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天職は決して貴方を離さない


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記事:晏藤滉子(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
「結局私って、元に戻っただけなんですよね。何やってんだか・・・・・・」
久しぶりに会う彼女は、ため息をつきながら呟いた。
 
私は心を扱う仕事をしている。心理カウンセリングが主な業務と言えば分かり易いだろう。心理学だけではなく、占星術だって総動員する。ある意味、心に関する「よろずや」なのかもしれない。
 
目の前の彼女は15年くらい前からのクライアントだった。
小さなモヤモヤから人生の大きな転機まで、機会あるごとに訪ねてくれる。
 
彼女はずっと福祉施設の仕事をしていた。
話を聞いているだけでも、気力・体力・気配りが必要な仕事。誰にでも務まる類のものではないだろう。使命感が必要とされる職種だと私は思っていた。
 
出会った当初から、彼女は熱心に仕事の話をしてくれた。とても活き活きとして楽しそうに話してくれる。厳しくてもやり甲斐がある・・・・・・その様子から彼女の仕事への熱い思いが伝わってくる。彼女にとって、その仕事は「天職」なのだろうと思っていた。
 
ある時、彼女からSOSが来た。
職場の人間関係や人事など、今まで順調に進んでいた仕事に行き詰ってしまったらしい。家に帰っても、つい考え込んで心は塞いでしまう。彼女のキラキラした笑顔は消えていた。
 
彼女にとっては、初めてと思しき挫折。
「私、辞めようかと思っているんです」
 
どうも心の中では「何か」決めているような雰囲気を感じた。
「したい事、あるんじゃないですか?」私は訊ねた。
 
「笑われるかもしれないけれど・・・ずっと素敵な雑貨屋さんで働いてみたかったんです。勤めたいお店も見つけてあります」
 
やはり決めていたようだ。今の仕事から距離を置くのも良いのでは・・・・・・と、私は彼女の背中を押した。
 
一年後くらいだろうか、彼女から再び連絡が入った。
久しぶりに会った彼女は、何だかスッキリした様子。でも少しバツの悪そうな雰囲気で近況を話し始めた。
 
彼女は、予定通りに転職をした。真逆のような新天地では何もかも新鮮で覚えることも山ほどある。人間関係だって和やかな雰囲気。何より昔から憧れていた仕事なのだ。彼女にとって満足な転職だったらしい。
 
でも数か月が経った頃、何だか言葉で表せないようなモヤモヤを感じたという。
何の不満も見当たらないのに・・・・・・彼女自身にとっても不可解な感覚が続いていたらしい。
 
「私、気づいたんです。前職に未練があるっていうことを。大変な仕事だったけど毎日凄く充実していたから、本当に好きなんでしょうね・・・・・・。今更だけど、もう一度戻りたいって思っているんです」
 
彼女は相談しながらも、いつも決意はすでに決まっていることが多い。
私に出来る事は話を丁寧に聞いて、適度に背中を押すくらいだ。私の経験上、決意を固めた上での相談事は、落としどころを間違えることはない。というか間違えようがないのだ。人生を決めるのは本人なのだから。
 
彼女はそれから、前の職場に戻る事となった。資格や経験を考慮したら違う職場でも引く手あまただろう。しかし彼女は、元の上司に頭を下げて復職を願った。それだけ彼女の強い覚悟が伝わってくる。
 
「私、結局元に戻っただけなんですよね。何やってんだか・・・・・・」
そう言った彼女の表情は落ち着くべきところに収まった、安堵感が満ちていた。
 
天職とは、天に導かれたような職業とも表現できる。
能力が生かせる適職とも違う。運命を感じさせるような魅かれる仕事。
 
子供の頃は天職なんて意識はない。好きな事、カッコいいと感じることが仕事に直結する。そして大人になって社会に出てみると、能力や人間関係の壁にぶち当たる。心が折れそうになった時は、「自分の天職ってなんだろう」とふと思うものだ。
 
占星術のカウンセリングをしていると、「人間関係」「お金」「仕事」は相談の三大テーマかもしれない。仕事は人生の充実度を左右する重要な要素だ。確かに運命に導かれるような、縁を感じる仕事は存在するだろう。でもそれは周囲が決める事ではなく、自分で腑に落とすべきこと。もしかしたら、今就いている仕事こそ天職かもしれないのだ。不思議な話だが・・・・・・天職を受け入れ真正面から取り組んでいる人は、決して路頭に迷う事はないと云われている。天に導かれている仕事を担っているのだから、神様も責任上不幸にはさせられないだろう。
 
天職とは、「続く仕事」ともいえるだろう。損得抜きで続けてしまう仕事。偉大な成果や結果を出すばかりではない。一年で復職した彼女は、一旦離れたことで自分の天職は何かと気づいたのだろう。天職から離れられない・・・・・・だからこそ戻った。決して一年の遠回りは無駄ではない筈だ。
 
人は、自分の天職を夢見がちに追い求めている。
それはある意味「自分探し」のようなものかもしれない。
一方、天職側だって大切に担ってくれる人を追い求めているのだ。
 
「天職と私」・・・・・・お互いの存在に気づいた時、天職は決して貴方を離さないだろう。
 
 
 
 
***
 
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2021-07-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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