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なぜ海外ワークキャンプにはこれほどまでに熱狂的なリピーターが多いのか?


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記事:
 
 
記事:KP(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「おまえ、ほんと海外好きだよな」と学生時代によく友人から言われた。
確かに当時の私はよく海外に行っていたが、実は海外が好きなわけでも旅行が好きなわけでもなかった。
私は海外ワークキャンプというものに取りつかれていたのだ。
 
海外ワークキャンプというのは、日本のNPO法人などの団体が主催する海外プログラムである。
普通の海外旅行との違いとして、まず、参加者とプログラム期間がある。
参加するのは主に日本の大学生で、一度に集まる人数はその会にもよるが、10~30人ほどであることが多い。
そしてそのほとんどが一人参加である。友達どうしでの参加は少なく、プログラム初日に全員初めまして、となることが多い。
たいていは大学が休みになる夏休みや春休みに開催され、期間は1~2週間ほどになる。その間、参加者は常に寝食を共にすることになる。
 
もうひとつ、普通の海外旅行との違いとして、観光が目的でないという特徴がある。
行先はたいていアジアの国のどこかであり、その中でも都市部ではなく、未開発の農村部に滞在することが多い。
そこでの主な目的は、ボランティア活動になる。
その内容は主催する団体にもよるが、土地の整備や、建物の修繕、医療施設での手伝い、など様々である。
なかには、馬に乗って砂漠を駆け巡るというように、ボランティアでないプログラムもあるが、そういうものも含めて観光以外の活動がメインとなるものを今回は海外ワークキャンプと呼ぶことにする。
 
そんな海外ワークキャンプに私はハマっていた。それはもう、ハマりまくっていた。
大学2年の夏に、カンボジアで学校建設をするというプログラムに参加して以来、アルバイト代のほとんどを費やしながら、長期休暇が訪れる度に可能な限り海外に渡った。
それほどまでに、海外ワークキャンプには突き抜けるような楽しさがあった。
 
そして、大学院卒業までの間に、カンボジア、中国、インド、タイ、マレーシア、フィリピン、モンゴルと計7カ国に渡航した。
 
7カ国行ったというと、普通の大学生と比べたらわりと多いほうかもしれないが、現地では自分と同じくらい海外ワークキャンプに参加している人もよくいた。
私が参加したどの団体でも熱心なリピーターがいて、その団体の信者といえるほど心酔している人も多くいた。
私は毎回違う団体が主催するプログラムに参加していたが、海外ワークキャンプという大きなくくりで見れば、私も熱心なリピーターのひとりだった。
ちなみに、ボランティアだからといって、普通の旅行より費用が安いわけではない。
1回で20~30万円ほどかかるので、大学生からすれば、けっして安くはない。
それでも私は参加し続けた。どうしようもないくらいに、私は海外ワークキャンプを必要としていた。それは、他のリピーターたちも同じ気持ちだったと思う。
 
なぜ海外ワークキャンプにはこれほどまでに熱狂的なリピーターが多いのか?
 
それは、海外ワークキャンプには、その人本来の「素」の部分をあぶり出す力があるからだと思う。
海外ワークキャンプというのは、日本での普段の生活では有り得ないような、非日常的で刺激的な環境に身を置くことになる。
しかも、ただでさえ非日常的な環境だというのに、そこでかなりハードな運動や労働をすることになる。
そうなると、自分を取り繕う余裕なんてものはなくなる。
マレーシアの溶けそうなくらい暑い炎天下の中、土地整備のために手作業で草木をひたすら伐採し、地面を耕しているときに、「自分は人からどう思われているだろう」とか、「こういう人になれたらなあ」とか、そんなことを考える余裕があるはずがない。
ついでに、日本での悩みやわずらわしさもすべて忘れてしまう。
中国の砂漠を馬で全力疾走しながら、爽快感と落馬への恐怖と水分不足への絶望感を同時に感じながら、「あーバイト面倒だなあ」とか、「就活どうしようかなあ」とか、そんなこと考えられるわけがない。
結果的に、海外ワークキャンプに参加した人の多くは、非日常的で過酷な状況になるほど自分を取り繕う余裕がなくなり、その人の中の核となる部分があぶり出されることになる。
そして、いろんなものを取り払って、感性がむき出しになったような感覚は、とても気持ちがいい。
自分がどう思われるかを気にしないと、純粋にその場を楽しむことができる。
お互いが素でいられている状態だと、参加者どうしの関わりも建前ばかりの浅いものではなくなる。
ワークキャンプ中は、日本では考えられないような赤裸々な話をしてしまうこともある。日本に帰ってから、「あー恥ずかしい。死にたい」と思うこともあるが、そういう話ができたというのも、結局は大切な思い出になる。
また、本心でぶつかり合うことで、何人か泣き出すほどの激しい口論が起きることもある。だけど、そういうときほど私は、「今回は特にいい会だったな」と思ったりする。やっぱり、人の本性が見られるときほど面白いものはない。
 
海外ワークキャンプに熱狂的なリピーターが多いのは、このように特異な環境により余裕がなくなることで素の自分が出てくるから、というのが私の持論だ。
だけど、そう考えたときに、同時にこんな疑問が生まれた。
 
余裕がない状況だったら、日本で生活していてもわりとあるのでは?
 
例えば、大学院で研究に追われていたときとか。仕事で遅くまで残業していたときとか。
でもそういうときって、余裕はないけど楽しくはない。全然リピートしたくない。
海外ワークキャンプとは何かが違う。何が違うのか?
 
しばらく考えるうちに、答えは見つかった。
日本での余裕のない状況のとき、私は自分の内側にばかり意識を向けていた。
「成果を出さないと、ガッカリされるのではないか」
「業務が遅れたら、ダメな奴だと思われるのではないか」
こう考えているときは、やはり楽しくはない。
一方で、海外ワークキャンプのときは自分を案じるのではなく、初めて体験する異文化や過酷な環境など、自分の外側にだけ意識を向けていた。
同じ余裕がないでも、自分の内側に意識が向いているときと、自分の外側に意識が向いているときでは、全然違う結果になるみたいだ。
 
そうなると、海外ワークキャンプにあれほど熱狂的になったのは、自分の外側の世界に夢中になっていたばかりに、無意識にも「素」の自分でいられたから、というのが正確な言い方になるのかもしれない。
働き始めるともう、長い休みを取れないので海外ワークキャンプには行けないと、私は度々落ち込むことがあった。
でも、海外ワークキャンプに行けなかったとしても、他に夢中になれる何かが見つかれば、またあのときみたいに突き抜けるような楽しさに出会えるかもしれない。
そう思うと、これからの人生を生きていくのが少しだけ楽しみになった。
 
 
 
 
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2021-08-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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