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「簡単にできないこと」には価値がある


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記事:ロケットえんぴつ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
例えば、野球をやったことない人に、投げられたボールをバットで打ってみましょう! という課題があったとする。
そうしたときに、何回か試しただけで感覚をつかんで見事にできる人もいれば、何度やってもできずに、習得するまで時間がかかる人もいる。
私は習得するまで時間がかかる方の人間だ。
 
なんで他の人が簡単にできることが、自分にはできないんだろう。
不器用なせいで、遠回りばかりして、人生損してる。もっと器用に生きたい。
「簡単にできないこと」
「不器用なこと」
これは、私が長い間抱えてきた欠点だった。
 
けれども今は、私の利点になっている。
 
もし私と同じように、物事がうまくいかないで悩んでいる人がいたら伝えたい。
「簡単にできないこと」には価値があるということを……
 
勉強、スポーツ、仕事など、人生のいろいろな場面で、初めて学ぶことは必ずやってくるわけだが、私はいつもそれらを習得するのに苦労してきた。
 
「なんでこれがわからのか、おれには理解できん」
「おまえの頭、どうなってんの?」
「もうおまえに教えるの、マジで面倒くさい」
中学生の頃、兄に勉強を教えてもらうたびに、ボロクソにバカにされてきた。
いつも要領がよく、なんでも器用にこなしてきた兄からすると、私の理解の悪さは匙を投げるほどだった。
 
不器用なのは、頭だけではなく、体を使うことでも同じだ。
どんなスポーツも正しい動作をするためには、非常に繊細な動きが必要となる。
私はキックボクシングを続けて、かれこれ9年くらいたったが、いまだに同じことで何度も注意されてしまう。
「ミドルキックは、足で蹴るじゃないんです! 腹筋で蹴るんです! ちゃんと腹筋使ってますか? 蹴ったあと、腹筋痛いですか!?」
「腹筋? 全然痛くないです。腹筋よりも足がきついです。腹筋使うってどういうことですか?」
トレーナーがお手本で蹴ってくれる。
私がまねして蹴ってみるが、腹筋を使うという感覚がよくわからない。
「腹筋です! 腹筋! 笑」
「いいたいことはわかるんですけど、じゃぁやれと言われても、どうやるかがわかんないんです! 逆に何でできるんですか!?」
トレーナーとしょっちゅうこんなやり取りをしている。
私が苦戦している横で、ずっと練習を休んでいた仲間が、久しぶりに出てきと思ったら、サラリとやってのけるので、自分の不器用さにやるせなくなる。
 
簡単にできる人は、やり方さえわかってしまえば、何も考えずともできてしまうんだろう。
でも私の場合は、どのくらい? 具体的にどんな風に? など、そこに隠れている加減であったり、見えないコツのようなものがつかめないと、できないのだ。
だから、どのくらいなのか、自分で少しずつ試す必要があり、できるようになるまで時間がかかる。
習得するまでに、なんでこんなに苦労しないといけないんだろう……
 
そんな私の考え方を変えてくれたのは、夫のことばだった。
 
ある日、私はいつものように自分の不器用な悩みを夫に相談していた。
「自分があんなに苦労してやっとできるようになったのに、〇〇さんは、サラッとできたんよ。ほんと、悲しくなるよ」
「そういう天才肌で、なんでも簡単にできる人おるよね」
「ほんと、うらやましいよ。そんな風になりたい」
「でも、そういう人って誰かに教えるのには向かないよね」
「えっ!? なんで?」
「だって、簡単にできてしまう人は、できない人が“なんでできないかのか”わかんないじゃん」
言われてみれば、確かにその通りだ。
兄に勉強を教えてもらった時も「なんでわからんのか、理解できん」といわれた。
お互いに、何でできるのかがわからない⇔何でできないのかがわからない、という風に分かち合うことができなかった。
 
私のように簡単にできない人は、何かにつまづいたとき、いろんな方向から、あれこれ試してみる。
さきほどのミドルキックの練習では、手の振り方を意識してみたり、足の角度を調整してみたりと、動画を撮影して体の使い方を研究した。すると、私の重心が後ろに倒れていることに気づいて、重心の意識を変えることで、一気に腹筋に力が入り、腹筋を使う感覚が理解できた。
このように、できない人は、それを乗り越えるためにいろいろな方法を試すので、それだけたくさんのノウハウが蓄積される。
できない人が教える側にたったときは、最高のアドバイザーになれるのだ。
そう気づくと、できないことにも価値を感じるようになった。
 
習得したいものを、師となる人から学ぶとき「そうだよね。なっちゃうよね。わかるよ、私も昔はそうだった。私の場合は、ここをこうしてみたらできるようになったよ」ということばは、とてもありがたく、励みになる。
スポーツ界で、天才と言われた選手よりも、現役時代はそこまで目立った活躍をしなかった人が、名監督になるのには、そういう理由があるのかもしれない。
 
「簡単にできないこと」は決して欠点ではない。
人よりもノウハウを知れるチャンスなのだ。
 
 
 
 
***
 
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2021-09-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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