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コロナ闘病記


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:久米 靖(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「PCR検査の結果ですが……」
電話口の看護師さんの少し遠慮がちな口調は、次の言葉を容易に想像させた。
「陽性でした……。明日の朝、保健所から連絡がいきますからその指示に従ってください」。
 
体に違和感を覚えたのは、GWに入って3日後の朝だった。
翌日には体温が一気に39℃まで上がり、それが3日間続いた。祝日のため近くにPCR検査を受けられる病院がなく、平日になるまでひたすら市販の解熱剤を飲んでしのいだ。
 
発症して4日目、やはり39℃を越えた。
保健所に連絡すると、朝一ですぐにPCR検査の予約を取ってくれた。その結果の連絡がきたのだ。
(会食もしていないし、人混みにも行っていないのに……)。
理不尽に感じつつ、感染したという事実を受け入れるしかなかった。
 
翌朝、保健所から電話があり、現在の症状を話すと「とりあえず自宅療養にしましょう」とのこと。
熱は終日38℃台前半~39℃台前半を乱高下。
ネットでコロナの症状を調べると、「軽症なら熱は7日以外に下がる」との記載があったので、「あ、発熱して5日目だし、もう回復期に入ったのかな」と少し楽観的に考えた。
だが、甘かった。
 
発症8日目の午前3時。全身が震えるほどの激しい悪寒に襲われて目が覚めた。熱を計ってみると、39.5℃! あまりのことに呆然として涙が出てきた……。
季節外れの厚い布団にくるまって寝ようとしたが震えが止まらず、暖房まで入れて朝まで過ごした。部屋を歩いても平衡感覚がなく、転んでしまう。
 
朝になっても熱は39.2℃。これで発症してから7日間39℃超え。
保健所が開く時間にすぐ連絡し、状況を説明すると、保健所の方は即座に言われた。
「入院しましょう! これから病院を探します」
「病院が見つかったら連絡しますので、入院の準備をして待っていてください。保険証を忘れずに。病院ではコロナの患者さんの衣類は洗濯できないので、多めにお持ちください」
「多めにって、何日分くらいあればいいですか?」
「2週間分ぐらいですね」
(……! 2週間!?)
 
保健所の方から、13時半に再び連絡があった。
「入院できる病院が見つかりました。慶応義塾大学病院です」
「15時過ぎに、こちらで手配した民間会社の車がお迎えに行きます。それで病院まで行っていただいて、16時に入院です」
 
迎えの車はワンボックスカーで、内部はビニールでびっしり覆われ、運転手さんは防護服を着ていた。
「16時到着だとぎりぎりですから、少し荒い運転で飛ばします。遅れると入院を断られることがあるので!」
「……はい(そんなこと、あるんだ!)」
 
病院に向かう道すがら、運転手さんといろいろな話をした。もちろん、運転席との間はビニールで遮蔽されている。
 
「慶応病院に入院できるのはスゴいですね! 今は都心の病院に空きがなくて、昨日は八王子の病院まで4往復もしたんですよ」
「そうなんですか!? 多分保健所の方が頑張ってくださったんだと思うんですけど」
「保健所の方も経験を積んできて、もうわかるんですよね。お話を聞いてヤバいと思われたんじゃないでしょうか。あそこは仮に重症化しても、転院せずにそのまま治療が受けられますしね」
“重症化”という言葉が重くのしかかってくる。
 
「大丈夫、絶対治りますよ! 病院のメンツもありますしね」
「絶対治る」という言葉にとても勇気づけられた。
 
16時5分前に病院の救急搬入口に到着。
搬入口には看護師さんが迎えにきてくれて、すぐに検査室へ通され、早速様々な検査が始まった。レントゲン撮影・CTスキャン・採血・心電図と、とても手際良く検査が進む。
 
病院に到着してからおよそ40分で全ての検査が終了。
「これから病室にご案内します。検査の結果をふまえて医療チームで治療方針を決めますから、後で説明に伺います」
ふと、安心感に満たされた……。
 
病室へは車椅子で看護師さんに押されて移動。
通された部屋は個室で、トイレも浴室も完備されていた。ただこれは一時的な措置で、検査の結果と病状が判明するまでの間とのことだった。
 
夕食前に先生が病室に来て病状と治療方針の説明をしてくれた。
「肺炎になっています」
「!……」
覚悟はしていたが、やはり面と向かって言われるとこたえる。
「今日から毎日しばらく、抗生剤とレムデシベルの点滴を開始します」
レムデシベルは、特例承認されたコロナの治療薬だ。
 
夜、早速薬の投与が始まった。
まず、左手首に点滴用の針を刺す。看護師さん曰く、「少し痛みますよ」と。針が刺さると、体が震えるほどの激痛が走った!
 
「グアッッッ!! 痛いっ!!!」
思わず大きなうめき声を上げてしまった。これまでの注射で全く経験したことのない痛み! まるで、手首に釘を刺されているようだ。
この針は5日~10日間刺したままになるとのこと。安堵と不安の両方の気持ちがうずまいた。
 
発症9日目。再びPCR検査を受けた。変異株かどうかを見極めるためだ。
結果は英国由来の変異株。今は70~80%がこの変異株だそうだ。
病院から渡された書面の見出しが「COVID19中等症以上の患者様へ」となっており、もう軽症ではないのだということを、あらためて思い知らされた。
 
発症10日目。コロナ専用病棟へ移動することになった。
エレベーターで下に降りる時も、別棟で上に昇る時も、いくつかのフロアでドアが開いて他の患者さんが乗ろうとされる。それを看護師さんが制止して、「すみません、今専用で運行していますのでご利用いただけません」と。
申し訳ないと思いつつ、自分が“隔離される立場”になったのだとひしひしと感じた。
 
コロナ専用病棟はフロアの半分を占め、そこだけがガラス戸で仕切られていた。
シャワー室は病棟内の別の場所にあり、30分単位で予約を取る形だ。
この日、入院以来初めて温かいシャワーを浴びることができ、とても落ち着いた。夜、体温が久しぶりに37℃台まで下がり、一時危険な状態にまで下がっていた酸素飽和度も回復してきた。
 
発症から11日目。10日ぶりに平熱まで下がった! レムデシベルと抗生剤の投与はまだ続くが、熱はその後上がることはなかった。
 
発症15日目。四度目の血液検査の結果、先生から衝撃的な言葉が発せられた。
「肺に血栓ができている可能性があります」
「……!」
「レントゲンではわからないので、今日もう一度CT検査を行って確認します。問題なければ、明日は退院できますよ」
「もし血栓が確認されたら、どうなるんですか?」
「……もうしばらく入院していただいて、治療を続けます」
期待と不安が入り交じる。
 
検査後、ドキドキしながら先生の言葉を待っていると、
「血栓は大丈夫でした。明日退院できますよ!」と。
踊り出したくなるほど、嬉しい気分だった!!
この日最後の抗生剤を投与。8日ぶりに、やっと点滴の針を抜ける時がきた。
 
発症から16日目、入院から9日目、ついに退院の日が来た!
先生と看護師の皆さんに厚くお礼を言って、病院を後にした。街の喧騒も電車の混雑もとても気持ちの良いものに感じた。
 
後遺症の検査のため、しばらくは定期的に通院しなければならない。
しかし今は無事に退院できたことと、入院の手配と治療に尽力してくださった方々に心から感謝したい。
 
 
 
 
***
 
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2021-07-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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