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中学生が教えてくれた、色をまとうということ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ろびん(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「ねえ、なんでいつもそんな地味な服なの? オバサンみたい!」
 
ふつうの中学3年生の女子というのは、こんなにハッキリ言ってくるものなのだろうか。
 
 
こんなお昼のバラエティ番組をご存知の方もいるだろう。ファッションに詳しそうなオネェに、「おブスでぇ~す!」って言われちゃう、あのコーナー。街行く人を捕まえて、勝手にファッションチェックをされるというなかなか強引な企画なのだが、まさに私はそんな気分だ。
ええい、うるさい! 私はファッションチェックなんて望んでいない。
私は高校の教員をしながら、夜は週に2回、中学生に教えている。
そこでは、昼のように私が前に立って授業をする、いわゆる講義形式の場ではない。
中学生が集まる塾の自習室のような場で、中学生はそれぞれ自分で教材を持ってきて勉強をすすめる。そのなかで分からないことがあれば、私たちサポーターに質問してね、というスタイルである。
 
私は社会科教員で、理系教科は大の苦手だが、ここは公的なサポートで成り立つ勉強の場。中学生は無料で利用しているので、理系がさっぱりな私でも後ろめたさゼロでお手伝いしている。「この問題むずかしいね〜! とばしちゃえ〜!」と言う私。中学生にとっては先生ではなく、お姉ちゃん的な存在だろう(昼はちゃんと先生やってるよ! と言っても信じてもらえない)。中には私と話すのが楽しみで来ている生徒がいるのは事実だ。勉強そっちのけで、今日あったこと、恋愛状況、グチ、テストやだ~……などをずーっと話してる中学生を相手することもしばしば。これは昼とはちがう疲れがおそってくる。いいから勉強してくれ。
 
さあ、そんな生意気な……おっと、
かわいい生徒たちとの会話でもよく話題になるのが、冒頭のようなファッションチェックだ。
いつも塾には高校で勤務したあとそのまま行くので、服装はいわゆるオフィスカジュアルだ。その日の服装は、ベージュのブラウスに黒のパンツスーツ。特別に地味という訳ではないと思うが、めちゃくちゃ無難な格好であることは間違いない。私にとっては、わりと気に入ってる方のコーディネートだった。それに対して、
 
「ねえ、なんでいつもそんな地味な服なの? オバサンみたい!」
「若いんだからさ、もっと明るい色の服とか着たら?」
と言われると、グサッとくるものがある。
 
「社会人の服なんてこんなもんよ、特に教員なんてね」
そう返すのが、精神的にも体力的にも精いっぱい。
そんなことはいいから早く勉強をしてくれよ、とそそのかしても、おかまいなしに話を続ける生徒。
「今日はお風呂上がりで暑かったから、ノースリーブのワンピースでしょ、これお気に入り! かわいいでしょ? このオレンジがワタシって感じじゃない?」
 
また始まった。これ、あと15分はつかまる&勉強しないコースだ。この子は喋りだすと本当に止まらない、めちゃくちゃおしゃべりっ子。よくそんなに早口でしゃべることがあるなァ、というかよくそんなにしゃべる元気があるなァ、といつも思う。ま、ねらいはできるだけ勉強しないで帰ることだろう。
 
うんうん、とテキトーに頷く私。
彼女はいたずらな笑顔を浮かべて続ける。
「さすがにノースリーブだけじゃまずいから、このカーディガン羽織ってきたの。ね、似合うでしょ?」
机に両肘をついて、なぜか私に上目遣いで語る彼女は、嬉しそうだ。
 
「そうね、今のうちに好きなものをいっぱい着なよ」
 
もう一度勉強をするように言うと、心のこもってない「はーい」を最後に、ただ教科書の英文をノートに写すだけの作業を始めた彼女。ふぅ、ひといきつける。そんな彼女を隣に、ぼーっと考えた。
 
地味で、オバサンみたい、かぁ。
20代半ばの私にとって、いくら中学生が相手でも、オバサンはまだ受け入れがたい。
そんなにこの服装って老けて見えるモンなのかな。
 
それと同時に、嬉しそうに今日のファッションを紹介した彼女が、羨ましくも見えた。
本当に着たい服を着てるんだって、自信満々に言えることが。
 
何がそんなに私と違うんだろう。この子は特別若くないと着られない格好ではない。露出は控えめだし、きれいにまとまったそのコーディネートは、麦わら帽子さえかぶればバカンスに来たOLみたいだ。同じ服を私が着ても、痛々しいことはない。
やっぱり、色なのだ。私には、今圧倒的に色が足りてない。言われてみれば、なんとなく元気がなく見える、この色の組み合わせこそが、実際に私の元気さえも奪っていくのだろうか……?
 
その週末、ショッピングセンターに行き、オバサンに見えない服を探した。オフィスカジュアルかつ、年相応に見えそうな服。いつものクセでどうしても、ベージュとか黒とかくすんだカラーに目が行くのだが、それらは一旦無視をした。今日は色モノを探すんだ。
どれがいいのかな……。ピンクはちょっと恥ずかしいな。なら、寒色のブルー系かな。これなら恥ずかしくはないし、何より自分の好きな色だ。ちょっと着てみよう。
……するとどうだ。水色のトップスは顔周りが明るく見えるし、さわやかで夏っぽいし、何より若く(年相応に)見える気がする。
 
「私、水色、いいじゃん。色モノ、いいじゃん。」
試着しただけで、顔がほころんだ。
ちょっと悔しいくらい、あの(うるさい)生徒の、言うとおりだった。ベージュより、こっちの方がいい。
 
翌週。
 
「ねぇ」
早速今日の私のファッションチェックを始めようと、話しかけてきた彼女。
この日はこの前買った水色のトップスに、ネイビーのタイトスカートのコーディネート。
 
「今日の服、いいじゃん!」
 
よかった~~~。
何気に、生徒に何を言われるかとドキドキしていたようだ。これでオバサンって言われたらもう終わりだと思っていたけど。
「ねぇ、ワタシが言ったからだよね? 明るい服着たらって言ったからだよね? ねぇ、いつもそれ着てよ!」
 
うるさいのは相変わらずだけれど、今日はちょっと乗り切れそう。
色をまとうことのパワーと、それを教えてくれた君の笑顔でね。
 
 
 
 
***
 
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