自分の選んだ色で、会いにゆこう
*この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:山本麻莉(ライティング・ゼミ超通信コース)
「うーん、誰が誰か、わかんないな……」
オンラインで開催されたワークショップでのこと。
総勢16名の参加者の顔がずらりとノートパソコンの画面に並んだ様子を見ながら、思わず口に出していた。
講師の人以外、別に見分けなくたって構わない。けれど、次回以降の開催にも顔を合わせるかもしれない。
だから、なるべく顔と名前を一致させておきたい。
そう思って、手元のノートにその人の名前と見た目の特徴を記しているのだが、どうにもその特徴を捉えるのが難しいのだ。
私は、人の顔を覚えるのが苦手らしい。
顔ではなくて髪型で覚えるのも一つのやり方だ。
けれども同じような髪の色で、まとめ髪やショートヘアやミディアムヘアが同じくらいいる状態ではそれも決め手に欠ける。
そう思って、もう一つの要因に気づく。
みんな、黒ばっかりだ。
ノートパソコンの画面に映っている参加者たちの顔、そして上半身。
そのどれもが黒い服ばっかり。
女性ばかり16名のうち、黒か濃いグレーの洋服を来ていたのは、10名。
そして残りは白が3名、鮮やかなピンクが2名、そして残る1名が黄色……という、まあまあ偏った分布だった。
「みんな黒かグレー」と聞いて思い浮かべるのは、リクルートスーツ。
イメージは真面目、規律正しい、そして無難、あたりだろうか。
ワークショップでみんな初対面だからと、個性は少し抑え目にして様子見をした結果なのか。
それとも単純に、黒が好きで黒を着たい人達が集結したのに過ぎないのか。
個人的には、
みんながそれぞれ、自分の着たい服を着ればいいと思う。
だけど、今回のように初対面の人たちが集まる場では
「自分がどんなキャラクターなのか、何色が好きなのか。
または、今日はどんな気分なのか」
それを着ている服で表すことは、自分のことを理解してもらうための、ささやかなヒントになるかもしれない。
思い浮かぶイメージは、あれだ。
特撮ヒーロー戦隊ものの「赤、青、黄、緑、ピンク」だ。
「なんとかレンジャー」と名のつくテレビ番組を一切見た記憶のない私でも、
「赤は熱血、正義感メラメラ」
「青はクールに」
「黄は元気いっぱい、カレー好き」
「ピンクは可愛く優しく」
「緑は平和主義者で仲裁役」
というイメージを、なんとなく思い浮かべることができる。
戦隊モノにも色々バリエーションがあって、それぞれのキャラクターには、もちろん名前があるのだけど
名前を覚えていなかったり、知らない段階でも
色と、そこに結びついたキャラクターを通して、記憶に留めることができている。
身につける色、そのなかでも顔と近い、上半身に着る洋服の色は
見た人から、イメージと結び付けられて記憶されるものだと思う。
それも無意識のうちに。
言葉を発しなくても、色を通して伝えることができるとしたら、
自分が選んだ色、好きな色、思い入れのある色を着てみるのはどうだろう。
「自分のキャラクターはこれ! 」とガチガチに決めてしまって
「僕は青しか着ません」とストイックになる必要はまったくない。
その日の気分で決めて構わないし、
季節に合った色をまとうのも、楽しいと思う。
私の例で恐縮だけれど、オンラインの会合に初めて参加する時には、
春の花の色のような黄色のワンピースを着る。
喋ることが得意ではない自分が暗い服を着ていると、余計に画面と同化してしまう気がして
自分に暗示をかけるように、多少は社交的に振る舞えるように、明るい色を身にまとうことにしている。
色の、力を借りる。
鮮やかなピンクの服を着ている人を見ると、ピンクが好きなのかな、と思うと同時に
その鮮やかさから、見ているだけで元気をもらえたりする。
夏の暑い日にお話しした人は、エスニック風のオレンジのブラウスを着て
南国の海を背景に、爽やかな空気を届けてくれた。
色は、記憶に残る。
ちなみに特撮ヒーロー戦隊モノにおいて「黒」はどんな立ち位置か?というと、
私の中では
「必要な時だけ現れて、活躍して去っていくけれど、レギュラーメンバーにはならない助っ人キャラ」だ。
確かな実力で導いてくれるけれど
主役からは一歩下がって距離を置いているようなイメージ。
そんな意図を持って、黒い服を着てみるのもいい。
言葉を発しなくても、色を通して伝わることがあるとしたら、
自分が選んだ色、好きな色、思い入れのある色に身を包んでみたい。
それを見た人は、色を通してさまざまな印象を受け取り、
無意識のうちにイメージと結びつけて記憶する。
その人を覚えておくきっかけに、その人を深く知るヒントになる。
そんな風に、自分の色を選んで着る人が増えた時
パソコンの画面越しに会ったそれぞれの人は、きっと色とりどりで、自由で、雄弁で
人の顔を覚えるのが苦手な私も、ほっと救われるような気がする。
***
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