都合のいい女でいたから分かったこと
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記事:深谷百合子(ライティング・ゼミ超通信コース)
私は「都合のいい女」だった。
といっても、恋愛の話ではない。
仕事をするようになってから、なぜか「何か私、いいように使われてない?」と思う場面が多かった。「嫌だ」と言ったら人間関係がまずくなるんじゃないかとか、逆に他人に何かを頼んだら嫌がられるんじゃないかとか思って、いつも自分で抱え込むだけ抱え込んで、「なんでいっつもこうなんだ……」と思っていた。
とはいえ、会社の場合は組織だから、命令されたら断れない。
「ねぇ、ワープロ打つの速いよねぇ。これ、ちょっと打っといてくれないかな」
「やっぱりこういうのは、男がやるより、女性の方がいいと思うんで、よろしく!」
なんていって、仕事がふられてくる。
そんな時、「何で私がやらなきゃいけないんだ? 自分でやればいいじゃん!」と心の中で思いつつ、笑顔で「わかりましたー」と引き受けた。
「なんだよ、もう!」と思うけれど、一旦「頼みやすいキャラ」になってしまうと、それを覆すのはなかなか難しい。「いい人をやめる」って、そう簡単にはできないものだ。
でも、もっと言うと「それでもいい」とどこかで思っている自分がいた。そうじゃなかったら、「都合のいい便利屋」を20年以上も続けてこれたはずがない。もし、「いつも自分のことを後回しにして、自分を犠牲にしているだけだ」と思っていたら、きっとどこかで爆発して続けられなくなっていたはずだ。
会社で働いていた頃、私の担当業務は技術系の仕事だったけれど、担当業務以外に、色んな仕事が舞い込んできた。
例えば工場を案内する仕事だったり、地域の講演会で工場を紹介する講演の仕事だったり。最初は、「なんで私なの?」と思っていた。
特に地域の講演会で話をするなんて、それこそ、「女性が出て行った方が……」と言われてふられた仕事だ。
工場ができたせいで、地域の自然環境が失われ、交通渋滞が発生し、地域の人は必ずしも私たちを歓迎していない。そんな場所に出て行ったら、何を言われるだろう?
だから「女性が出て行った方がまるく収まる」なんて考えて、私に行けと言うのかな。
それとも、「うちの会社、ほら、女性を活用していますよ! 的なアピールで私をかり出したんじゃないか」とうがってみたりした。
批判めいたことを言われると結構傷つく私は、「何か言われたら嫌だな」と思いながら、その地域の講演会に恐る恐る出て行った。ところが、やってみたら、意外とこれが楽しかったのだ。
講演会に来ている人は、地域の環境を良くしたいと思っている人達で、「あの工場、大丈夫なのか?」と思っていた人達だ。私たちだって、地域の環境のために役立ちたいと思っていた。話をして、見ている方向は同じなんだと分かると、距離が縮まり、お互いを警戒するような空気も少しずつ和らいできた。
そしていつしか、私にとってその仕事は「ふられた仕事」ではなく、「やりたい仕事」に変わっていたのだ。
今から思うと、「都合よく使われていた」というのは、私の勝手な解釈だったのかもしれない。「色んなことを頼まれる」ということに対して、何だか必要以上に自分をおとしめていたんじゃないだろうかと最近思うのだ。
「都合のいい便利屋」とか「抱え込み女」とか「いい人症候群」とか、当時の自分のことをそう表現して、そんな自分だったと思い込んでいたけれど、それって本当だろうか?
だってよく考えてみると、人から何かを頼まれるっていうことは、「信頼されている」と考えることもできる。信頼していない人にわざわざ用事を頼んだりしないだろう。
「色んなこと」と一口に言うけれど、具体的にどんなことだったのか。ひとつひとつ振り返っていくと、確かに雑用もあったけれど、必ずしも誰にでもできることばかりではなかった。「私だから頼まれた」ということも確かにあったし、私自身が気づいていない「私の価値」を見込んで頼まれたことだってあったに違いない。だから「人からふられた仕事」でも、やってみたら意外とできて、いつしか「やりたい仕事」に変わっていったのだろう。
それなら「また頼まれた……」と渋々引き受けるより、「ひょっとしたらやりたい事になるかも!」と思って、自分から手を挙げる位になってみようと思うのだ。やってみて、やっぱり私には合わないということもあるだろう。それはそれでいい。
自分の持っている価値は、意外と自分では分からない。自分がいいと思ってやっていることよりも、人からもたらされたことをやる方が、自分の価値を発揮できることもある。だから、やりたいことが分からないと思っている人ほど、人から頼まれたことをやってみたらいいんじゃないかな。人から頼まれたことの中に自分の可能性のタネがあるかもしれないから。
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