メディアグランプリ

何かスポーツやってたんですか問題、あるいは肉まんとあんまんの違いについて


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記事:光山ミツロウ(ライティング・ライブ福岡会場)
 
 
「何かスポーツやってたんですか?」
 
これは、仕事や会合で初対面の挨拶や名刺交換の際、高い確率で私が頂戴する質問である。10人いたら8人くらいだろうか、本当に良くこの質問を頂く。
 
身長185cm体重約80㎏、なおかつ短髪の私が醸し出す雰囲気が、どうみても体育会系のそれ、もっというとラグビーやアメフトといったハードなスポーツ経験者のそれだから、というのが理由だろう。
 
しかし、ここで大きな問題がある。
 
それは、私がこれまでの人生の大半を体育会系ではなく文化系として過ごしてきた、という事実だ。こう見えてスポーツ経験がほとんど、ない。
 
小学生ですでに長身だった私は、単に背が高いというだけで、当時なり手の少なかったサッカークラブのゴールキーパーをやっていた(やらされていた)ものの、中学と高校は帰宅部。
 
時は1990年代後半。
学校が終わるとまっすぐ家に帰り、電気グルーヴをBGMにみうらじゅん氏のエッセイを読み耽り妄想を膨らまして独りほくそ笑む、そんな静かな10代を過ごした。
 
大学時代も酒と音楽と自主映画を活動の中心に据えていた関係上、私も含め周りの友人知人は皆サブカルかぶれのモラトリアム人間で、スポーツ系の部活やサークルとは無縁であった。
 
社会人になってからもダイエットのために始めたジョギングを除いては、特にこれといったスポーツ経験もなく、ましてやラグビーやアメフトのルールさえも知る機会がないまま生きてきた。
 
そこへきての「何かスポーツやってたんですか?」である。
 
お互い良い歳をした大人で、当たり障りのない話題を振って束の間の親睦を図ろう、という意図があるのも良く分かる。
 
質問者が、初対面の礼節として、たとえ建前上であっても身長185cmの大男への関心を示す意味で、気を使って聞いてくださっているのも承知している。
とてもありがたいことだと思う。
 
しかし、申し訳ないことに、スポーツ経験がそこまでないのだ。
 
「いえ、スポーツ経験はありません。実は文化系なんですよね……人生(電気グルーヴの前身バンド)時代から電気グル……」と正直に答えたこともある。
 
その時に流れた微妙な空気といったらなかった。
質問者の気まずそうな表情に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
 
それはそうだろう。
 
「実は中学からラグビーをずっとやってましてね……」とか、
「大学ではアメフトでリーグ戦に出てたんですよ……」とか、
 
そういった爽やかなスポーツ武勇伝を期待していたのに、目の前の大男はそもそもスポーツ経験すらないとは。そう、大男なのに!
 
そればかりか文化系? 電気? という良く分からない軟弱なキーワードしか返って来ないのである。
 
例えるなら、肉まんだと思ってガブリと食べてみたら、あんまんだった、といったところだろう。ジューシーなお肉を期待していたのに、口に広がるのは甘ったるいあんこ。困惑するのも当然だ。
 
そんな、あんまん寄りである私は、質問者が私が肉まんであることへの期待を込めて「何かスポーツやってたんですか?」と問う度に、自分とは一体何者なのかを考えるようになった。
 
誰かに初めて会う度に聞かれるこの問いは、次第に私にとって「一体あなたという人は誰なんですか?」という問いと同じ意味を持つようになっていった。
 
この質問にいったい何と答えるのがベストなのか。
どう答えれば肉まんを期待する人に、当初予定になかったあんまんを美味しく食べて頂けるのか。それも、あんまんとしてのアイデンティティも守りながら。
 
これが私の「何かスポーツやってたんですか問題」の根幹である。
 
「はい、サッカーやってました! 小学校から始めて、自分の強みを活かそうとゴールキーパーに志願したんです。中高で指導者に恵まれて県大会の上位までいきました。大学時代はリーグ戦に出たりしてました。サッカーお好きですか?」
 
質問者にカタルシスを感じてもらうには、これぐらいの過剰演出がベストなのだろう。
 
この模範解答が澱みなく口から出れば、ここから自然な流れでサッカーの話題になり、相手もしくは相手の関係者にサッカー好きがいることが判明する等の小さなサプライズをいくつか経て、感動のフィナーレを迎えることができるかもしれない。
 
しかし、これでは私は嘘つきになってしまうし、何より私のアイデンティティ(あんこ)は失われてしまう。
  
それどころか、下手に話しが盛り上がった手前「今度一緒にうちのチームでサッカーやりましょうよ! マジで」という状況にならない保証はどこにもなく、そうなるといよいよアイデンティティどころではなくなる。
 
白状しよう。
 
小学校までしかやっていないサッカーを、質問者の期待に応えたいばっかりに、さも高校まで続けたような物言いで返答してしまったことが、実はある。
 
魔が差した。
肉まんへの憧れもあったのかもしれない。
 
結果、質問者が偶然にもサッカー経験者で、知らない用語や海外の選手名が矢継ぎ早に飛んできて冷や汗をかいた。
相手の期待に応えようとするばかり、自分を見失ってしまったのである。
 
やはりあんまんは、あんまんだった。
肉まんのふりはできても、中身はあんこだ。
 
肉まんが肉まん然として生きているように、あんまんもあんまん然として生きるべきなのだ、と私は強く思った。
 
私は私しかできない。
しかし、私は私にしかできない。
 
私に必要なことは、肉まんのふりをして取り繕うよりも、あんまんのままで相手と感動のフィナーレを迎えるための努力と工夫だ。
 
人は外見や肩書でその人の中身を決めてしまいがちだ。
私のように中身があんこなのに、肉まん前提で話しが進む人もいれば、中身は肉なのに、あんまん前提で話しが進み歯がゆい思いをした人もいるだろう。
 
人は誰でも、外見では分からない中身を持っている。
深く付き合って初めてわかるその人の味というものがある。
 
いまだ明確な答えは出せていないが「何かスポーツやってたんですか問題」は多くのことを私に教えてくれた。
 
だから言いたい。
 
これから私と出会うであろうそこのあなた!
 
あんまんも美味しいですよ、と。
 
 
 
 
***
 
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2021-10-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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