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本当にキレイになれる美容院


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:いしはるま(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
あなたは美容院へ行くのは好きですか?
私は正直苦手です。
やたらと無機質だったり、ラグジュアリー感やおしゃれ感満載の空間で、たくさんの華やかなスタッフやお客さんに囲まれて長時間過ごすのは、私には苦痛なのです。
 
いや、訂正します。
「苦手でした」です。過去形です。
なぜかと言うと、私、とうとう出会ってしまったのです。
行く前にワクワクし、帰ってからもしみじみと「今日もええ時間過ごしたなあ」と思う美容院に。
もう10年近く通い続けています。
 
そのお店は、阪急沿線のとある駅から徒歩1分のところにあります。
立地は最高なのに、場所は分かりにくい。なぜなら、看板が渋すぎて、よ~く見ないと分からない。一見して美容院と分かる人はほとんどいないと思います。
 
ここのお店を好きな理由のひとつは、リラックスできる場所だからです。
暗めの照明。
木の温かみが感じられる空間。
ビンテージ感のある、座り心地が良いソファー。
そして、本棚。
そう。美容院なのに本も売っているのです。しかも、これがかなり本格的なもので、月替わりでテーマが変わり、本も入れ替わります。
そこに音楽好きの店主がその日の気分で選ぶ音楽が加わり、それはもう、私の大好きが詰まった、最高にリラックスできる空間なのです。
 
美容院なので、当然、髪を綺麗にする技術も求められますが、ここの店主の腕前は確かなものです。
私は、以前通っていたお店の美容師さんに、「私が見た中で5本の指に入る扱いにくさ」と言われたことがあるのですが、この美容院に通い始めて、「綺麗な髪ですね」と時々褒められるようになりました。
 
そして、私がここに通い続ける一番の理由は、店主のスズキさんとのやり取りが実に良いからです。
 
美容院にありがちな、当たり障りのない、上っ面だけの会話なんて、ここではありません。お客さんを変に持ち上げることもありません。
お客さんが話したいことを話す。そして、スズキさんが感じたことを、話す。
それだけなのに、めちゃくちゃ面白いのです。
 
なぜでしょうか?
思う存分、本音トークができるからです。
現在40代の私は、家庭と仕事で忙しく、友人と話す機会もめっきり減ったので、素の自分を見せて、思ったことを隠したり、抑えたりすることなく話せるのは貴重な機会なのです。
 
貴重な機会でも、受け手がイマイチだと本音トークは盛り上がりません。
その点、スズキさんは最高ランクの受け手だと、私は思っています。
ミヒャエル・エンデの作品に出てくる「モモ」のように聞き上手なうえ、正統派関西人なので、突っ込みも切り返しも抜群です。
話術に加え、今でも現役のバックパッカーで、色々な国へ行っているし、また、一人で激戦区のエリアで長い間お店を経営し続けるツワモノということもあり、スズキさんの言葉には力があります。
でも、全然押し付けがましくないのです。
 
そして、スズキさんは世間の一般常識に縛られません。
でも、一般常識を馬鹿にしている訳でもありません。
「そういう価値観もあるかもしれないけど、オレはこう思うけどなー」と、いつも飄々としています。
 
スズキさんとのやり取りで忘れられないことがあります。
確か5年くらい前だったでしょうか。
その頃、私の息子がクラスメイトとうまくいかず、クラスのトラブルメーカー的存在となり、担任の先生から息子の蛮行に関する報告の電話がある日が続いていました。
その日の予約は夕方からで、雨が降っていたこともあり、私はいつもよりテンション低めでお店に入りました。
 
その日の髪型のオーダーが決まると、スズキさんが言いました。
「何かあったんですか?」
「なんでそんな入りなんですか?」と驚いて聞くと、
「いや、なんとなーく」との答え。
「分かっちゃいましたか。実は……」と、私はポツリ、ポツリと息子のことを話し出しました。
スズキさんはいつもよりも少しゆったり目のリズムではさみを動かしながら、私の話しに耳を傾けていました。
話し終えると、スズキさんはしばらく沈黙した後、静かに話し始めました。
 
僕、息子さんと同じような経験をしたことがあるんです。
小学校5年生くらいやったかな?クラスでは人気者やったけど、それを鼻にかけ、友達を馬鹿にした態度を取り続けていました。で、気づいたら、誰も遊ぶ相手がいなくなっていました。
遊ぶ相手がいないことは、とても苦痛やった。学校でも楽しくないし、家に帰ってもヒマ。なんでこんなことになったのかと、グルグル考えて、へこんでました。
そんな時、自分の母親に友達と遊ばなくなったことについて聞かれました。正直に話すと、散々にダメ出しをされちゃいました。罵られたといった方がいいくらいかな。
学校でも家でも、自分が受け入れられないというのは、本当に辛かったです。
 
多分だけど、息子さんは、いつか、このままではいけないと気付いて、行動する時が来ます。その時に、ちゃんと彼が動けるようにするために、家だけはくつろげて、素直な自分でいられる場所に整えておくといいかもしれないです。
料理が好きな人は、おいしい料理を作って、笑顔で「おかえり」と言うとか。
もちろん、必要なことは言わないといけないし、叱らないといけないこともあります。
たけど、あたたかい場所は、絶対に確保しといてやらんとあかん気がするんです。
 
言い終わると、スズキさんはすーっと店の奥に消えました。
そして、スピーカーから曲が流れ始めました。
平井堅 「桔梗が丘」
母が子どもの成長を見守る気持ちを歌ったバラードです。
その時、私ははじめてその曲を聞いたのですが、その歌詞が本当に胸にささり、恥ずかしながら、涙が止まりませんでした。
 
気が付くと、スズキさんは姿を消していました。
しばらくして、スズキさんは箱ティッシュと温かいお茶を持って現れました。
そして、一言。
 
「きっと大丈夫です」
 
今回は少しウエットなエピソードを書きましたが、これはこの美容院の魅力のほんの一部。バカ話編に男女関係編、そして旅編など、時に爆笑、時にしみじみと感じ入ったりしながら、毎回素晴らしい時間を過ごしています。
店を出る頃には、心が満たされ、肌艶まで良くなります。
もちろん髪型もイイ感じになっているので、キレイ度、2割増しに!
 
さて、そろそろ夏本番。
久しぶりにバッサリと切りに行っちゃおうかと思っています。
次回はどんな素敵な時間が待っているか、そしてどれだけ女っぷりに磨きをかけられるか、今から楽しみです。
 
 
 
 
***

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2021-07-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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