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【ネタバレあり】「グレート・ギャツビーを追え 」はやっぱり村上春樹ワールド全開だった


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:浦部光俊(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
えっ、本当に?
 
タイトルを見た瞬間、目を疑いました。
 
作者を見ると、あの有名な推理小説作家。
 
こんな本も書くんだ、そう思いながら、何気なく翻訳者の名前を見ると、
 
えっ、まさか? でも、このタイトル、充分あり得る。
 
作者は「法律事務所」「ペリカン文書」で有名なジョン・グリシャム
 
訳者は、なんと村上春樹大先生!
 
そして、そのタイトルが「グレート・ギャツビーを追え」
 
もう買わないという手はありませんでした。
 
手に取ると浮かんできたのは、
 
春樹先生の作品をむさぼるように読んだ中高校生時代。
 
世間とは距離をとり、限られた人にだけほんの少しだけ心を開く
 
そんな春樹ワールド独特の登場人物達。
 
彼らの間に流れる、どこかはかなくて、でも優しくて親密な空気感。
 
ぼくが心を許せる数少ない場所でした。
 
そして、そこで出会ったのが、
 
春樹先生にとって「人生で巡り会った最も大切な小説」
 
スコット・フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」
 
ただ、当時のぼくは、ギャツビーの世界を理解するにはあまりにも子供でした。
 
成功の代償とは? 届くことのない異性への思いとは?
 
全く理解ができませんでした。
 
仲間に入り損ねたような気がして、悔しかったあの頃。
 
さあ、今度こそ、あの憧れたグレート・ギャツビーの世界へ
 
そんな期待をして読み始めたぼくは、すぐに気づきました。
 
ここは村上春樹の世界じゃない、
 
クールでスリリングでエンターテイメント
 
ジョン・グリシャムの世界だと。
 
ストーリーは、最初からアクセル全開、
 
プロの犯罪集団による大学図書館襲撃のシーンから始まります。
 
狙われたのは、フィッツジェラルドの直筆原稿。
 
犯罪への関与が疑われるのは独立系書店を経営する男、ブルース。
 
そして、彼の元に真相を探るために送り込まれたのが、
 
売れない女性小説家マーサー。
 
ブルースに近づき秘密の核心に迫ろうとするのですが、
 
次第に彼の魅力に絡め取られ……
 
果たして、フィッツジェラルド直筆原稿の命運は、
 
と、まあ、あとは読んでのお楽しみなのですが、
 
とにかくこの話、ストーリーの展開が早くて全く飽きさせません。
 
春樹先生の丁寧な翻訳のおかげもあって、グイグイと引き込まれ、
 
あっという間に読んでしまいました。
 
あの二人の合作なら、当然といえば当然かもしれません。
 
ただ、実は、ぼくがこの本を推したい理由はそこじゃないんです。
 
「グレート・ギャツビーを追え」
 
この本がぼくを惹きつけたその理由
 
それは、作品の至る所に感じられる「本への愛」 でした。
 
ブルースの周りに集まるたくさんの作家達
 
売れていても、いなくても、
 
誰もが、本当に書きたいことと、
 
世間受けすることとのギャップで苦しみつつ、
 
それでも、心から本を書くことを愛しています。
 
そんな彼らが語る作家論、作品論、人生論がとにかくおもしろい。
 
意見の衝突なんて当たり前。
 
関係が壊れてしまうんじゃないか、
 
そう心配になるほど本音でぶつかり合うけれど、
 
そこは個人の意見を最も尊重する作家達、
 
お互いの本音こそが議論の、
 
そして芸術の本質とばかりに大盛り上がり。
 
馴れ合いじゃない本当の信頼関係、とでもいうのでしょうか、
 
読んでいて、うらやましくなってしまいました。
 
そして、いつもその中心にいるのが書店主のブルース。
 
売れない作家のためにせっせとサイン会を企画したり、
 
苦しんでいる作家の気分転換にとパーティを催したり、
 
とにかく優しく暖かく作家達を見守ります。
 
書店経営している彼からしたら当然のことかもしれません。
 
でも、ぼくは、そこにビジネスを超えたなにか、
 
作家、作品、書店に対する大いなる愛のようなものを感じてしまったのです。
 
どんなに成功していても、どんなにいい女と夜を過ごしたとしても、
 
毎日かかさず朝から晩まで書店で働き続けます。
 
誰よりも多くの本を読み、
 
売れ残った本に対する痛みを、誰よりも強く感じるブルースなのです。
 
そんな彼だからこそ、いつもたくさんの作家達に囲まれています。
 
「ブルースさえいればだいじょうぶ」
 
ブルース、そして彼の書店には、そんな親密な空気が流れているんです。
 
だから……
 
ついついブルースを応援したくなってしまうんです。
 
きっと、こいつが犯人なんだろうなと思いつつも、
 
これほど「本」 という世界を愛してくれる人間を守りたくなってしまうんです。
 
盗まれたフィッツジェラルドの直筆原稿だって、
 
大学の図書館で保存されるんじゃなくて、
 
金額でしか価値を計れないFBIじゃなくて、
 
ブルースのような人間の手元にあるのがふさわしい、
 
そんな風に思えてきてしまうんです。
 
マーサーの気持ちもよく分かる。
 
事件の核心に迫りつつも、
 
ブルールの魅力に負けそうになってしまうのも仕方がない。
 
だって、ブルースの「本」 にかけるその思い、
 
男のぼくだって惚れてしまうほどのかっこよさなんですから。
 
「ああ、やっぱり本っていいな」
 
読み終わったとき感じたのは、そんなシンプルことでした。
 
そして、書店に行きたくなりました。
 
そこに行けば、ぼくもブルース達の仲間に入れてもらえる、
 
そんな気がしてきたんです。
 
思わず想像してしまいました。
 
気に入った本を見つけ、いつもの仲間達と思うところを存分に語り合う自分の姿を。
 
書店と、そして、そこにいる仲間達との親密な空気に包まれて、
 
心からリラックスしている自分の姿を。
 
選ぶ本はもちろん、村上春樹先生翻訳の「グレート・ギャツビー」
 
あの頃は超えられなかった大人の壁が、
 
きっと今なら越えられるような気がするんです。
 
ブルース達が気づかせてくれた「本を愛する」 この気持ち、
 
これが感じられる今なら、ギャツビーの大人の世界が分かるかもしれない、
 
そう思った時のことでした。
 
「追い求めなくたっていい。本はいつだって君のことを待っているんだよ」
 
そんな春樹先生の声を聞いたような気がしたんです。
 
「グレート・ギャツビーを追え」
 
そこは、やっぱりそこは、優しくて親密で、
 
そしてぼくを癒してくれる村上春樹ワールドでした。
 
 
 
 
***

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2021-07-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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