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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:小川知子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「今日からあなたに家の鍵は渡さないことにします。なんのためにあなたは、はるばる日本からアメリカに来たの?」
 
アメリカに来てから半年ほど経ったある日、学校から帰った私にホストマザーがそう言った。今から30年以上も前、私がアメリカで交換留学生として地元の公立高校に留学していた時の話だ。
 
中学生になって英語の勉強が始まり、オーストラリア人の英会話の先生とコミュニケーションがスムーズに取れるようになってきた頃から英語で話すことが楽しくなり、海外への憧れが強くなってきた。
 
極めつけは、当時流行っていたアメリカの青春映画「プリティ・イン・ピンク」を見たことがきっかけだ。
父親と二人暮らしの女の子が古着をリメイクして、素敵なプロムのドレスに作り替え、お金持ちの彼とプロム(卒業ダンスパーティー)に行く、そんな内容の話だった。
「どうしてもアメリカに行きたい!そしてプロムに行ってみたい!」そう心に決め、英語の勉強は結構頑張ってきた。
 
我が家はごくごく普通にある家庭だったし、子どもを海外留学させるほどの余裕はないだろうことは知っていたので、海外へ行く一番の現実的な方法は、交換留学プログラムの試験に合格することだった。渡航費や諸々の費用が免除になる。なんとしてでも受からないと憧れ続けたアメリカには行けない。
心に野望を秘めたまま高校生になって、親に内緒で受けた交換留学プログラムに合格した。それから親の説得が始まった。後出しじゃんけんだ。担任の先生の説得の協力を得て、両親は、先生がそう言うのだったらきっと将来何らかのプラスになるだろう、としぶしぶ許可をした。そして、17歳の夏休み前にアメリカに飛び立ったのだった!
 
キラキラしたハイスクール生活。スクールダンス、プロム、毎週末開かれるパーティー、ロッカー前でのボーイフレンドとのいちゃいちゃ、スポーツ観戦、イースター、ハロウィンやホームカミング、そしてクリスマスなどのイベントの数々……。そんな映画で見るようなアメリカ生活を夢見ていたのだが、実際の私のアメリカの生活はさほどキラキラはしなかった。むしろ地味と言ったほうがいいかもしれない。
 
私が行ったのは東海岸の小さな町だった。東洋人は珍しい存在で、学校では「Chinese(目を吊り上げながら), Japanese(目尻を真横にひっぱりながら), big knees(膝を叩きながら) 」とよくからかわれた。欧米人にくらべ、東洋人は膝の骨が大きいらしいのだ。
 
そして「忍者は町を歩いているのか?」なんていうとんでもない質問もよく受けた。
まだまだ忍者や空手(当時映画「ベスト・キッド」が流行っていた)、フジヤマあたりが、日本の代名詞だった時代だ。
また、ある時、道を歩いていると、車が歩いている私の横を徐行しながら並走している。運転手のおじいちゃんがしばらく私の顔をじっと覗き込んで、その後スピードを上げて行ってしまう。そんなこともたまにあった。
 
日本のように、海外からの留学生はウェルカムという雰囲気でもなくて、海外からの留学生は注目を浴びるものと思っていた私は、粗雑な留学生の扱いに本当にがっかりしてしまった。
最初の3か月は思ったことを英語で話すことができず、言っていることも分からないつらい毎日で、学校に行くのが正直、憂鬱だった。
 
「ねえ、ディーン先生の歴史の教室知っている?」と隣に座っているクラスメートの女の子に普通に話かけられてもまず英語が出てこない。
「あ、英語喋れないのね、じゃあいいわ。バイ!」みたいな感じで、どこかに行ってしまう。そんなやり取りばかりで、学校では居場所がない感じだった。
 
そんな毎日だったので、学校から帰ってからはひたすらMTVを見る日々が半年くらい続いた。一向にアメリカ生活に馴染もうとしない(馴染めない)私に、ある日ホストマザーが号を煮やして言い放った一言が、冒頭のあの一言だ。
 
「なんのためにあなたは、はるばる日本からアメリカに来たの?」
 
図星過ぎて何も言い返せなかった。そして、続けて言った。
「落ち込んだ時ほど自分自身を忙しくしていなさい(Make yourself busy. When you are depressed.)」
 
家の鍵を渡してもらえなくなった私は、放課後の過ごし方を真剣に考えた。ホストマザーが返ってくるまで4時間以上もある時間をどうにかしなきゃいけない。
 
それから数日後、勇気をだしてクラスメートに「放課後は何をして過ごしているの?」と話しかけてみた。そうすると、みんな気さくに知っている情報や放課後の過ごし方のアイディアを共有してくれた。
「ブラウンさんの家が毎週火曜日にベビーシッターのバイトを募集しているわよ」
「ベルビューアベニューの近くにあるYMCAではユースプログラムがあるから行ってみたら?」
「図書館も結構時間つぶしにはいいかもね」
「毎週金曜日はトムの家でパーティーがあるから来なよ!」などなど。
なんだ、みんな普通に話してくれるじゃん。
 
アメリカ生活残り半年のというときに私はやっとアメリカでの振る舞い方を理解した。文化や価値観が違う多様な人種が住むこの国では、日本のような以心伝心の考え方は通じるはずもなく、自分の考えは口に出して相手に伝えないと、誰も自分という人間を理解してくれない。そのことにやっと気づいたのだった。
 
結局残りの半分は近くのYMCAのユースプログラムに入り、ベビーシッターをし、バスケットボールチームに所属し、地域のボランティア活動へ参加したり、と同年代の仲間と楽しい時間を過ごすことができた。新しい居場所を見つけたことをきっかけに、私のアメリカ生活は一転、楽しくなってきた。すべてがうまく循環するようになったのだった。
 
まず、ベビーシッターで子どもと接する時間が増えたので、英語が上達した。子どもは理解しようという忖度がないから発音を意識するのだ。
英語が上手く話せるようになったからは会話も増え、自信がついた。授業にも積極的に参加できるようになってからは友達も増え、スペイン人の男の子と仲良くなった。そして、この男の子と一緒にジュニアプロムに行くこともできた! やった!
 
アメリカでの最初の3か月~半年を思い返すと、とんだ自意識過剰の日々だった。セレブでもない限り、だれも自分のことを見つけてはくれるはずもなく、待っていたけど結局何も始まらなかった。お客様扱いせずに本音を言ってくれたホストマザーには感謝したい。
 
アメリカでのキラキラ生活は想定していたキラキラ度の半分くらいしか実現できなかったけれど、今となっては、挫折気味なアメリカ生活でよかったと思っている。自分の世界の小ささを感じることができたからだ。
 
「落ち込んだ時ほど自分自身を忙しくしていなさい(Make yourself busy. When you are depressed.)」
この言葉は、今も私の行動指針の一つになっている。しんどい時や落ち込んだ時ほど予定をびっちり埋めて、今でも忙しく動き回っている。
 
 
 
 
***
 
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2021-08-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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