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みんなのために働けない私


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記事:蔵本貴文(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
小学生の時だっただろうか?
学活の時間に、クラスの学級委員を選んでいて、「誰がそんな大変な事をわざわざやるんだ」と口に出してしまって、メチャクチャ先生に怒られたことを覚えている。
 
それから、中学、高校、大学いろいろ学んでいった。
こんなことは思っていても口に出してはいけないということを知った。
そして、自分ができない仕事をやってくれる人に感謝もできるようになった。
 
しかしながら、自分が進んでみんなのために働きたい、と感じることはなかった。
世の中には本当に立派な人がいる。世の中を良くしようと、地域のために熱心に働く方がたくさんいるのだ。
 
そんな人に憧れて、自分も「社会のために」とかいう理想を立ててみたこともある。
しかし、全くその気にならない。申し訳ないが、私はみんなのために働こうとは思えなかった。
何というか、「みんなのため」といっても、全くパワーが湧いてこないのだ。
これが「何かを作るため」とか「何かを学ぶため」とだったらパワーが出るのだが……。
 
自分は人のために働けない残念な奴だと思った。でも、これが自分なのだから仕方がない。
やりたくない、というより苦痛を伴うことをして、自分がダメージを受けてしまっては仕方がない。無理をしてまで、他人に尽くす必要もない。
 
ということで、職業はエンジニアを選んだ。人のために働く仕事は私には向かないだろう。
エンジニアは人よりも、モノと接する仕事。仕事も面白く、どんどんのめりこんでいった。これが天職なのだろうなと思った。
 
そして、就職して数年後、結婚することになる。
少し不安もあったが、問題なかった。嫁とも仲良く生活できたし、それから数年後に生まれた子どもも可愛く思えた。
 
そして、それからさらに年月も経ち、会社の仕事にも、家庭にも十分慣れて余裕がでてきた。そこで、新たなチャレンジをしようと考えるようになった。そして、副業を始めるべく、セミナーに通って勉強を始めることにした。
 
その中でのことだった。私はエンジニアなので、ITには比較的強い。しかし、そのセミナーにはパソコンが苦手な人もたくさんいた。だから、パソコンやスマホの操作を教えてくれと言われることが多くなったのだ。
「めんどくさいな」と思っていたりもしたが、なぜかどんどん人がやってくる。「なぜ僕に聞くのだ」と不思議に思ったが、来るものは拒まず、ということで教えてあげていた。
 
そしてある日、そんな光景を見ていた講師が私にこんなことを言った。
「へぇー、教えるのが好きなんですね」
 
驚いた。
一体この人は何を言っているんだ。俺は人のために働けない残念な人間だぞ。自分のことしか考えられない人間なんだ。人に教えるのが好きなわけがない。そんなわけがないんだ。お前の目はふしあなか? 何かを間違えている。
 
と瞬間的に思ったが、この時の私は多少の理性も持ち合わせていた
「客観的に見ている人が言うのだから、そうなのかもしれない」
 
ということで、私の頭が回り始めた。
一体これはどういうことなのだろう。昔から、みんなのために働くことに意義ややりがいを感じず、面倒としか思えなかった。そんな人間が「教えるのが好き」だって? 一体どういうことなのだ。
 
でも考えてみれば、家族には優しくできたし、実際に今は無償でパソコンのサポートをしてあげている。それは昔、学校で「みんなのため」にしていた仕事と違って、嫌な感じもしない。これはどういうことなのだろう。
 
しばらく考えて結論が出た。私は「みんな」のために働くことに意義を感じられないだけだったのだ。例えば、地域や組織、チーム、学校、クラス、会社のために働くことはできない。
しかし、目の前の一人の人のために力を尽くすことはできたのだった。目の前の人に幸せになってもらいたい。笑顔が見たい。
 
このことに気づいてからは、だいぶ楽になった。
それまで自分は人のために働けない残念な奴、人としてどうかと思われるような人間だと思っていた。しかし、そんなこともなかったのだ。一人の人のためには尽くすことができる。ちゃんと人間の心を持っていたのだ。血の通っていない人間では無かったのだ。
私だって、人をサポートする仕事の素質があるのだ。それに気づいて、コンサルっぽい仕事を始めることになった。
 
この経験を通じて、考えることがある。
特に「嫌い」なことは、ちゃんと切り分ける必要がある。そうしないと、自分の可能性を狭めてしまうと思う。
 
例えば「人と話すのが苦手」という人は多いかもしれない。だからといって、人と接すること全てが苦手だとは限らない。
初対面の人だけが苦手なのかもしれないし、異性だけが苦手なのかもしれない。慣れない場所で話すのが苦手なだけかもしれないし、会話がダメなだけで他のコミュニケーション方法なら大丈夫なのかもしれない。
 
だから「嫌い」は徹底的に分解してみよう。本当は何が苦手なのだろうかと……。
その問いかけの先に、思わぬ可能性が開けてくるかもしれない。
 
 
 
 
***

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2021-07-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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