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益はなくても意味はある

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:辻 敏充 (ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「辻さんは、合理的に物事を考える癖があるから、儲からないんだよ。そうだなぁ。その癖を直すには、自分の会社じゃないトイレを借りて掃除をやってみたらいいよ」と師匠からアドバイスを受けました。
 
私には、20年間増収増益を続け、その会社を売却し、コンサルタントとして活躍されている経営の師匠がいます。その師匠の勉強会に入ったころの話です。
 
私は、会社を儲けさせるためにこの勉強会に入りました。すぐにでも儲かる方法を教えてくれるのかと思ったら、「トイレを掃除しろと!」というアドバイス。
「そんなことで儲かるのか?」と疑問がわきました。
 
いくら師匠からのアドバイスとはいえ、意味が分からないことをやる必要は無いと思ってしばらく何もせずにいました。
 
アドバイスを実践してないのが見透かされたのだと思います。師匠から「辻さん、トイレ掃除やってる?」
 
ヤバイと思って、とっさに出た言い分けが「トイレが借りれなくてまだやってないんです」
 
「そうか、今は勝手に掃除したらダメだろうな。そしたら、ゴミ拾いでいいからやってみな」といわれました。
 
アドバイスはこれだけで、ゴミ拾いをやったら何で儲かるかの説明はありません。
「はい」と返事はしましたが、ゴミ拾いをやる理由が分かりません。やらない言い分けができました。
 
次の勉強会で、ゴミ拾いのことには触れずに、「この本を読んでみな」と言って晏子という本を紹介してくれました。ネットで調べてみると2500年前の中国の政治家で、有名な方でした。この本、4巻セットなのです。経営に関する本ならまだ読むけど、なんで昔の偉人伝をそれも4冊も読まなければならないのだ! とまたやる理由が分かりませんでした。
 
さすがに、二回もパスしているので三回目は、理由が分からなくても読むしかないと覚悟を決めて読んでいきました。
 
戦場での駆け引きの場面は面白かったです。政治家同士の命を懸けた権力争い。一度権力争いに勝っても新たなライバルが登場し負けてしまう。激しい栄枯盛衰が書かれていました。自分の損得ではなく、国や王を大切にする晏子は政変の影響は受けずに、最後は首相として腕を振るいます。
 
次の勉強会で「本はどうだった?」と師匠から質問がありました。
「なかなかの大作で読むのが大変でした」と内容には触れずにごまかしました。
 
「そうだろうな。あれは大変だよ」
 
ここまで来たら質問するしかないと思いました。
「師匠は何であの本を薦めてくれたのですか?」と聞きました。
 
「イエローハットの創業者であり、日本を美しくする会を発足された鍵山秀三郎相談役が良く口にする言葉が、あの本の中にあるんだよ」
 
そんなすごい人が、どんなことをおっしゃっているのだろうと思いました。
 
「益がなくとも意味があるという言葉だよ。本に書いてあっただろ」
 
あったかどうかはわかりませんでしたが、「ありました!私には難しすぎました」と言うと師匠が説明してくれました。
 
自分の利益に結び付かないことでも、周りの人、大きくは社会や国のために努力すること、それ自体に大きな意味があると鍵山相談役は言ってられる。
 
近頃は、見返りが保証されないことは損、やっても儲からなければ無駄というものという考え方が広がっているように思う。益がなければ取り組む意味がないといえる。鍵山相談役の真反対の考え方だと思う。
 
会社でいうと、「社員の幸せ」とか「地域貢献」などを経営理念として掲げている会社があるけど、その社長が「社員の幸せ」「地域貢献」と「売上」「利益」のどちらを優先しているだろう? と問われました。
 
私は「売上」「利益」を優先していると思いました。
 
「辻さんは合理的だから」というオブラートに包んでくれましたが、益はなければ取り組む意味はないと考えているんでしょと言われていることに気がつきました。
 
私の益に対する執着を見透かされて、いろんな課題を師匠は私に与えてくれたんだと思いました。
 
師匠のアドバイスどおりに地域のゴミ拾いを始めました。自動販売機の下で缶を見つけた時は、何でこんな手の届きにくいところに捨てるねんと怒りが言葉になりました。
缶コーヒーを拾うと中にタバコが入っていたりします。これを取り出すのが一苦労しました。捨てるのは100歩譲って許すが、なんでタバコを入れるねんとゴミを捨てた人への文句が口から出ました。
 
翌月に、ゴミ拾いを始めたこと、そこで感じたことを師匠に報告しました。
 
「ゴミを捨てた人に文句を言って、ゴミが減るかな? せっかく良いことをしているのに他人を恨むのはもったいないよ」と言われました。
 
こう言われて、怒りや文句がどこから来たのか? と自分を点検してみました。
自分が、楽にゴミ拾いをしたいという益を求めていることや、ゴミ拾いをしている努力を認めてほしいという見返りを求めていることに気がつきました。
 
「益はなくとも」には程遠かったです。
 
それから3年が経ちました。
 
最近はゴミを見つけたら、何の感情も沸くこともなく、ゴミ袋に入れます。それどころか、ゴミを一つ拾うことで町が少し綺麗になった気がして嬉しいという感情が沸いてきます。
 
会社のほうは、大きく変化はしていません。ただ、当社が社会に貢献できている点を認められるようになりました。そうすると、目先の業績よりもっとより良いサービスやさらなる貢献を考えるようになってきました。業績を追いかけていたときよりも経営が楽しくなってきました。
 
ほんの少しですが、益はないことを実践することで、そのことに意味があるが分かるようになってきました。
 
 
 
 
***
 
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2021-09-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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