病気の疑いから見えたもの
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:松岡サラサ(ライティング・ゼミ10月コース)
今年の7月。3年に1度、定期的に行っている内視鏡検査の結果が出た。「ポリープがありますね。早急に再検査しましょう」と担当医の先生が言った。高校1年生の時、潰瘍性大腸炎の疑いアリと診断が出て以来、ちょっと調子が悪い時などに検査を行ってきた。毎回、「概ね問題ナシ」との結果で整腸剤を飲む程度で過ごしてきたが40歳を超え、ここ10年くらいは大事をとって、定期的に検査を受けるようになった。いつものことで、「整腸剤は飲み続けてください」とだけ言われるものだと思っていたので寝耳に水の一言だった。
再検査。先生にどういうことか? と尋ねると「ちょっとね。形が悪いんですよ、ポリープの」と首を傾げる。そして突然、立ち上がると背後にまわり、僕の両肩に手を置いた。「進行がんの可能性があります。もし、そうなったとしても逃げずに治療に取り組んでいきましょう」とやさしい声でお話された。
へ!? 今なんて言った?
シ、シ、進行がん?
おいおいおいおい、何言っちゃってんの? 先生!
僕、もしかして死んじゃうの!?
頭がぽわ~~ん、として、そこから自宅に帰るまでのことがよく思い出せない。ただ、ただ「自分はがんかもしれない」いや「がんの可能性が高い?」いやいや「ほぼ、がんに違いない!」とマイナスな思考に支配された。ぐるぐると頭の中で「がん! がん! がん!」というフレーズがガンガン連呼する。
一気に窮地に立たされたせいか、今起きていることが現実か否かの区分けもつかなくなるような感覚に襲われた。目の前の世界はいつも通りに動いてるのに、ふとすると「オレがんなの?」という問いが押し寄せてくる。テレビを見てても「オレって、がん?」、ごはんを食べようとしても「がんじゃね?」頭の真横にスピーカーのようなものが設置され、延々とつぶやいてくる感じだ。
やばい、このままだとおかしくなる! 防衛本能からなのか、つぶやきに潰されそうになった時、「こうなったら、例えどんな病気になろうとも徹底的に治してやる!」とどん底から這い上がるごとく、力が湧いてきた。ギリギリでそこに立っているような力ではあったが、もう戦うしかない、という覚悟を決めた。
がん予防の本を買い込み、まずは食生活を変えようと思った。思えば普段、ロクなものを食べてない。牛丼やハンバーグの肉食メインにお酒にスナック菓子。こりゃ病気にもなるな、という内容だ。数冊本を読んだ結果、毎日手作りの野菜ジュースを飲み、主菜は魚か鶏肉、ごはんは玄米にするのがいいらしいことがわかった。外食ばかりで慣れない料理を始めた。思っていたより、食事を作るのは結構な時間がかかる。野菜の切り方すらわからず苦戦していると、自分の心の声が聞こえてきた。「もう1度結婚して、家族を作りたいなぁ」
そう、僕はバツありだ。しかも2度。立派な結婚不適合者だと思う。そんな僕がもし再検査の結果で本当にがんだとしたら、この先どうなるんだろう? と考えてみた。一人暮らしで、料理もできない独身男性が闘病していくのは相当大変だろう。しかも、抗がん剤治療に進んだ場合、副作用で苦しむんじゃないか? そうなったら料理どころじゃなく、家の中で身動きひとつ取れない体になってしまうんじゃないか? と不安ばかりがよぎる。そうか、家族を作ることは、いつでもリングに上がれる状態になることなんだ、と思った。
ボクサーがリングに上がる時は通常、万全の体調管理をして、試合に挑む。いかにベストコンディションを保つかが大事だ。そこにはセコンドやスタッフもいて、みんなの協力の元、チームとして戦っている側面もある。そう考えると、家族と同じなんだろうと思う。ボクサーが夫であればセコンドは妻、ジムのスタッフは子供たち。全員が支え合って人生を戦い、進んでいく。“あれ? 今の自分じゃリングにすら上がれないのか”と置かれている状況を鑑みて、焦りを感じ始めた。
そして、「やっぱりもう1度、結婚しよう。そして家族を作ろう。早急に!」と新たな決意が芽生えた。
1ヵ月後。再検査の結果が出た。
「ポリープですが良性でした。取ったのでもう安心してください」と笑顔の先生。最悪の結果まで想定して身構えていたので、どっと肩の力が抜けた。良かったぁ~~!! 生きた心地がしない1ヵ月を過ごして、ようやく平穏が訪れることの喜びを感じた。と同時に、死をも考える境地に立ったからこそ見えた、家族を持つ意味を大事にしていこうと思った。
数ヵ月前、高校の同級生から「一緒に入らないか?」と誘われた結婚相談所に一応、入会はしてたものの、どこかで“結婚はもういいかな”と思い、積極的な活動はしていなかった。しかし、この経験をふまえて本腰を入れることにする。そして、家族を作り、いつでもリングに上がれる僕になろうと思う。
***
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