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落合博満は「心技体」ではなく「体技心」で選手を育てた


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記事:篁五郎(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
「心技体」
 
スポーツをやっていた人ならば一度はこの言葉を聞いたことがあるだろう。ビジネスの世界でも部下を育てるときのワードとしても良く出てくる。その語源は1933年柔道家の道長伯氏が、フランス柔道連盟会長の「柔道とはいったい何か?」との問いに「柔道の最終的な目的は心技体の錬成であり、それによって立派な人間になることです。技術を習得するには強靭な精神力が必要です」と答えたのがきっかけだという。
 
しかし、その言葉に正面から違うと言った男がいた。日本プロ野球界で選手として大きな実績を持つ落合博満である。落合は2003年から2011年まで8年間中日ドラゴンズで監督を務め、リーグ優勝4回、日本一1回を達成した名将でもある。
 
その落合が言うには、プロスポーツ選手を育てるために大切な順番は「体技心」だと言う。
 
「一流選手と呼ばれるためには技術を身に付けないといけない。技術ってのは一流のコーチに教えて貰ったってすぐに身に付くもんじゃない。技術を身に付けるための練習に耐えられるだけの体力がないとダメ」
 
そうはっきりと言ってのけた。実際に落合がプロの選手を指導するときに必ずやらせるのが打撃マシンで6秒に1球のペースでバッティングをさせることだった。その狙いはずっと打ち続けさせることで身体が自然と楽に打てるフォームになる。楽に打てるフォームこそその選手に合った打ち方だからだ。
 
しかし、この練習を高校生にはやらせてはいけないと断言をしている。理由は身体がまだできがっておらず体力的に無理だからだ。
 
プロ野球選手は3月から10月までほぼ毎日、真剣勝負の場で戦わなくてはならない。それを乗り切るだけの体力があるから可能なのだ。
 
そういった体力を持つ選手が技術を身に付ければ、試合の中でピンチになっても動じずに済む。しかし技術がなければ「どうしよう」と狼狽してしまい、相手との勝負の前に自分に負けてしまう。
 
だから体力があれば技術が身に付くし、技術があれば、心が動じずに平常心で戦えるという理屈だ。落合は、自らの考えを実践するために監督時代、2月3月のキャンプで徹底的に練習をさせた。体力を強化するメニューはもちろん、技術を高める練習で選手を絞り上げていった。
 
単に練習だけ厳しくさせても選手の身体が悲鳴を上げたら意味がない。そこで落合はキャンプで宿泊するホテルにもかなり厳しい要望を出した。現在のプロ野球はホテルを丸々借り切り、大宴会場でビュッフェ形式で食事を出す。メニューは洋食や中華の焼き物や炒め物が中心。その方が作る側も食べる側も楽だからだ。
 
落合の現役時代は、宿舎が旅館からホテルへ移行しつつある時期。旅館に泊まれば大広間で選手全員が食事を摂り、メニューは日本食がほとんど。鍋やすき焼きを何人かで囲むことが多かったという。ホテルに泊まれば、ホテル側は腕によりをかけた献立にしようと考え、選手も専門のシェフが作った料理を喜んで食べた。ところが次第に飽きてきてしまい「夜でも納豆と味噌汁、白い飯が食いたい」という選手が出てきてホテル側とメニューの交渉をするほどこだわりを持っていた。
 
そんな時代を経験しているせいか、食べることもプロ野球選手の仕事だと考え、料理の質にしても、品数にしても、ホテル側にはかなりの要望を出したという。
 
それでも選手は集まらない。落合が監督のときは「夜間練習なし」「ミーティングなし」「門限なし」にして選手を夜は解放した。選手はプロなのだから自分で考えて行動してくれて構わないという考えからだ。
 
つまり球団が用意した夕食を摂らず、自費で外食をしてもいいのだが、豪華なメニューを用意しても宴会場に現れる選手は数えるほどだったという。
 
「いまどきの若い子は、外で好きな物を食べるのがいいのかな」
 
そう落合が答えると球団職員がこう答えてきた。
 
「監督、これでもホテルで食べる選手は増えています。以前は誰ひとり来ませんでしたから」
 
その理由の一つは、監督やコーチと一緒に食事をしたくないからだという。確かに球団職員の言うことにも一理ある。昼間ガミガミと言われていたコーチに食事の場でも顔を合わせたくないだろうし、夕食の時間まで同じ事を言われるなんて息苦しくてたまらない。
 
確かにその通りだと思った落合は、それならばと選手とコーチ、監督の食事会場を分けるようにした。それによって選手が宴会場で食事を摂るようなったという。次の日の練習を乗り切るためには食事と睡眠をしっかり取るのが大切だという落合の考えが伝わるようになった。
 
そんな中、落合はキャンプ中に宴会場で食事をするときはゆっくり摂るようにしていた。なぜなら、落合から野球の技術を学びたいという選手がいたからだ。昼間は話をする時間がなくても、夜になれば三度の三冠王(ホームラン、打点、打率がリーグトップになること)を獲得した落合の話を聞きたいと思うのは向上心があれば当然だろう。熱が入って夜中まで技術論を交わしたこともあるという。
 
そうやってどっぷりと野球につかり、体力と技術を身に付けてレギュラーを獲得した選手がいた。落合の監督時代8年間フル出場を果たし、後に2000本安打を達成した荒木雅博だ。
 
荒木は落合が監督になった当初はレギュラー当落線上の選手だった。しかし、選手が体力と技術が磨ける環境で力を付けてレギュラーを取り、8年間誰にもその座を譲らなかった。
 
練習・食事・睡眠が取れる環境を作り、体力を付けて、徹底的に練習ををして技術を向上させる。それによって自信がついて心が磨いていったのが荒木だった。「体技心」を体現した荒木雅博を育てた落合博満の論は確かに実践的である。もしかしたらビジネスの世界でも見習える点があるかもしれない。
 
 
 
 
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2021-07-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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