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メディアグランプリ

ものまねでアイスクリームを買った日


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:旅河 侑生(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「Ha????(はあぁ?) 」と言いながら困った顔で私を見つめる黒人女性。
戸惑いながら「バ、バニラ…」と口ごもる私。女性はついにイライラし始め、カウンターを指でコンコンと叩き始める。
後ろを振り返ると長蛇の列。どうしよう……とモゴモゴしながら脇のカウンターの外国人の真似をして「バニャラ」と言ったら女性はカウンターを立ち去り「ドン!」と私の前にアイスクリームを置いた。
多分、5分程度のやりとり、できごとだったが数時間その場にいたような衝撃だった。
 
ボストンレットソックスの本拠地であるフェンウェイ・パークでのできごとだ。
フェンウェイ・パークはメジャーリーグの球場の中で最古の球場。ボストンに行ったら、絶対にフェンウェイ名物のレットソックスの小さなヘルメット型をした容器に入っているアイスクリームを食べようと決めていた。
 
試合が始まる前に意気揚々と買いにいくと、私の前に立ちはだかったのは黒人の女性だった。いつもあたり前に買えているアイスが買えない。後ろを見れば「Boo」とブーイングされそうな勢いだ。結局買う事はできたが、本当に情けなくて怖い思いをした。
 
私は1ヶ月ほどボストンに暮らしていたが、とにかく最初の1週間は言葉が通じずしんどかった。
その2年前にもテキサスに1か月ほど暮らし英語はそこそこ、いや死なない程度に聞いたり話したりできるつもりでいた。しかし、高校を卒業してから大学の授業では会話の授業もなかったため、聴く力、話す力が低下していたのだろう。
 
聴く事はできる、しかし、とにかく通じない。
アイスクリームの時のように「バニラ」とカタカナの発音で話しても全く通じない。今、自分の感覚で発音するとバニラは「バニャラ」でチョコレートは「チャッコレイト」といった感じだ。
 
それも、あのアイスクリーム屋で、隣にいた外人の見よう見まね、聞いた感じをものまねしているのに過ぎない。でも、そのものまねが功を奏してアイスクリームを買うことができた。そう、私はものまねでアイスクリームを買ったのだ。
 
ある時家人が、社内で、若手社員を中心に英会話を上達させたいが、どんな講座を開いたらいいかという相談を受けた。
そんな話をされたので、私は「どうにもならない思いをしないと話なんかできないね」と一言。あの時の思い、そのままを話した。
 
ボストンでの苦労話は尽きないが、まずアイスクリームが買えない、公共交通機関のない町外れでバスにも電車にも乗れない、ハンバーガーを1個買ったつもりがダブルセットで2個買ってしまい仕方なくハンバーガーを2個食べる、街で道を聞いても通じず、相手は困った顔で黙って立ち去っていく……
 
こんな体験から、そんなどうしようもない、どうにか相手に言いたいこと、気持ち、考え、思い、質問をどうにか伝えなければ生死に関わるような限界の状態に身を置かなければ、英語、外国語などは覚えられないと実体験から感じている。
 
家人は、それをどうやって日本で再現すればいいのだろうと言うので「日本語禁止タイムでもやったらいいさ」と無謀なアドバイスをした。
 
実際に私の中学校では、2日間の合宿中、日本語禁止タイムがあって「オーマイガー! 」などふざけていたが、そんな体験のおかげもあってか英語を話す照れ臭さはなくなったのも事実だ。英会話にトライしたい人にはオススメの訓練方法だ。辞書や検索ツールとして携帯を持ちながらでもいいので、ぜひ試していただきたい。
 
ボストンでの暮らしに慣れてきた2週目からは毎日街に出かけるようにした。午前中、大学での授業が終わった後は自由に行動することができた。
なんでもいいからとにかく店に行ったり、美術館、公共施設色々な場所に行き、お店の人や様々な人と話をする機会をつくった。
紙とペンを持って、わからなければ絵を描いて相手に物を伝え言葉を引き出し、ものまねをして言葉を覚えた。
同時に相手が言ってくれたことを、もう一度同じように、聴こえた通りに相手に向かって発音してみる。話す度胸をつけるのと発音のいい練習になる。おためしあれ。
 
伝わらない、聴こえない不自由はあったけれど、本当に英語と必死に向き合ったあの時間は楽しかった。英語を覚える以上に何か収穫があった、実りある時間だった気がする。
 
どこに行ってもどうにかなる……と言う根拠のない自信はこのかけがえのない時間から生まれている。正直、今でも会話には自信はないが、世界中どこに行っても生きていけると思っている。
 
時々ふと、スタンド下の通路の暗がりにあるアイスクリーム屋、あの黒人女性を思い出す。あの出来事がなければ、私はいまだに海外に行ってもアイスクリームも買えずに困り果てていただろう。
 
同時に、いまだに目に見えるところに転がしておくヘルメット型のアイスクリームの容器は、私に眩しい思い出と根拠のない自信を生み出してくれる。
早く何も気にせず、以前のように世界中をめぐる日々になるように祈っている。
 
 
 
 
***
 
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2021-07-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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