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まわりの人が敵のように思えるときは「贅沢」になっている証拠


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記事:永松 昭徳(ライティングゼミ・平日コース)

 
 
まわりの人は敵ばっかり。
なんかまわりの人にイライラする。
あの人もこの人もわずらわしい人ばっかりに見える、そんな心がやさぐれた日。
そんな日ってありませんか?
未熟なわたしにはそんな日がたまにありまして……。
 
しかし、まわりの人が敵のように思えるのは、実はとても「贅沢」なことをやってしまっているんだということに気が付きました。
 
世の中には、ありとあらゆる趣味があります。
スポーツ、読書、ゲーム、映画鑑賞などなど。
スポーツの中にも、ゴルフ、野球、サッカー、バレーといろいろありますし、
読書と言っても、ミステリー・純文学、自己啓発・歴史など様々です。
 
そんな数多くの選択肢がある中で、誰かと「趣味が合う」ってなんて素敵なことなんでしょう。
 
音楽の中にも、クラシック、ジャズ、ロック、歌謡曲、アニソン……、
そしてそのそれぞれのジャンルに数多くのアーティストたちがいます。
 
そんな中で「スピッツが1番好き」って2人が出会ったとしましょう。
 
まるで、3,000色以上もある色鉛筆の中から、好きな色を選んだらたまたま同じだったというような。
なんだか運命までも感じてしまいそうですよね。
 
「いや~ぼくたち趣味が合うね~」
意気投合した2人はさっそくお付き合いがはじまり、一緒にライブも行くようになりました。
 
ライブが終わって、興奮気味の2人は食事をしながら今日の感想を言い合います。
「『楓』よかったよわよね~思わず泣いちゃった」
「おれは『空も飛べるはず』に感動したよ」
 
スピッツ好きな2人でしたが、ライブで感動した曲が違っていました。
 
いやいや。
とても感性が似ている2人だから、ここは感動した歌も同じだったことにしましょう。
 
「やっぱ、あのサビ、最高だよね」
「え、わたし、最初の出足の感じの方が好き」
好きな歌が同じであっても、好きなパーツが違ってました。
 
いやいや。
まだまだ2人の意見は同じだったとしましょう。
なんてったって運命的な2人ですから。
 
「あのサビの『ら』の声の出し方にグッとくるのよね~」
「え?『ら』より、その前の『な』の鼻にかかった声がよくない?」
「ちょっと待って。ここは譲れないんだけど!」
「おれだってここは譲れないな」
ボーカルの声の出し方のところで、とうとう意見が分かれてしまいました。
 
このケンカを見た人は、2人にこう突っ込むはずです。
 
「なに、贅沢なケンカしてんだよ」と。
 
どんどん細部へ進んでいくと、いつか必ずどこかでズレが生じます。
どんなに運命的な2人であっても、絶対に感性は誰一人としてピッタリには重ならないのです。絶対に誰とも重ならない指紋のように。
 
もうひとつ別の例え話です。
 
東京で生まれ育った人が、転勤で大阪に引っ越したとします。
周りは阪神タイガースファンばかり。
その中で巨人を応援するのは肩身が狭いわけです。
 
「ワイは巨人が負けた日はぐっすり寝れるんや、ガハハ」
「ほんまやで、ガハハ」
と笑っている大阪のおじさんたちの前で、
「ぼくは阪神が負けるとよく寝れるんですが……」
となかなか言い出せません。
 
そこに「実はわたしも巨人ファンでして……」と隣の人がこっそりと耳打ちしてきてきたら、机の下でひっそりとガッチリと握手をすることでしょう。
 
しかしそんな彼も、東京に帰れば周りは巨人ファンばかり。
そこでは、巨人ファン同士で言い争っています。
「やっぱりキャッチャーは小林じゃなきゃだめだ」
「いやいや、小林は打たな過ぎる。打撃のいい大城だろ」
「おいおい、キャッチャーは打つことより守ることが肝心じゃないか」
ケンカ腰で口論をしているわけです。
(実際、ネットではこの争いは激しい言い合いになってたりします)
 
大阪にいるときには、巨人の「巨」の字も口に出せやしない彼は、この口論を見てこう呟くでしょう。
 
「いいな~こんな贅沢な口論を大阪でもしてみたいよ」と。
 
本来は同じチームを応援している仲間なのに、細部の意見の違いが許しがたく対立してしまうんですよね。
 
猛獣だらけのジャングルで一人さまよっていたとします。
そこで偶然に出会った男性がもし阪神ファンのおじさんだったとしても、出会ったあと一緒に火を起こし、夜中に猛獣に襲われないように交代で協力しあって眠るはずです。
 
「おい巨人ファンの兄ちゃん、しばらくワイが起きてるから、あんた先に寝るんや。疲れとるやろ。今日はどうせ寝れんのじゃ、巨人が勝ってもうたからな、ガハハ」
「阪神ファンのおっちゃん、ありがとう。ぼくは阪神が負けたんでゆっくり寝れそうです。起きたら交代しますから、そのあとゆっくり寝てください」
 
なんて友好的なやりとりが繰り広げられると思うのです。
 
信じている神が違うってだけで争いの絶えない人たちだって、海からゴジラが出てきて街を壊しはじめたとしたら、きっと味方同士になるわけですから。
 
信じている神が違うことって、しょせん細部の問題なんじゃないかとも思えてきます。
 
そんなことを思うと、人間同士で争うことって、実はとても贅沢でバカバカしいことをやっているんじゃないかなと思ってしまうのです。
 
自分の周りが敵ばかりに見えているとき。
 
そのときは、「贅沢」がゆえにそう見えていないか?
と自問自答してみようと思います。
 
大きな枠の中でみれば、周りの人はすべて味方なんですよね
 
 
 
 
***
 
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2021-09-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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