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あなたにとって天職とはなんですか?


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:蛯原篤史(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「わたしね、偶然18才で役者の道に入ったけど、60才過ぎてやっと将来、役者目ざすかなと定まったのよ」
 
あの大女優、樹木希林さんの言葉である。この言葉に触れた時、肩に入っていた力が抜けた。同時に、天職というものの捉え方が変わりはじめた。
 
数年前から流行っている起業ブーム。Instagram, Twitter, Facebookなどのソーシャルメディアをひらけると、「本当にやりたいことをやろう」、「ワクワクすること」や「好きなこと」を仕事にしよう、そんな投稿ばかりがやたらと目につく。
 
そんな風潮に踊らされて、「好きなこと」を仕事にし、独立したいと、私も思っていた時期がある。なぜなら、目の前にある仕事は、決して「ワクワクすること」ではなかったからだ。
 
それに、自分はこれで、食っていくみたいな確固たるたるものがなく、起業している人たちに対する劣等感もあった。
 
当時、私は、本職を脇において、独立することばかり考えていた。好きなことや、やりたいことは、山ほどあったし、副業としてやっていたこともあった。
 
旅が好きで、文章を書くのが好きだから、放浪する旅ライターになりたい。インドが好きで、カレーも好きだから、インドカレー屋になりたい。ヨガも教えていたから、ヨガインストラクターとして独立したい。タイ語の通訳や翻訳のフリーランスとしてもはたらきたい。
 
それらのことを、考えるだけで「ワクワクする」のである。そして、それが自分に適した仕事、つまり「天職」のように思えてくる。独立するために事業計画書を書いたこともあった。
 
しかし、残念なことに、どう考えても、採算は取れなさそうだった。大金持ちのパトロンがついてくれない限り、家族を養う収入を得るのは無理がある。
 
それに資金があったとしても、うまくいく気がしない。なぜなら、その道のプロは、数多といらっしゃってかなわない。「好き」が理由だけで、そう簡単には、仕事にならないのが現実だ。
 
私の本業は、空調設備メーカーの営業企画である。海外(主に東南アジア)市場動向を分析したり、お客様の意見を聞きながら、売れそうな商品を企画したり、その商品の売り方を考えて、実行する仕事である。
 
いわゆるマーケティングである。しかし、実態は、世間がイメージするほどキラキラしたものではない。なかなか骨の折れる仕事だ。
 
まず、お客様は、日本人ではなく外国人だ。さらに、住宅やビルの施主、設備設計事務所、設備販売店、など多岐にわたる。よって、文化も業種もちがう人たちから、ことなる要望が無数に出てくる。
 
クレームや小言、無茶振りも多い(商品企画において非常にありがたいことではあるが)これをまとめて、企画に仕上げるのに苦労する。また、会ってくれない、話してくれないお客様とのアポイントをとるのもまた、面倒なのだ。
 
なんと言っても、一番厄介なのは、海外の現場を知らない社内である。特に開発部門の説得は難航を極める。日本ではあり得ない、販売はいくら見込めるのだの、台数が少なすぎるだの、もう一度、お客様からヒアリングをやり直せなど、色々といちゃもんをつけてくるのだ。
 
ようやく、開発の合議が取れたとしても、提案された仕様がお客様の望むものでなかったり、発売が、1年、2年先といったこともある。いやいや、それだったら、売れませんよとツッコミをかましたくなることもたくさんあるのだ。
 
こんな感じなので、お客様と社内の板挟みも日常茶飯事。もし、誰かに辞めていいよと、言われたら、はい。辞めますと、言ってしまいたくなる仕事である。
 
とはいえ、お客様の要望と開発部門の意向がピッタリあって、開発が進むこともあし、お客様のお困りごとにハマる商品や提案ができた時は、継続的に購入いただける。社内の小競り合いもあるものの、なんとか社内外から信頼もしてもらえているので、次々に新しい企画が立ち上がって、進んでいく。
 
そんな時、この仕事に運命を感じる。ただ、ワクワクしたり、好きかと言われたら、それはない。しんどいですから、この仕事。
 
そんな面倒な仕事を15年間、続けてきた私にも、転機が訪れた。今年の4月、知人に紹介された会社に転職することになった。そして、前職とは、異なる職種で採用されたのだ。
 
これで解放されるかなと思って見たものの、蓋をあけてみると、前職と同じ仕事を相変わらずしている。それも、もっと複雑なことを、やらざる得なくなったのだ。会社を辞めることはできたが、営業企画の仕事は、辞めることはできなかった。
 
もう、これが、私の天職かもしれない。受け入れるしかなかった。天職とは、好きなことを仕事にすることと思っていたし、はやく天職に巡り会いたいと思っていた。
 
しかし、私の場合はそうではなかった。もしかしたら、「天職」とは、好きとか、嫌いとか、やりたいとか、やりたくないとかではない。目の前に突きつけられたもの。どうしてもやってしまうもの、逃れられないものなのかもしれない。巷で言われる、好きなこと、ワクワクすること、とはちがうのかもしれない。
 
今まで、与えられてきた仕事を天職だと、思ったことは一度もなかった。だが、どこに行っても、つきまとってくる。もうこの仕事で、やっていくしかないのかも。40才を迎えて、やっとこさ、気持ちが定まったのかもしれない。
 
あなたにとって、天職とはなんですか?
 
 
 
 
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2021-09-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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