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藤井聡太先生と考えるAI時代の歩き方


*この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:村人F(ライティング・ゼミ 超通信コース)
 
 
世はまさに大AI時代!
こういっても差し支えがない状況になってまいりました。
商品を探すときも、道案内をしてくれるときも、あらゆる場面でAIが助けてくれます。
そのおかげで楽になったなあと、しみじみ思います。
 
その反面、自分たちの仕事が無くなってしまうのではないかという不安をお持ちの方も多いと思います。
確かに人間より短時間でミスなくやり遂げますので、そういった危険性も考えられるでしょう。
 
しかし、AIと共存することで、さらに高い次元にたどり着くことができる場合もあります。
その1番の例は、藤井聡太先生が活躍している将棋界です。
 
将棋界で使われているAIは、プロより遥かに強くなっています。
最強である名人ですら全く歯が立たないレベルです。
そういった事情もあるので、現在はAIを使った研究が当たり前になっています。
それを用いて、自分が指した手がどれくらい良かったのかを評価値で表し、その上でAIならどう指すかを調べ、より強くなろうとするわけです。
こういう状況ですから、現在もっともAIと密接に関わっている職業は将棋棋士と言って過言では無いでしょう。
 
ですので彼らの向き合い方を調べれば、私たちにも通用する指針が見えてきます。
ということで、AIを使った研究に造形の深い藤井聡太先生のお話を引用させていただきます。
 
 
 
『ソフトで研究すると評価値とかが出てくるわけですけど、そういった数字を見るだけではあまり意味がないので、評価値や読み筋とかから自分なりに考えています。評価値が+500点だとしたら、なぜそれが500点なのか、どういう要素から500ということを導き出しているのかということを考えています。数字自体はそこまで重要ではないと思うんですけど、そういうところを自分なりに考えるのは大事かなと思っています』
(※)引用元:【永瀬拓矢×藤井聡太】棋士とニューノーマルhttps://news.livedoor.com/article/detail/18918635/
 
 
 
上記のように藤井先生の使い方は、AIが出した数値に対してその理由を自分なりに考えるということでした。
 
言われてみると当たり前のことに思えます。
しかし、同時に盲点だったとも感じました。
実際、この話を聞いたレジェンド羽生九段も、なるほどと感心されています。
 
なぜ「自分なりに考える」ことが盲点になったのでしょうか。
その理由は、AIを自分で考える機会を少なくするために使っていることにあります。
 
たとえばAIが登場する以前の将棋の研究では、1つの盤面に対して数時間考えてもどちらが有利かわからないことがよくありました。
次の一手の選択肢だけでも無数にありますし、その先の展開も考えると倍々ゲームで分岐が増えてしまい、とても判断することができないからです。
だからプロ同士が集まっても、「これは先手が勝っている」、「いやいや後手の方が有利だ」と大激論がしょっちゅうあったそうです。
 
ですが、AIを使えば一瞬でケリが付きます。
評価値でどちらが有利かを示してくれるからです。
それにより今まで数時間悩んでいた形勢判断が、すぐできるようになったのです。
この時短効果がAIを使って研究する最大のメリットです。
 
これは将棋界以外でも同じことが言えます。
地図アプリを使った最短経路の検索も、SNSで利用者ごとに表示する広告を決めることも、AIを使用することで正確に短時間で実施できるのです。
そういったこともあって、あらゆる業界がAIを使用するようになっています。
 
しかし、これにより人間が判断する場面が少なくなります。
だからこそ、藤井先生の「自分で考える」という当たり前に思えることすら意外と感じたのでしょう。
 
この現状をよく考えてみると、すこし怖さを感じます。
AIを使用することで便利になるどころか、むしろ人として退化してしまうのではないか。
そういう危険性を感じてしまうのです。
なぜなら、AIによって人間の考える能力が落ちてきているからです。
 
これまで人は、いろんなことを考えて生きてきました。
 
どうして雲は白いの?
どうして仕事でお金を稼がなければいけないの?
どうすればコンサート会場まで最短距離で行けるの?
 
このように様々な問いを思い浮かべ、答えを必死に導く過程の中で日々成長していったのです。
それは長時間かかることもあったでしょう。
そのうえ間違っていたこともあったでしょう。
しかしそういう経験をいっぱい積んでいくことで、一人前の大人になっていったのです。
 
ところが現代はAIがあります。
ちょっとしたことならば検索エンジンで調べれば、AIがすぐに答えを出してくれます。
数時間かけて資料を探す手間もなく、正しい答えを導き出すことができます。
これは効率面を考えれば大変な進歩と言えるでしょう。
 
しかし、その一方で人間が判断する能力が無くなる側面もあります。
昔から使わない力は衰えていくと言いますが、その現象がまさに考えることでも発生しているように思うのです。
 
それを実感するのは、SNSで流れる言葉です。
これらを見ていると、極端で短絡的な発言が増えているように思います。
将棋界でしたら評価値だけを見て、「この人は90%有利の場面も勝ちきれないから弱いんだ」という具合に判断する方がいます。
それ以外の場面でも、ニュースに対して内容を読まずに厳しい言葉を投げつける、炎上している相手に対してよって集って罵声を浴びせるということが多くなっています。
 
こういった言動が多くなったのは、AIによって考える場面が少なくなったからではないでしょうか。
 
深く考えれば、この言葉を話すと相手はどう思うだろう、あの90%有利の場面は本当にそれくらい有利だったのかと、疑問に思うことができるでしょう。
そうすれば相手と対話をする意識を持った、柔らかい言動をするようになります。
 
ですがAIを使えばすぐに答えが出てしまいますから、考えることもなくなります。
そのため内容を吟味せず、相手の気持ちも考慮しないまま発言することが増え、今の殺伐とした空気感になっているのではないでしょうか。
 
この判断力の低下も恐ろしいですが、さらにタチの悪いことがあります。
AIが今もなお強くなっていることです。
 
将棋界では毎年AI同士で戦う「世界コンピュータ将棋選手権」という大会があるのですが、その優勝AIは毎年のように変化しています。
去年の優勝者を出しても全く勝負にならない。
それくらい高速に進化しているのです。
 
そして他のAIも、同じようなスピードで進化しています。
これを技術の進歩と捉えることもできますが、判断にAIを使っている者からすると困ったことでもあります。
 
AIがまだまだ間違えることを示すからです。
去年の将棋AIより今年の将棋AIの方が強いのは、去年のAIに間違った手があったからです。
そして、今年の将棋AIも来年には勝てなくなるでしょうから、これも同じく間違うことがあるわけです。
これが将棋界のみの話なら、将棋に負けるだけなのでプロ以外に影響はありません。
 
ですがAIを使うシーンを考えると、そうは言えない状況も出てきます。
自動運転など、命を預かる場面です。
つまり人を検知するAIが、間違って飛び出した子どもを検出できなかった。
こういった危険性が、絶対に無くならないことを示しているのです。
 
もちろん、緊急時に人間が運転する仕組みになっていれば対応できるかもしれません。
ですが、現代人はAIを使用することで判断力が落ちてきています。
そのため、こういった場面で命を救う最適解を導くことができるのか。
考えるてみると、ゾッとします。
 
 
 
上記を踏まえると、藤井先生が示した「AIの出した手を自分で考える」ことは、私たちにとって大事な指標と言えるでしょう。
 
どんな物事も単純なことは1つもありません。
Siriが質問に答えてくれるのも、地図アプリが道を教えてくれるのも、多くの複雑な事情が重なり合うことで成り立っています。
それらを深く考え、紐解くことで人は成長するのです。
 
だからこそAIがすぐに答えを導く時代でも、自分で考えることが重要なのです。
そして、藤井先生はその素晴らしさを体現する存在です。
 
彼の指す手は多くの人々を魅了します。
それはAIの予想した手を正確に指し続けることができるからではありません。
無数の選択肢に対し妥協せず考え続け、必死にもがいた末に導き出したからこそ感動を与えるのです。
 
その姿は私たちのような一般人だけでなく、加藤一二三九段のような芸術肌の強い方ですら興奮させます。
これは、藤井先生の考える姿勢があってこそ成立することです。
 
そうなると、AI時代を生きる私たちの必須スキルもまた、「自分で考える」ことと言えます。
ちょっとした調べ物をするとき、すぐに検索するのではなく自分なりの仮説を立ててみる。
たまには地図アプリも使わず、路線図だけを見て目的地を目指してみる。
このようにちょっとでも考える時間を増やすことが重要になります。
結局、考え続けた人が活躍できるという真理は変わらないのです。
AIは道具に過ぎないのですから、活かすかどうかも自分次第ということでしょう。
 
こうして考えてみると、藤井先生が大活躍している姿はまさに希望の象徴です。
彼はAI時代という未知の世界で、優れた生き方を示しています。
この姿は忘れがちだった考えることの大切さを思い出させます。
だからこそ彼は、時代が求めるスターとして日本中を巻き込む将棋ブームを起こしたのでしょう。
 
そして彼の活躍はとどまることを知りません。
2021年現在、8つある将棋のタイトルのうち2つを取得し、現代最強棋士と呼ばれる存在になっています。
その将棋は、これまで興味のなかった人すらも引き込ませる魅力を持っています。
 
ですので、AI時代の歩き方を知る意味も兼ねて、将棋を観戦してみてはいかがでしょうか。
個性豊かな棋士の解説トークは初めての方でも楽しめますし、なにより彼らが「AIの示す手を自分で考えるのが大事なんだよ」と熱く語ってくれますので勉強になります。
 
これらはAIの登場などで不安になった未来への希望になることでしょう。
ぜひ将棋の世界へ足を踏み入れてみてください!
 
 
 
 
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2021-08-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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