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自分のことを名前で呼んでほしいと願っていた過去の私に伝えたいこと

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記事:赤羽かなえ(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
「私のことは、○○って呼んでくれない?」
 
先日、知り合った方にそう頼まれて、そんな方法があったのか! とすごく新鮮な気持ちになったのだ。
 
最初から自分で呼んでほしい名前を伝えれば、小さい頃から呼ばれ方で、やきもきしなくて済んだかもしれない。
 
アラフォーにもなって目からウロコが落ちたようだった。
 
『名前やあだ名で呼ばれるかもしくは名字で呼ばれるか』
 
若い頃の私にとってその差は雲泥だった。
 
小さい頃は、そんな些細なことを自分が人から好かれているかどうかのバロメーターになっていた気がする。
 
けれど、不幸なことに私の苗字は超絶珍しかった。
おまけに転校が多かった。行く先々で私の苗字は珍しがられ、インパクトが強い苗字で呼ばれてしまいがちだ。
 
それは私の努力云々には関係なかったのだけど、苗字呼びが定着するたびに、自分が人となじめていないと思い込んで落ち込んだ。
 
小学6年生も転校生として新しいクラスの扉を叩くことになった。
そのクラスの担任は、「全員を下の名前で呼ぶ」ことにこだわる先生だった。
 
小学校6年間で初めて周りから「かなえちゃん」と呼ばれるようになった。
全員にそうだったとしても、とにかく嬉しかった。
初めて小学校のクラスに馴染めた気がするし、その1年間は楽しかった。
 
中学生になった時に、名前についてちょっとした事件が起こった。英語の先生が私の苗字の呼び方を派手に読み間違ったのだ。クラスメートは大爆笑し、あっという間にその呼び方があだ名になった。高校まで附属だったから6年間もあだ名が定着してしまい、何とも複雑だった。
 
だから、大学に入ったときにあっさりと名前呼びになったのは、拍子抜けするくらいだった。しかも憧れの呼び捨てに胸が高鳴る。
 
同級生から、「かなえって呼んでいいよね、よろしくね!」と言われたときに、大げさでなく、大学に入って良かった! と心の底から思ったのだ。これが大学デビューってやつか、みんな名前で呼び合ってなんだかスマートで、その中に馴染めている自分がひどく大人になったようなこそばゆい気分だった。
 
クラスも、サークルも、先輩も後輩も当たり前のように名前で呼んでくれた。
 
今までを冷静に振り返ると、苗字で呼ばれていたのは、苗字が珍しかったから仕方のないことだし、名字で呼ばれようが名前で呼ばれようが実際の好き嫌いとはあまり関係ない。自分の捉え方次第だけど、なぜ名前で呼ばれることにこだわったのだろう?
 
私にとって、名前呼びは鍵みたいなものだったのかもしれない。
名前を呼んでくれる人、呼ぶ人は、お互いに人と人の間にある心の扉をあけて行き来できる、少しつっこんだ話をしても許されるようなそんな間柄になれた。
 
実際に、大学生以降ぐんと交友範囲が広がり、だいぶ社交的になった。色んな人達と深い話をしたり、悩みを相談し合ったり喜びを共有し合ったりしてきた。
 
名前と交友関係の深さは何の因果関係もないことなのかもしれないし、取るに足らないことなのかもしれない。
 
でも、私は、いまだに名前やあだ名で呼ぶことを意識的に心がけている。自分が相手を名前で呼べば、相手は自然と私のことを名前で呼んでくれることが多いし、やっぱり関係早く深まる気がしたから。
 
とかく、結婚すると苗字も変わって本当の自分ではないみたいな気持ちになるし、「○○ちゃんのママ」というように子供の附属品的に名前を呼ばれることも増える。そうすると自分自身の個性が埋もれてなくなっていくような感覚になり、自分がいなくなってしまいそうですごく不安だった。
 
結婚して子育てする女性は少なからず感じることじゃないだろうか。だから、私は相手のことも名前で呼びたかったし、自分も名前で呼んでもらうことで自分を見失わないようにしたいなと思ったのだ。
 
だから、自分から○○と呼んでね、と言われて、ああ、最初からこうすれば良かったんだ、と長年迷ってきたことに答えをもらったような妙な解放感があった。
 
その方には、珍しく苗字で呼びかけていた。というのも、とても美人で素敵な方だったので、すぐに名前で呼んで図々しいと思われたくないなという遠慮があったのかもしれない。
 
苗字で呼びかけることに、悪意も壁もあるわけではないということも身をもって体感したし、そもそも、自分が呼んでほしい名前を自分で伝えればいいだけのことだったのだ。
 
自分をどう呼んでほしいか、相手をどう呼びたいか、相手とどんな人間関係を築いていきたいのか。小さい頃は相手からもらえる答えに一喜一憂していたけれど、答えが気に入らなかったら、自分で答えを作り出せばよかっただけのことだ。
 
小さい頃の私に言ってあげたい。
自分が欲しい答えは、自分が作るしかない。
呼ばれたい名前も、築きたい人間関係も、自分がどうしたらそうなれるのかということだけを考えたらいい。
 
自分の人生は、自分しかデザインできないのだ。
 
 
 
 
***
 
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2021-07-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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