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50歳を過ぎても親に怒られる私ができた親孝行


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記事:須賀泉水(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
年末にお誕生日を迎え、娘が二十歳になります。
年が明けたら成人式。親としては、とても嬉しい大イベントです。
それなのに、自分でも驚くほど成人式の準備が進みません。
 
女の子の成人式の準備は、やらなくてはいけないことが、とにかく山盛りです。
 
振袖、小物の用意や、着付けに写真撮影の予約などなど。
書き出してみるとそうは見えないのですが、体感覚では山盛りなのです。
 
やることが多すぎるように感じて、何から手を付けてよいのか分からない。
だから、やる前から面倒くさい。ごめんよ、娘。
 
このように感じるのは、やらなくてはいけないことの量だけではありません。
 
その他の理由としては。
普段、着物を着ることがないので、分からないことが多い気がするから。
成人式を迎える2年も前から、頼んでもいない振袖のカタログが大量に届き、
猶予がありすぎて、いつまでたってもまだ間に合う気がしているから。
最後は、私の母親の手を借りようと思っているから。
 
このように、やる気スイッチが入らない理由はすぐに見つかります。
それなのに見つからない、やる気スイッチ。
あー、困った困った。
 
成人式準備のことを考えるたびに思い出すのは、子どもの頃の夏休みの宿題です。
 
分からないことが多い気がするのは、私の勉強不足。
2年も前から届くカタログの山は、40日もある夏休み前に渡された漢字ドリルと計算ドリル。
母の手助けは、私を怒り散らかすという方法で、私の宿題が無事に2学期始業式の日に間に合わせてくれたこと。
 
 
ということは、きっと私はギリギリに間に合わせるのだろう。などという、今までもなんだかんだ間に合わせてきた体験も、やる気スイッチオンの邪魔をしているのかもしれない。
などと分析している暇があったら、さっさとやればいいのにと、自分でも思います。
 
 
8月31日。
ため込んだ、夏休みの宿題の絵日記に記入しなくてはいけない、昨日以前のお天気が分からず泣いていたあの日。十数年前の同じ日の深夜の自分の涙を思い出し、今回は泣いている場合ではないと、ついに私はやる気スイッチを入れることにしました。
 
課題に取り組む心構えとして子どものころ違うのは、どうすれば楽に、確実に宿題を終わらせることができるか、を考えたこと。
そこで、山積みのドリルを開く前に、まず母親の手を借りることにしました。
怒られよう。怒られたら私もやるしかないだろう、と。
 
娘には、私が成人式で着た振袖を着てもらうことだけは決まっていました。
母は、大昔に自分が用意した振袖を孫が着ると知り、一瞬でやる気スイッチON。
 
まず、振袖の状態と必要な小物が揃っているかを一緒に確認してくれました。
 
当時、女手一つで私を育てながら立派な振袖まで用意することは、容易なことではなかったと思います。
色々な思いがこみ上げるのか、懐かしの振袖を手に取った母の、思い出話が始まりました
 
話が長い……
それ、さっきも聞いた……
 
立場が逆なら、「口動かしてないで手を動かしなさい!」となる場面ですが、ここは聞いているふりをしてグッと我慢です。
むしろ、9月まで手付かずだった成人式準備に、昔のように怒り散らかされることなくほっと一安心でもありました。
 
同じ話を何度も聞きながら、必要な物は一通り揃っていることを確認してもらい、振袖を丸洗いしてもらいなさいと、アドバイスをもらいました。
 
そして母は、丸洗いをお願いする着物屋さんにもついて行きたいと言い出しました。
一緒に行った着物屋さんでは、お店の方に着物を褒めていただき、上機嫌に喋る喋る。
私はここでやっと、母がとても喜んでいることに気が付きました。
 
怒られるかもしれないと思っていたのに、もしかするとこれ、親孝行できているのかも。
親のために何か役に立つこと、喜んでもらうことをしなくても、世話を焼いてもらうのもまた親孝行なのだと思えました。
 
母と私は、普段それほど仲が良いわけではありません。その時点で、私は親孝行な娘ではないと自覚しています。成人式の準備をきっかけに、親孝行ができたかも? と思えたのは、娘の存在があったからこそ。
私に親孝行をした気にさせてくれた娘は、すでに立派に親孝行してくれているなと気が付きました。
 
ありがとう。しっかり成人式の準備、するからね。
と思いつつ……
 
 
ママの振袖を成人式に着ることを、「ママ振り」と言うそうです。
 
ママ振りだと、どうしても昭和感がにじみ出てしまうこともあり、それを回避するために「半襟」という、襟から少しだけ見えるところだけ、付け直すことになりました。
成人式準備、残す課題はこの襟付けだけになりました。
 
写真の前撮りまで、まだ1か月半の猶予があります。
きっと私はギリギリまでやらないんだろうな。
でも絶対、当日には間に合わせるんだろうな。
 
なぜなら、そろそろ、「まだ半襟つけてないの!?」と、母が怒り出したから。
あー、ありがたい。
 
 
 
 
***
 
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2021-10-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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