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癒しは、責任感あればこそ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:古澤 恵太(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
昨年の8月、ブリーダー崩壊で保護された母犬のお腹の中で見つかり、ボランティアさんの家で生まれた保護犬を迎え入れた。少し間抜けで最高に愛らしいミニチュアシュナウザーの雄犬の名前は、ひるね。
 
初日は、運ばれてきた移動用キャリーから数時間出てこず、餌は鼻先だけ出して食べていた。真夏にも関わらず小熊かと思うくらい毛は絡まりもしゃもしゃで、少し酸っぱい匂い。軽い皮膚病も患っていた。
 
そんなひるねとの生活がこの夏で1年になる。少しずつ環境に馴染み、最近は自己主張もするようになった。
彼の一挙手一投足が、我が家の癒しとなっている。
 
迎え入れるということ
2017年の環境省のデータによれば、1年間に自治体の保健所や動物愛護センター等に引き取られる犬や猫の数は、年間およそ10万6百頭にのぼる。在宅勤務により同僚との会話や友人との交流が減ったことによる、ペット需要の一次的な増加や、譲渡会の自粛による保護犬・猫の受け入れの阻害など、コロナによる影響は小さくない。
 
ただ寄り添ってくれる存在が救いになる。癒しを求める人の心情は理解できる。その一方で、経済的な理由や元のワークスタイルに戻るにつれて手放す件数も急増しているという。
 
しかし、ペットも命ある生き物だ。生きるためには食べ物も必要だし、排泄もする。運動しなければストレスも溜まるし、寂しければ声だってあげる。共に暮らすためには、お金や場所が必要だ。少しの想像力と情報収集すれば分かることでも、購入したものの、やっぱり飼うのは難しいと責任を放棄してしまう人がいる。
 
一度、飼うと決めたら必ず責任が発生する。「そんな大袈裟な」と思う人もいるかもしれない。しかし、初日のひるねは夜になるまで数時間、移動用のキャリーから出てこず、ずっと震えていた。いまとは表情も全く違って見える。
 
動物にだって気持ちはあるし、人と同じように楽しく生きる権利がある。彼らはとても沢山のものを与えてくれる。だけど、少なからず飼い主にはコストや作業、制約が発生する。ただ与えてもらうだけでない、対等な関係であればこそ、お互いにとって心地よい関係が生まれるのだと思う。
 
温かな時間のために
アメリカの心理学者アブラハム・ハロルド・マズローが提唱した理論で、人間がもつ心の中の内的な欲求を分析し段階で分類した、マズローの法則の中には社会的欲求が含まれている。これは、集団への帰属や愛情を求める欲求であり、「愛情と所属の欲求」あるいは「帰属の欲求」とも表現される。
 
人は生きるために他者が必要であり、その存在を鏡として自己承認を得る。必ずしもその対象は人に限らないと僕は思う。ペットは、自分の存在を肯定してくれる力を持っている。
 
我が家の朝は、愛犬のゲージを開けるところから始まる。就寝から起床まで8時間しかたっていないのに、毎日、数年ぶりの再会のように、喜んでくれる。途方もなく愛らしい。
 
保護期間にあまり散歩の習慣がなかったらしく、散歩は大嫌い。リードを見るとケージの中にそそくさと戻って行き、目も合わせてくれなくなる。ハーネスをつければ、もうこの世の終わりかのごとく、その場所で遠くを見つめて動かない。それでも、飼い主の試行錯誤のかいもあって、1年かけて散歩は帰り道だけ歩くようになった。2人いないと、その場から動かなくなるなど、散歩一つとっても一筋縄ではいかないことばかりだが、昼寝中、気づけばお腹の上で寝息を立てている愛犬を見るたび、つくづく迎えて良かったと感じる。パートナーは、1日に最低5回は「なんてうちの子は可愛いんだ」と話しかけている。
 
西武百貨店の「おいしい生活。」など、名作コピーを生み出してきた、ほぼ日社長の糸井さんが「かわいいは社会の酸素である」とNHKのトーク番組で仰っていた。その言葉通り、ここ一年で我が家の酸素濃度は急上昇している。
 
もちろん、ひるねが来る前と同じように仕事はしているし、生活の大部分は変わっていない。
それでも、日常のシーン一つひとつが豊かになったのは間違いない。そのシーンはこれまでも毎日の生活の中にあった。ひるねが来たことで、当たり前の時間に意識が向くようになったという方が正しい。
 
意識が向いたことで生まれた、その温かな時間を続けていきたいと思う気持ちは、言い換えれば、責任の自覚なのかもしれない。その時間を保つためには、経済的、時間的な余裕が必要になる。餌やペットシートの消耗品やワクチン摂取の金銭的なコストから、散歩時間まで。
 
どうやればその余裕を生み続けることができるのか。時間をより能率的・効率的に回すことを考え行動すればこそ、結果として暮らし全体のQOLが上がるのだと思う。
 
この順番を間違え、自分の余白をつくる努力をせず、与えてもらうことを目的にすれば、その歪みは罪のない弱い存在に向かってしまう。動物を飼うことが癒しになる側面も否定しない。だが、ペットを買うから生活が豊かになるのではない。家族との些細な時間を守り、育てるために、自分が頑張るからこそ、毎日に彩りが生まれるのだ。
 
仕事から戻って、玄関のドアを開ければ、千切れんばかりに尻尾を振る愛犬。今日も、もう本当に可愛い。
 
 
 
 
***

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2021-07-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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