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早朝の激痛から学んだこと


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:西片 あさひ(ライティングゼミ・超通信コース)
 
 
「……痛い」
「めちゃくちゃズキズキする」
 
猛烈な痛みにたたき起こされた。
時間は朝5時半。
いつもだったらまだ寝ている時間だ。
 
痛みのこと以外考えられない。
訳が分からなかった。
俺が一体何をしたっていうんだ。
恨み節に似たような気持ちを抱きながら、私は一昨日のことを振り返っていた。
 
その年、3年ぶりの人事異動があった。
業務内容、勤務先、人間関係。
何から何まで新しいこと尽くめ。
心も体も疲れがたまっていた。
 
そんな時、私にはとっておきの気分転換の方法があった。
それは食べることだ。
大学受験や就職活動など、これまでの人生でストレスがたまる時がたくさんあったが、その度に食事を楽しむことで乗り切ってきた。
ラーメン、揚げ物、定食。
今までどれだけの食べ物に救われてきたか、数えるときりがない。
 
当時のマイブームは、スパイスカレー。
スパイスの香りに癒しを求めて、いろいろな店を食べ歩くのが日課となっていた。
その時も、私はインドカレー屋さんに向かった。
注文したのは、羊肉が入ったカレーだった。
 
スパイスのさわやかな香りが鼻を抜ける。
骨付きの羊肉がゴロゴロ入っていた。
たしか、おなかがすいていたから、かじりついて食べたっけ。
 
「腹も心も満たされて最高の気分だ」
「これで仕事も乗り切れそうだな」
そんなことを思いながら、家路に着いたのを今でもよく覚えている。
 
だから、予想もしなかったのだ。
まさか、あんなことが待ち受けているなんて。
 
次の日。
午前中の仕事が終わり、お昼休憩の時間になった。
いつものように、お弁当を一口食べた時のことだった。
「あれ、おかしいな」
何かに違和感を覚えたのだ。
はじめは何が原因かよく分からなかった。
しかし、食べ進めていくうちに口の中、特に歯に痛みがあることに気付いた。
噛む度に左の奥歯がうずいてきたのだ。
 
しかし、この時はそこまで気にしていなかった。
硬いものを食べた後や疲れが原因で歯が痛くなることがあっても、しばらくしたら痛みが消えている。そんなことが昔からよくあったからだ。
「きっと、骨付き肉をかぶりついたからだよな」
「そのうち治るさ」
そんな調子で特に深く考えていなかった。
 
しかし、仕事が終わって家で夕ご飯を食べた時もやはり痛かった。
味をあまり感じられないほどの痛みで、明らかにお昼より悪化しているのが分かった。
 
「明日、病院に行ったほうがいいんじゃないの?」
見かねた妻がそんな提案をしてきたが、私は自分に言い聞かせるように言った。
「たしかに痛いけど、明日になったらきっと痛みが引いていると思うんだ。ちょっと様子を見てみるよ」
その後、床に就いたが、そこからが悲劇の始まりだった。
 
「……痛い」
「めちゃくちゃズキズキする」
 
猛烈な痛みにたたき起こされたのだ。
時間は朝5時半。
いつもだったらまだ寝ている時間だ。
 
訳が分からなかった。
引いているはずの痛みが全く引いていない。
むしろ、それどころか歯を動かしていないのに、ただ寝ていただけなのに、奥歯がとてつもなくうずいて痛かったのだ。
 
これは早めに診てもらわないとまずいぞ。
動物的な勘なのか、そんな言葉が頭をよぎった。
眠い目をこすりながら、スマホで家の近くにある歯科医院を片っ端から調べた。
もう痛みのことしか考えられなくなっていた。
 
どうにか、すぐに受診可能な歯科医院を発見して、診察してもらえることに。
歯科医院に着くや否や、歯のレントゲン撮影が始まった。
ただ事じゃないことは素人の私でも分かった。
 
「抜歯しないとですね」
医者の話によると、痛みの原因は「親知らず」。
虫歯が進行して歯が腐りかけ、あごの骨が一部溶けていたのだという。
それにより、歯の内部に膿が発生していたのだそう。
ここまで虫歯が進行していると抜歯するしかないとのこと。
 
これだけでもびっくりだが、医者からのさらなる言葉にとても衝撃を受けた。
「他の歯も3本、虫歯になっていますね」
「軽度の歯周病にもなっています」
 
なんということだ。
計4本の虫歯。
あごの骨は溶けている。
歯周病。
 
三重苦ではないか。
それから、しばらく歯科医院通いになったのは言うまでもなかった。
 
疲れを癒やすために食べ歩きをしていただけなのに、こんな仕打ちを受けるなんて!
私が一体何をしたのか。
はじめはそう思っていた。
 
しかし、考えてみると思い当たる節はあった。
ろくに歯を磨かず寝てしまう日が多かったのだ。
 
眠い。
疲れた。
面倒くさい。
 
そんな理由で日頃のメンテナンスを怠っていたのだ。
一時の楽のために、自分の楽しみを奪ってしまった。
どんな食べ物でも、歯が健康じゃなければおいしいものもおいしく感じることができない。
 
歯は道具のようなものだ。
道具の手入れをおろそかにしたら、今まで当たり前にできていたことができなくなってしまう。
そして、これは他の事でも言える。
例えば勉強、そしてスポーツ。
日頃から使っている道具を雑に扱っては、結果を出せるものも出せなくなってしまう。
 
目の前においしいものがあるのに、うまく味わえない。
もうあんな思いは二度としたくない。
そのためには、道具の手入れはしっかりしよう。
大切なことを教えてくれたあの痛みを私はずっと忘れない。
 
 
 
 
***
 
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2021-07-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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