メディアグランプリ

尺時定規は卒業だ


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:あこ (ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
私が小学生の頃、母が仕事をしていた為、夏休みはいつも母の田舎である祖母の家に預けられていた。
夏休み中、祖母は小学生の私に色々なことを教えてくれた。それは今となっては大切な宝物ばかりである。
 
その中でも、今私の心に響いていることがある。祖母に教えられたわけではない。
ただ、祖母の生きざまを見ていて勝手に学んだといったほうが正しいかもしれない。
 
夏休み中、田舎暮らしの祖母は都会っ子の私をいろいろなところへ連れて行ってくれた。山や川、大自然に囲まれて私は楽しくて仕方なかった。どこへ行くにも車を運転できない祖母はバスで移動した。
そのバスの中で祖母は必ずと言っていいほど新しい友達ができるのである。
その頃はあまり不思議に思わずに横で話を聞いていたのだが、自分が大人になるにつれバスで隣り合った人と世間話を始めることのハードルの高さを感じた。
 
そりゃあ、ド田舎の誰でも知り合いみたいなところならいざ知らずだが、祖母の暮らす地域は県庁所在地でありド田舎というほどでは、なかったのである。
 
そんな中でも、祖母は一緒に出掛ける連れに話しかけるような自然さで見知らぬ人に話しかけるのである。相手も自然に話しかけられるせいなのか、自然に返事をしてくる。
 
意気投合して一緒に祖母の家まで着いてきてしまった若いお姉さんもいた。
そのお姉さんは、祖母の家まで着いてきてお茶を飲みながら2時間ほど話した後に
帰り際に玄関で私に言った。「私はあなたのおばあちゃんを尊敬しています。あなたも、おばあちゃんから色々なお話を聞いて良い子になるんだよ」
 
いったいただの田舎暮らしで、ずっと専業主婦をやって来た祖母に、どんな力があるというのだろうか。
 
理由はわからないまま、大人になって私も就職することとなる。
 
そこは大きなアミューズメント施設の総合受付で老若男女問わず多様な人が訪れる。
私には、どうもいけ好かない同僚がいた。必ず3歩くらい余計なことをするのだ。
 
例えばだが、受付であるアトラクションの場所を聞かれた場合、その場所を教えるのは当たり前の仕事内容だろう。そこで、もう少し気の利く人ならば「暑いのでお気を付けください」とか「雨なので傘をお貸ししましょうか?」などの言葉を添えることもあるだろう。
 
ただ、この同僚はお節介がすぎるのである。いつも人気で中々予約の取れないアトラクションの場所を聞かれたら「わたくしがキャンセルが出てないか聞きに行ってまいります!」と言って走り出してしまうのである。
 
私には気を利かせすぎて、親切の加減を間違えているようにしか見えない。だから私はその同僚を心好く思っていなかった。
 
「そこまで、してあげる必要ないんじゃないの?」私は時々釘を刺してみた。
だが、同僚は意にも介さない様子で答える。「でも、もしキャンセルあったらラッキーじゃない?」確かにそうだが、納得いかない自分がいた。
言われたことだけを、していればいいのに、なんでこの子はしゃしゃり出たがるんだろう。自分だけ、いい子ぶろうとして悪気がないだけに鼻につく。そんな風にうがった目で見ていた。
 
ある日、お爺さんが来て迷子になったと言い始めた。見た感じちょっとだらしない恰好でしゃべり方もたどたどしい。あまり深入りしたくないと、咄嗟に思っていた。
すると同僚が出て行ってお爺さんにどこから来たのか聞いて「お連れ様を探してくるから待っててください」と言い始めた。
ここから、各所に電話すればいいのにと思っている間に彼女は走り出してしまった。
私は心の中でまたかと思っていた。
 
ところが、彼女はすぐに戻ってきた。何かと思えばそのお爺さんが心配になったのだろう。
すると「いいですか、私が戻るまで、ここから絶対に動かないでくださいね」
そう言ってまた走り去ったのである。呆気にとられている間の出来事だった。
だけど、その瞬間彼女の優しさが私にも伝わってきた。
 
その後しばらくして彼女が連れのご家族と一緒に戻ってきた。
お爺さんの目に安心の色が浮かんだ。ご家族も心配していたようで大変喜んでおられた。
その時に私にはお節介に見えていたものが案外そうでもないのかもと思えたのである。
 
私は余計なことはやりたくないし必要最低限で何事も終わらせいタイプなのである。
しかし、人と人との交流って案外いいものだなと思ったのだ。私のように杓子定規に決められた範囲内でしか物事をしないでいると、ありがとうと言われても形式的であったりする。彼女は心からのありがとうをたくさん貰っているように見えた。
 
その時、懐かしい祖母の姿と重なった。いつも、周りの人に声をかけちょっと笑わせたり、相談事に乗ってあげたり常に心の交流をしていたのだと気が付いた。
 
だからあの時、家まで着いてきたお姉さんはおばあちゃんから学びなさいよと言っていたのだろう。
 
決められたルールだけを守る生き方は笑顔を生まないんだなと思った。
そうか、私も少しくらいルールを外れてもいいから、楽しく笑顔を生む生き方をしよう!
そんな風に思えて嬉しかった。
 
今年の夏休みは、おばあちゃんに会いに行こうかなと考えていた。
 
 
 
 
***
 
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2021-08-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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