作品を楽しむ上でのポイントだと感じた。
 
映画だけでなく、ゲームもファミコンの作品はもう古典と言っていいだろう。
これを今の私達が前知識なしでやっても、多くの感動を得ることは難しいかもしれない。
しかし、ファミコンの性能や他に参考となる作品がほとんどない状況などを意識すると、スーパーマリオがいかに時代をブチ抜いたのかがわかる。
このように当時の制限を考えることで、より魅力的になるのが昔の作品なのだ。
 
とはいえ、白黒映画を今更見なくてもいいんじゃないかと言う人も多いだろう。
しかし、使える色が制限されたからこそできる表現があるのだ。
現代のカラー映画でも使われている技術のルーツもしっかり存在している。
なにより、数十年経った今でも大傑作と呼ばれているのだ。
その時代をぶち抜くパワーは想像を超えるものである。
これはきっと、新たな視点を与えてくれることだろう。
 
久々に見た七人の侍は、白黒映画という世界の奥深さを教えてくれた。
そして、それ以外の黒澤明監督作品もたくさんあるし、海外にも多くの傑作が存在している。
これはしばらく白黒映画を楽しむことができそうだ。
今後も過去の名作を通して、時代を超える理由や現代でも生き続ける技術について考えていきたい。
その視点は、カラー映画など現代の世界を見るときにも多くの喜びを与えてくれることだろう。
 
 
 
 
***

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2021-06-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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