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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:串間ひとみ(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
「ひとみちゃんお久しぶり!」
 
朝の5時過ぎ、フランス在住の友人からラインが入っていた。もともとFacebookのメッセンジャーでやり取りをしていたので、一瞬誰だか分からず、2度見してしまった。
 
彼女とは、高校1年生のときにクラスが一緒だった。人見知りの私と違って、男女問わず友人が多い、いわゆるイケてるグループに所属していた彼女とは、ほぼ話をしたことがなかった。そして2年生で文系と理系に分かれ、そのまま私の人生に関わらずに終わるはずの人だった。ところが、2浪した後に行った県外の大学で、奇跡的に彼女と同じ学科の同じクラスになったのだ。お互い驚きはしたものの、クラスメイト以上の特に深い付き合いをすることもなく卒業をした。5年も同じクラスにいたのに、ハーフのように目鼻立ちがはっきりしていて美人、お洒落、料理上手と、見た目以上のことは知らなかったし、私と違うタイプの彼女に対して、少し苦手意識もあったと思う。
 
大学のクラスは、卒業後も年に1回クラス会が行われている。クラス会では、当然お互いの近況報告、不参加メンバーが今、何をしているかというのが主な話題になる。そこで料理教室の先生をしていた彼女が、フランスにいることを知り驚いた。どちらかといえばおっとりした雰囲気の彼女が、海外で生活をしている姿が想像できなかったからだ。
 
数年前に職場の後輩とフランス旅行に行くことになったとき、ふと彼女のことを思い出した。まだフランスにいるのだろうか? そもそもどういう流れでフランスに行ったのだろうか? 彼女に対する興味が勝ち、Facebookで連絡をしてみた。
 
「お久しぶりです。今度フランスに旅行します。せっかくなのでオススメのレストランとか教えてもらえたらと思って連絡しました」
 
大学を卒業してから10年以上、会うどころか、連絡すらもとったことのないクラスメイト。期待していなかったのだが、想像以上のテンションで返事がきた。
 
「久しぶり(中略)8月のパリはバカンスで、有名なお店でも開いてないところがあるから、行きたいお店があれば、調べるよ!」
 
そこから出発までの間、私が遠慮なくメッセンジャーに書き綴った30以上の観光地、レストラン、パン屋さんなどを調べたうえ、私と後輩がフリーの日に回るコースまで作る徹底ぶり。結果的には、TGV(フランスの高速鉄道)で1時間以上をかけて彼女もパリに来て、直接案内をしてくれた。
 
一緒にランチを食べながら、私はどうしても聞かなければならないことがあった。そう、どういう経緯でフランスにいるのかということだ。いつか海外に住んでみたいという夢があり、ましてフランスは小さい頃から、1番興味がある国だったからだ。
 
「料理教室の先生を辞めた後、病院で管理栄養士してたんだよね。そこで、発展途上国の栄養状態について話をする機会があって、自分なりに調べてやったんだけど、終わった後に『現地に行ったこともないくせに』って言われてさ。なんか悔しくて、じゃあ実際に行って見てきてやる! って思って、青年海外協力隊に応募してアフリカに行ってた。マラリアにかかって死にかけたりしたけど、行ってよかったよ。その国がフランス語圏だったから、そのまま勉強を続けて、フランスの大学に入って、今はシャンパンの会社にいるよ」
 
私もどちらかといえば、フットワークは軽い方だけど、悔しかったという理由でアフリカに行ってみようとまでは、たぶん思わない。そのままフランスの大学に行ったり、ましてマラリアにかかって死にかけた話をケラケラ笑いながらする彼女は、私が持っていたおっとりしたイメージとは真逆の人だった。そして、この旅行をサポートしてもらって知ったことだが、とても面倒見がいいし、私の頭の中を読んだかのように、ドンピシャのレストランを予約してくれていたり、自分が帰った後も私たちが困らないような気遣いをたくさんしてくれていた。見た目の華やかさとか、人見知りとか関係なく、彼女の人柄が周囲に人を集めていたのだ。苦手意識もあったはずなのに、そんなことを忘れてしまうほど、話が弾んだ。
 
それから数年後、私は再びフランスに行き、今度は躊躇することなく彼女に連絡をし、会う約束を取り付けた。サン・ラザール駅内のレストランでランチを食べながら、本当にいろいろな話をしたが、特にたくさんしたのが、大学浪人のときの話だった。浪人しても初め進学をする気がなかった彼女が、2年目に出会った塾の先生と一緒にした猛勉強で、勉強に対する考え方、取り組み方が変わったと言っていた。
 
「昨年から通い始めたフランスの公衆衛生高等研究院の修士号の単位をすべて取り、残りは研究論文だけの提出となりました。次はフランスの栄養士国家資格でも取得しようかなーって思っています。オンライン学習だし、修士号より随分ハードル低いしね。お互いまだまだ勉強しないとだけど、頑張りましょう!」
 
彼女は、フランス人の旦那さんと2人の子育てをしつつ、まだまだ勉強する気らしい。
 
高校生の頃、勉強に対してやる気なし子ちゃんで大学を2浪した私たちが、誰に強制されるわけでもないのに、大人になった今、進んで勉強をしている。新しいことを学ぶことは楽しいと思える。縁があったにも関わらず、私の方から距離を縮めようとしなかった相手に、歩み寄ったことで、たくさんの刺激を受けている。彼女が頑張っているから、私も頑張ろうと思える。大人になって、こんな関係が作れると思っていなかった。もしかしたら、今までちょっと苦手で通り過ぎてきたことの中にも、こんなものが含まれているかもしれない。そう思ったら、大人になっても変えられることはたくさんあるし、大人になってもできることもたくさんある。大人になったから無理じゃなく、大人になってもできるし、変えられる! と思う毎日を過ごしたいなあと、フランスから届いた彼女のラインを読みながら思った。
 
 
 
 
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2021-07-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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