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メディアグランプリ

お土産がもたらす懐かしいココロ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:内藤 睦(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
「わあ、久しぶり!」
その日、私は思いがけない場所で、思いがけず懐かしい顔にばったり会った。
思わず声を出してしまい、はっとして辺りに人がいないか見回す。
 
その懐かしい顔は、マルセイバターサンド。
北海道帯広のお菓子メーカー、六花亭が誇る北海道を代表する銘菓だ。
 
私は甘いもの好きで、ブラックコーヒーと一緒にいろんな甘いものを食べる。特にバター系とこしあん系のお菓子に目がない。
そんな私が特別に感じるお菓子は、各地の名品やデパ地下で買えるようなお菓子。マルセイバターサンドは、その中の一品だ。
ビスケットはしっとりしているが、やさしい味わいで美味しい。バタークリームが濃厚でバター感をしっかり楽しめる。その二つに挟まれたレーズンがよいアクセントになっている。
1個食べたら満足できる贅沢感。
子どもの頃、父親が晩酌のお供にレーズンバターを好んでいたから、その好みを受け継いだのかもしれない。
 
以前は、友達から北海道旅行のお土産にもらったり、北海道出身の同僚から帰省のお土産にもらったり、といった形で1年に数回いただく機会があった。
でも数年前に仕事を辞め、昨年は外出機会が減って友達に会うこともなくなった。
デパートに行くこともなくなったので、北海道物産展で買うこともない。
 
そんな時、突然「あ、マルセイバターサンド食べたい」と数か月前にふと思った。考えたら2年以上遭遇する機会がなく、すっかり忘れていた。
それは、しばらく会っていない友達を思い出した時の気分だった。
昔はちょくちょく会って話をしたり遊んだりしていたのに、お互いに自分のことで忙しくなって会うのが難しくなり、たまに連絡する間隔も次第に空いてきた友達。
そんな時、ふと「ああ、あの子、元気かなあ」と思い出す。そんな感じだった。
 
「食べたいなあ」と思ったものの、相変わらずデパートなどに行く気にならず、お取り寄せしようかと思って通販サイトを見たら、お菓子本体よりも送料が高いくらいで、購入ボタンを押すのを思いとどまってしまった。
 
「まだしばらく会えないんだなあ」と小さくため息をつきながら通販サイトを閉じ、数週間経った後にばったりと出会ったのは、近所のスーパーという思いがけないところだった。マルセイバターサンドは、デパートだけでなく、スーパーにも販路を広げたようだった。
 
思いがけない再会にテンションが上がり、お菓子なのに思わず「久しぶり!」と声をかけてしまう。
顔がニヤニヤしてしまう。
どうしようかな、5個で一箱か。二箱買っちゃおうかな……、いや、でもさすがに毎日一個ずつ食べるのは贅沢すぎるし、飽きたらもったいないし、冷凍しても味が微妙に変わるし。
久しぶりに会えて嬉しいけれど、1週間くらいしか一緒にいられない友達。
悩んだ末、一箱だけ買うことにして、一緒に家に連れ帰った。
家に帰って、お気に入りのコーヒー豆でアイスコーヒーを作って入れる。
ああ、待ち望んでいた、このしぶい赤にレトロな文字と、唐草のような模様の包み紙。
開けて一口ほおばるとふわっと美味しい香りとやわらかな食感と濃い甘さ。
「そう、これこれ!」懐かしい味だった。
 
そしてその時、ふわっと広がったのは、美味しい香りだけではない。
あの頃の人との触れ合いという思い出が頭の中に広がった。
 
仕事をしていた頃、お盆や年末年始の休暇の後や、誰かが出張に行った後はお土産があるのが常だった。
それらのお土産は、値段が注意深く選ばれ、誰か寂しい思いをする人が出ないように数がたくさんあり、分けやすいように一つ一つが個包装になっていた。
お菓子を持ってきた人が、一人ひとりのデスクに配る。
「あそこの事業所に行ってきたんだ。○○ホテルに泊まったの?」
「そうそう。晩はまた居酒屋△△で事業所の××さんと飲んできましたよ」
「ありがとうございます。鳥取に行ってきたんですか?」
「うん、家族で海水浴に行ってきたよ。ずっと車を運転して疲れた」
といった会話のやりとりがあった。
普段は割と静かな職場だったが、そのようなちょっとした会話とお菓子が雰囲気を和らげた。
会話し、同じものをほおばることで親近感が高まった。
 
友達から手土産にもらうこともあった。
友達と久しぶりに会って「あ、少し目じりのしわが増えたかな」と相手に対して思うと同時に「相手も私を見て、どっか変わったな、と思ってるんだろうな」と思う。
気のおけない話を楽しみ、「少し変わったかな。でもやっぱり変わってないな」と感じる。
お互いの現在位置を確かめながら、かつて一緒にいた時のことを思い出し、それから今まで時間が過ぎたことや、お互いの身にさまざまなことが起こったのだと感じ、相手と自分の今の立ち位置を改めて感じる。
そして別れてから、いただいたお菓子を食べながら「次に会う時はお互いどんなになってるのかな」とちょっと想像する。
 
あの頃いただいた懐かしいお菓子は、最近会えていない懐かしい人達とのやり取り、その時の温かい心の動きを思い出させてくれた。
そう、懐かしいバターサンドとの再会は、懐かしい出会いを思い出させてくれた。
これがお土産の力。
 
昔読んだ「不思議の国ニッポン」というエッセイで「なぜ日本人は旅行に行くと持ちきれないほどお土産を買うのか」について考察するものがあった。
それは、「日本人が周囲の人への感謝の意を示すためで、日本人にとって、旅行本体よりもお土産を買うことの方が重要」とするものだった。
1980年前後に書かれた作品なので、今とは雰囲気はだいぶ違うとは思う。
でも、お土産はその人の周囲へのアピールである側面もあるけれど、ビジネスライクだけでない心の動きが、ふとした思い出と懐かしい気持ちをもたらしてくれる。人間らしい気持ちの発露なのだ。
 
あの頃、毎日のように顔を合わせていた同僚。
ちょくちょく会っていた友達。
ここ数年、子育ての忙しさに加えてコロナの影響もあって、まったく会えていない。
どうしているのかな。元気かな。
バターサンドのように思いがけずどこかでバッタリ会えるかもしれないけれど、自分から声をかけてみようかな。
ふとそう思った。
 
 
 
 
***
 
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2021-08-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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