メディアグランプリ

完璧主義から解放してくれたミュージシャンの言葉


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山口 幸美(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
小さい頃から、どこか完璧主義なところがあった。
母親に髪を結んでもらうと、少しでも乱れがないかチェックしていたし、服装も自分が完璧だと思えるコーディネートを毎朝追求していた。
「決まった!」と納得できた日はご機嫌で家を出たが、そうでない日は「学校に行きたくない」と駄々をこねた。もちろん、そんな理由で休ませてもらえるはずもなく、母親から無理やりランドセルを背負わされ、気に入らないコーディネートに絶望しながら登校していた。
今考えると、かなりおませな小学生である。
私とは正反対で、細かいことは気にしない性格の母は、全く理解できないと言っていた。
 
大人になると、そのハードルはかなり下がったように思える。
お気に入りのコーディネートどころか「おいおい、そんな恰好で?」と自分でも呆れるくらいラフな服装のまま出かけることもある。
髪型だって、ちょっと乱れていた方が、雰囲気が出ていいと自分に言い聞かせているくらいだ。
 
しかし仕事に関しては、小学生の頃と変わらない完璧主義な私がチラチラと顔をのぞかせる。
仕事をしていると、様々な納期や期限に追われることがある。
夏休みの宿題を最初の2週間で終わらせるタイプだった私にとって、納期や期限を守れないことはどうしても許せなかった。多少無理をしてでも、なんとか間に合わせるように心がけていた。
そのため一緒に仕事をしている人が平気で期限を破る姿を見ると、口には出さないものの、心の中にはモヤモヤしたものが溜まっていた。
 
そしてある時、事件が起きる。
私が参加していたプロジェクトは、Tさんがリーダーを務めていた。Tさんは私より10歳年上だが、一緒に飲みに行き、仕事の相談にのってもらうこともあった。
Tさんはとても仕事ができる人だった。しかし今回のプロジェクトに関しては、初めてのことも多く、作業の進捗は遅れていた。
Tさんにも事情がある。仕方ないとは思いつつ、焦る様子もないTさんに、私は内心、腹をたてていた。
そして我慢の限界が訪れ、私は怒りに任せてTさんを責めた。
「期限を守ってもらわないと困るんですけど!」
Tさんはムッとした表情になり、小さく「ごめん」と言って去っていった。
あぁ……やってしまった……。すごく嫌な言い方をしてしまった……。
それ以来、Tさんとは気まずくなり以前のように一緒に飲みに行くことはなくなった。
 
仕事を予定通り完璧に進めることは理想的だ。しかし現実はそうはいかない。予定通り進まないこと、自分の思うようにいかないことの方が、むしろ多いように感じる。大事なのは、それに対する対応力や柔軟性だ。
頭ではわかっているのに。完璧主義な私は、それを受け入れることができなかった。
仕事だけではない。恋愛に関してもそんな性格が仇となり、うまくいかないことがたくさんあった。
自分が完璧でないことはわかっているのに、完璧な彼女でいなければと無理をする。どこかで相手にもそれを求めてしまうので、結局どちらも疲れてしまう。
どうして、いつもこうなってしまうのだろう……。融通の利かない自分が、とても嫌になった。
 
そんな時、何気なく見ていたテレビ番組で、5人組ロックバンド東京事変のギタリストとしても活躍するミュージシャン長岡亮介さんがこんな話をしていた。
曲中のギターソロで、毎回違うフレーズを弾くことを指摘された長岡さんはこう答える。
「正解を決めると不正解ができてしまうから。(正解を決めなければ)何弾いてもミスにならない」
さらに他のメンバーもこう付け加える。
「彼は用意してくるものよりも、その場で作り上げるモノの方が素晴らしいです」
 
あぁ、そうか……。
その言葉で、私は今まで自分を苦しめていたものに気付かされる。
私は「こうしなければいけない」「こうするべき」という自分の決めた正解に苦しめられ、相手にまで自分の正解を押し付けてしまっていた。
私は長岡さんの言葉で、少しだけ完璧主義な自分とさよならすることができた。
イライラしたり、物事がうまくいかなくなったりした時は、そっと自分に問いかける。
「また自分で正解決めてない?」
大切なことは、自分が作った不正解を恐れることではなく、誰かと一緒に新しい正解をその時、その場面でお互いの「こうしたい」という気持ちで作り上げていくことだ。
それはきっと、私が自分1人で作った正解より、ずっと素晴らしいものだ。
(ちなみに長岡亮介さんの毎回違うギターソロは、どれも素晴らしいものなので、ぜひ一度聞いてみてほしい)
 
 
 
 
***
 
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2021-08-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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