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僕はサイボーグになった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:日下秀之(ライティング・ライブ大阪会場)
 
 
二重扉をくぐると暗い部屋だった。
ここは……手術室か。
 
部屋は幻想的かつ人工的な白い光に照らされ、不思議な色合いを保っている。
UFOの中って、こんな感じなのかもしれないな。
 
そんなことを思いながら、マスクで表情の見えない看護師にベッドに寝かされる。
室内には何人も人がいる。
 
寝るやいなや、僕の目に器具が被せられ、まぶたが閉じられないよう固定されてしまった。
閉じられない目に、白い光の輪がどんどん近づいて来る。
 
光は筒状の機械の先端から出ているようだ。
機械は止まらず、ついには眼球に触れる。
まだ機械は止まってくれず、そのまま眼球を圧迫する。
 
事前に打たれた麻酔が効いているのだろう、痛みはないが、圧迫感が気持ち悪い。
数秒我慢すると機械は離れてくれた。
 
ホッとしたのもつかの間。
 
焦点が合わないが、医者がピンセットで僕の目から「何かを剥がしている」のがわかる。
思わず息を呑んだ。
ピンセットが目から離れると、すぐにベッドが回転した。
 
何かを剥がされた目ではよく見えないが、今度は赤い光が上空に見える。これもなにかの機械だろう。
同時に、雷が弾けるような音がバリバリと鳴り響き始めた。
 
逃げようと思っても、もう遅いことを察する。
 
赤い光が近づき、バリバリ音も大きくなる。レーザーが照射されているのだろうが、麻酔で感覚は一切ない。轟音のさなか、医者が何か話しかけてくる。
必死で呼吸を整え、せめてもの平静を保つ。
レーザーの音が止まると、今度は目に液体が流し込まれた。
 
よく見えないが、この時「剥がされた何か」も元に戻された……ような気がする。
 
またベッドが回転し、今度は反対側の目が始まった。
 
目に器具を取り付けられ、白い光の輪に目を圧迫される。
目から何かが剥がされる。
ベッドが回転する。
轟音と赤い光に目を焼かれる。
液体を流し込まれる。
剥がされた何かを元に戻される。
 
一つひとつの動作が反対の目と全く同じ流れで進行する。
 
そして「はい、お疲れ様でしたー!無事終わりました!」医者が朗らかに言う。
「ありがとうございました!」僕は歩いて手術室を後にする。
 
さて、話は一ヶ月前に遡る。
 
突然だが、僕は物を管理するのが絶望的に苦手だ。
毎朝メガネを無くして5分以上探し回る。
旅行に行けばコンタクトの洗浄液を忘れてコンビニに走る。
 
そんな僕に妻は、彼女も数年前に経験した手術を勧めてきた。
レーシックだ。
 
レーシック手術は目にレーザーを照射し、角膜という組織を削って視力を矯正する。
裸眼視力を回復させる手術として安全性は最も高いとされる。
 
高いとされる。が、シンプルに怖い。
 
いくら安全と言われても証拠があればOK! って話ではない。
万が一レーザーが暴走したらどうするのだ。
 
目に異物を入れるような手術は絶対無理! と妻の提案を拒否する。
 
「コンタクトも異物だ」「レーシックは人生最高のコスパの買い物だ」と強めの思想で繰り返し勧誘にやってくる妻を1年程度かわし続けた。
 
その間メガネを無くし続け、コンタクトの洗浄液をコンビニで山程買った。
 
そんなある日転機が訪れた。
ひょんなことから「クジラと泳ぎたい」という夢が出来た。
 
クジラと泳ぐにはホエールスイミングに参加する必要がある。
ホエールウォッチングのようにクジラを探し、見つけ次第静かに海に飛び込む。
コンタクトは流されやすいため、度付きゴーグルを使う。
船ではメガネ、水中ではゴーグル、とつけ直していたら、クジラを見つけても出遅れてしまう。
 
そして、ホエールスイミングの本場は海外だ。
ろくに海外経験のない僕でも、海外でメガネやコンタクトを紛失、破損すると危機的状況に陥るのは容易に想像できる。
 
海外において、裸眼で戦える身体を作っておくのはアドバンテージだ。
 
「買い」だ。
 
恐怖など捨て置け。海外に行けるのは1年以上先になりそうだが関係ない。
人間は、夢を見つけると途端に無敵になる。
 
決まれば話は早い。
妻や知人も施術を受けている病院に行き、精密検査をしてもらう。
目に少しでも異常が見つかると手術は出来ない。
 
検査をパスし、あっという間に手術当日、冒頭に至る。
 
最近小説家に憧れているので「何も知らない男が人体実験されるSF小説」風に書いてみた。
実際の手術にはこんな鬼気迫る雰囲気はないので安心してほしい。
 
どんな流れで手術するかは事前にしっかり説明してくれるし、非常に和やかな雰囲気で手術は進む。
レーザー中も緊張を解こうとお医者さんがずっと話しかけてくれる。
あんまり聞こえないけど具体的にはこんな感じ。
 
バリバリバリ「いい感じですよー」バリバリ「順調ですよー」バリバリバリ「もう少しですよー」バリバリバリ。
 
手術時間は両目併せて大体10分。あっという間バリ。
 
ただ、目を剥がされたのは怖かった。
レーザーを当てるのは目の少し奥の方なので、目の表面を一時的に剥がす必要がある。
そのため機械を目に押し当て、違う種類のレーザーを使って切れ目を入れる。
 
知りすぎると怖くなるという理由で説明をちゃんと聞いてなかったので余計怖かった。
皆はこの記事でしっかり予習してほしい。
 
術後も10分程度の休憩後、目の状態を診察してすぐ解散。
実にあっけない。あれだけ怖がっていたのは何だったのか。
 
手術直後は視界もぼんやりで「裸眼よりは見えてる……のか……?」という感じだが、じわじわと視力が回復してくる。
 
妻からは、術後「眼前に玉ねぎを500個置かれたような痛みに襲われる」と脅されていた。
いつ痛みが始まるかと震えながら術後を過ごしたが、結局玉ねぎ祭りは始まらなかった。
同時に、数年前の妻は麻酔が効いていなかったこともわかった。
 
とはいえ、目のゴロゴロ感や身体のだるさはあったので、さっさと寝た。
 
妻の言っていたことで本当だったこともある。
「翌日に世界が変わる」だ。
 
朝起きて目を開けた瞬間、いつもなら見えない時計の針が見える。
メガネを探そうとして、もう必要ないことに気がつく。
寝る前にも、もうコンタクトを外さなくていい。急な外泊もバッチリだ。
 
今では、生身の人間時代の思い出の品としてメガネは棚に飾られている。
そう、僕はサイボーグになったのだ。
 
 
P.S.
ここまでレーシック物語を書いてみたが、色々調べる中で「間違いなくレーシックがオススメだ」と言える人種がいることがわかった。
 
僕と同じ様に「コンタクト派のくせに、ろくにコンタクトを管理できない人」だ。
 
1DAYコンタクトを数日間つけ続けたり、つけたまま寝落ちする行為は、角膜を傷つけ感染症になるリスクが非常に高い。放置すると失明の可能性すらある。
 
こうなると間違いなくレーザーを目に照射するよりも目に悪い。
この人達はさっさとメガネ派に鞍替えするかレーシックをした方がいい。
 
また、レーシックは保険適用外のため手術代も高価だが、コンタクトの維持費を真面目に計算すると、5~10年以内には元が取れることがわかるはずだ。
 
ただ、当然リスクはある。
削った角膜は復活しないし、数ヶ月の間ドライアイが悪化したり、夜目が効きにくくなる。
時間が立つと若干近視が再発する可能性もある。若すぎる時期(25歳以前)に受けると特に再発リスクは高い。
 
いずれにせよ、気になった人も一度よく考えてみて欲しい。
あなたの世界がハッピーな視界になりますように。
 
 
 
 
***
 
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2021-11-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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