犬をなんで飼わないのかハラスメント
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記事:あこ (ライティング・ゼミ日曜コース)
いつ頃からだろう、周りに犬や猫を飼っている人が、こんなに増えたのは。
私の記憶では、20年ほど前は今ほどペットを飼っている人々は、いなかったような気がする。
もちろん近所に何匹か、犬や猫を飼っていて散歩している人もいた。でも犬の種類も柴犬やブルドッグなどそんなにお洒落な犬はいなかったように記憶する。
今は夕暮れ時になると、近所の犬を飼っている人たちが、社交場の様に家の前の道にたむろする。
私は生まれてこの方、ペットと言うものを飼ったことがない。だが、取り立ててペットを飼っている人を否定するつもりもないのである。飼いたい人は飼えばいい、ただそれだけである。
だが、問題は飼っている側からの、「ペット飼ったほうがいいよ」ハラスメントである。
私の親友である二人の熟女は、共に犬を溺愛している。もちろん、SNSのアイコンは愛犬の写真である。そして、会って話をすると決まって我が子のように可愛がるワンコ自慢がはじまる。もちろん私とて、大人の常識は持ち合わせているから、そこは適当に相づちを打つ。
まるで付き合いたての恋人との蜜月を、自慢するかのようなその言動も、あまりに長いと自分の作り笑顔が引きつってくるのがわかる。
むかしから友達のコイバナってやつを、よく聞かされてきた私からすると屁でもないのだが、やっかいなのは「なぜ、こんなにかわいい犬を飼わないの?」と言う方向に話がいった時である。答えは簡単「飼いたくないから」なのである。
しかし大抵は、「絶対に飼った方がいい!」 「家族の潤滑油になる」と熟女達は声をそろえて言う。
たしかに夫婦生活も長くなると、会話も減ってはくる。子供たちとて自分たちの生活で忙しそうである。
だからと言って、そこに潤いをプラスするために犬を飼うほど困ってもいない。
もともと私は一人で、なにかしている事が好きなのである。
静かに読書をしたり、庭の土いじりをのんびりしたいタイプなのである。
彼女たちの善意での価値観の押しつけは、善意なだけに、ややこしさをはらんでいる。
一度はペットショップまで連れていかれ「実際に見たら飼いたくなるわよ~」と言われたこともある。確かにみればそれなりに可愛いに決まっている。でもそれは孫がたまに来るからかわいいのと同じレベルなのである。
どうしてこうも、価値観の強要をしてくるのか不思議になる。私はこんな風に人に価値観を押し付けるのをやめようなんて心の中では皮肉に思っていた。
そんな中、ひょんなことから親戚の犬を預かることになった。トイプードルと言ういかにも「私って可愛いでしょ」っと言ってるような顔をした犬である。
ペットを飼ったことのない我が家は、まるで国賓が来たくらいの待遇でトイプードルをもてなした。
しかし、みるみるうちに家族に変化が訪れたのでる。
なかでも驚いたのは強面で堅物の主人の変わりようである。仕事から帰ってくると真っ先にトイプードルに挨拶をする。そして見たこともない笑顔でしゃべりかけるのである。
「帰りまちたよ~!」と……。その幼児言葉に家の中に、笑いが起きる。しかし、当の本人はそんなことお構いなしのようである。まさしくそこには愛犬を溺愛する熟女と同じオーラをまとった中年おやしがいたのである。
もちろん、子供たちも珍しいのと可愛いので夢中になっている。トイプードルの可愛いしぐさや表情に確かに癒されるし、家族の会話も増える。あの熟女達の教えとおりではないか!
ちょっと、負けた気分になりながらも私はトイプードルの魅力にはまっていった。
あんなに、心の中では熟女達の犬バカぶりを笑っていたのにまさかの坂とはこの事だ。
そしてトイプードルを親戚に返す日がやって来た。なんと、たったの数日しか共に暮らしていないのに寂しさが押し寄せてくる。
迎えに来た親戚に引き渡すと、なんともトイプードルはあっさり帰っていった。
その日の夕食は、心なしか全員静かだった。口火を切ったのは主人だった。
「犬飼うか……」誰も反論しなかった。子供たちは大喜びである。私もいつの間にか犬を飼ってもいいかもと思い始めていた。
数週間後、我が家にもトイプードルがやって来た。本当に我が家の犬だと思うと、可愛さもひとしおである。
さっそく熟女達と会うと、犬談義に花が咲いた。なんだ、めちゃくちゃ楽しいではないか。何を私は拒んでいたのだろう。
ずっと、自分の価値観を勝手に押し付けるな! と思っていたけれど、逆に私も「犬を勝手に飼わせようとするな!」と言う価値観を相手に振りかざしていたのかも知れない。
そう気づいたとき、我が家のトイプードルが優しい目でこっちを見つめていた。
***
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