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辛くて逃げるは役に立つか


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記事:杉下 薫(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「頑張らなくてもいい」「無理をしなくてもいい」「辛かったら逃げてもいい」
今はそうした考え方があらゆる文脈、場面で使われるような時代になったと思う。
これは今まで「頑張らなくてはいけない」「辛くても逃げちゃダメ」という考え方が主流だった社会に、経済、肉体、精神、あらゆる面でひずみが生まれそれにバランスをとるカウンター的な意味で生まれてきたことは想像に難くない。
それ自体は時代の流れであり、苦しむ人が少なくなれば私自身とてもいいと思う。
 
ただ、逃げれば逃げるほどツケが溜まったりそのあと苦しくなる現実は存在し、不安に思う人がいるのも確かだと思う。
大ヒットした「鬼滅の刃」の登場人物は主人公の竈門炭治郎はじめ皆どんなつらい現実に遭おうとも決して逃げないし挫けない。この時代によくこうした作品が流行ったと思うが、だとしたら一体僕らは逃げてもいいのか、逃げちゃダメなのか。僕の過去を交えながら少し書いてみたい。
 
僕は3年前、「君は頑張っているのは分かるが仕事であまりにもミスが多すぎる。他の部署に回すことも考えたが空きがない。だから君を解雇することにした。これは決定事項だ。今すぐ荷物を持って帰ってくれ」と2か月前に僕を採用した上司に言われ解雇されたことがある。それからしばらく、夜は眠れず明け方うたた寝をする程度で全く眠れない日が続いた。そのうたた寝もすぐに目が覚めるが、身体が動かずベッドから起き上がれない。スマホを見することさえできずずっと天井を見ていて、夕方トイレが我慢できなくなり仕方なく起き上がるという生活だった。
この時はつらい仕事に対して辞めたいと言ったりしている人が心底羨ましかった。僕は毎日詰められ続けていたが、それでもなんとかここで頑張ろうと思っていた矢先、有無を言わさず強制的に辞めさせられてしまったのだ。
 
この経験から僕が感じたことは、逃げたり休んでもいいが、逃げてもいずれ立ち向かわなければならない場面は来る。その時また立ち上がることができるようにする充電期間とすべきではないかということだ。
僕は解雇されてから、自分が好きだった漫画を読み直し以前から知っていたはずの作中のセリフに大きく鼓舞された。好きな漫画の舞台であるイタリア旅行に行き、そこで見た数々の作中の聖地や同じ作品のファンと過ごした時間は心の傷を癒してくれた。
こうした充電期間を経て僕はなんとか、小さい頃から憧れ新卒時に受験し失敗した公務員の勉強ができるくらいには回復した。
ただ、この後も苦労は続きアルバイトで収入を得ていたがコロナウイルスでアルバイトが激減し収入がなくなった時には親からお金を借りて公務員試験の面接対策としてまちあるきに行った。筆記で全勝しても面接で全敗し大苦戦したときにはたくさんの友人やハローワークの人に面接練習を手伝ってもらった。公務員試験の面接の結果が振るわず受けた民間企業面接官に解雇になった経緯を話したら、理解を示してもらい励ましの言葉をいただいた。本当に多くの人やモノに助けられたと思う。困ったときには周囲に頼ることもはばかられてしまうのもよく分かるが、なんてことはない。いつか自分が大成したときにその恩を倍返ししてやればいいだけなのだ。
 
ただ、そうは言っても逃げている間は、何もできずいたずらに時間が過ぎていくことに焦りを感じるだろう。僕自身学生時代の友人が続々と結婚していったり子供をもって家庭を築いていったり、「年相応の幸せ」を得ていくのに比べ、就職なんかで足踏みしている自分に歯噛みしたものだ。コツは今が全てではないと長期的な視野で考えることだと思う。たとえ大きなハプニングに見舞われようと、即座に死ぬほどのことではなく長い人生の中の一つの出来事に過ぎない。今が全てではなく、いずれ来る「勝ち」への途中なのだ。
また、周囲に対して後ろめたさや罪悪感を抱くこともある。僕自身、酒に酔った父と幾度か衝突を重ね、「情けない奴だ」などと言われたこともある。だがそれは怠惰でも恥ずべきことでもない。その充電期間中に立ち直り、大成できればそれまで無駄だと思っていたすべてのことは無駄ではなくなり必要だった期間になる。僕はたくさんの人たちの支えのおかげで最終的に内定を得た。この時には大変多くの人に祝ってもらい、急に引っ越すことになったのだが父からカンパしてもらえたし、父の上司も会ったことすらない僕のために就職祝いとして獺祭というお酒をプレゼントしてくれた。
 
どんな人間も常に絶頂ではいられない。一見裕福だったり幸せそうな人でもその人なりの浮き沈みがあるはずだ。加えてどんなにミスなく生きてこようと、自分の責任ではなく降りかかってくる災難もある。そんな時には周りの支えが大きな力となることを僕は学んだ。だからもしこれを読んでいる人で追い詰められている人がいれば、周りの力を借り、一旦逃げてもいいから、また立ち上がってほしい。一生絶頂の人がいないように、一生沈んだままの人間もまたいないはずだ。
 
 
 
 
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2021-09-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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