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老年初心者、トワイライトに突入!

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:蒲生厚子(ライティング・ライブ名古屋会場)
 
 
先日、64回目の誕生日を迎えた。よく生きてきたなあと思いつつも、あと何年間生き続けるのだろうという気持ちの方が大きい。
 
心理学者のユングは40代以降の中年期を「人生の午後」と言った。40代のころは「なるほど! うまい言葉だ」と感心したものだ。そしてその午後を充実させることで明るい老後を迎えることができると信じて中年期を歩いてきた。
 
そして今、老年期に突入している。今の年齢は午後でも何時くらいなのだろうと考えてみた。そもそもユングは1961年に亡くなっている。その時代の平均寿命は厚生労働省簡易生命表によると、男性66.03歳、女性70.79歳となっている。びっくりするほど短い。2021年現在では男性81.64歳、女性87.74歳と20年近く寿命が伸びている。ということは、人生の午後といってもまだまだ夜にはならずトワイライトといったところか。夜になってしまう手前が貴重な健康寿命ゾーンなのかもしれない。そこをいかに伸ばすのかが私たち老年初心者の課題でもある。
 
人生のトワイライト期にまず異変をおこすのが目。黄昏時は目が見えにくいとはよく言ったものだ。今まで見えていた小さい文字が見えにくくなる。昔、おじいさんが鼻眼鏡で新聞を読んでいたり、おばあさんが眼鏡をはずしてチラシを眺めていたりするのは漫画の世界だと思っていたが、まさに自分がそうなってしまうとは……。
 
私は極度の近視なので、老眼がやってくるのが少しゆるやかだった。コンタクトを遠近両用にすると、小さい字を読むことはできたので、日常生活には大して支障はなかった。近視でない友人たちは、ATM
で通帳の字や振込先の口座番号が見えなくて困ったとか、説明書きの字が見えないとか、レストランでメニューが読めないなど今までになかった困難にぶち当たっていたようだ。銭湯の大浴場でシャンプー、コンディショナー、ボディソープの文字が見えないから本当にこまるという友もいた。
 
それらのエピソードに比べると、ほとほと困り果てることはないものの、細かい字を読むことが面倒くさくなり、半分くらい読んでもう嫌になってしまうことが多くなった。説明書の類も最後まで読まずにわかったことにしてしまう。もしくは最初からあきらめてしまう。
困ったものだ。
大好きな漫画もコマ割りが複雑なものはダメ。字が細かいものもダメ。また登場人物が多いと覚えられないので、わけがわからなくなってしまう。単純な漫画に軍配があがることとなる。
 
パソコンも見えることは見えるが、自然と眉間にしわを寄せてながめているのか、眉間にしわが刻まれてしまった。これはとても悲しい事実だ。
 
次に歳を感じるのが嚥下問題。飲み込みが悪く(頭の飲み込みもそうなのだが)食べるのが遅くなった。慌てて飲み込むと気管に入ってしまい、いったんそうなると地獄のようにむせてしまう。咳をするのだが、一度や二度ではつっかえがとれず、かえってひどくなり、息ができないほどコンコンして、最後に大きなくしゃみが出たら治るというとんでもない粗治療となってしまう。息子が見ていて「うるさいなあ! 」と最初は眉をひそめていたものの、あまりにも苦しそうな私をみて心配してしまうほどだ。
しとやかさや女子力なんてものはどこかへぶっ飛んでしまい、我ながら驚いてしまう。
以前はクラシックコンサートの第一楽章が終わったらどこからともなく「コンコン」と咳払いが聞こえるのが不思議だったが、今ではとてもよくわかる。コンコンしている自分がいる。
 
辛いものも嫌いではないのだが、気管に入る地獄の苦しみを思うと、外食ではついつい辛い物をさけてしまう。コロナ禍では咳き込み厳禁だから余計に気を遣う。
ペットボトルの水さえ不用意に飲むとむせることがあるので、ゆっくりゆっくり。
 
そう、なにかにつけてゆっくりが最適なのである。なんせ動作が緩慢になっていて、とても時間がかかるのだ。
 
若いころは決められた時間内にどれだけできるかが、達成感の証でもあった。いかに時間を無駄にしないか、隙間時間をいかに使うか。スケジュールを上手にこなすと蜜の味がした。「すごい」と思える自分が好きだった。
電車に乗るのも、時間ギリギリで大丈夫! 滑り込みセーフはいつも気分がよかった。
 
ところが、ここ数年滑り込みアウトを積み上げることが多くなり、ついには気づいてしまった。そう、昔のようには動けないんだ! まず駅のホームに降りる階段が走れない。足が動かないというより、怖くて走れないのだ。歩いて降りるのでもとても慎重になっている自分がいる。目が踏み外しそうなのだ。これは年をとってみないとわからない感覚かもしれない。
改札口を一緒に通った若い人は階段を軽やかにおりて、電車に乗り込んでしまったが、まだ階段途中のわたしは悲しくも電車の発車ベルを聞きながら見送るはめになるなんてことは一度や二度ではない。
 
動けない自分を受け入れるようになってからは、今までより10分早く家を出るようにしている。そうすることで少し余裕が出て、今まで見えてなかったものが見えるようにもなった。例えば新しい看板や、太陽に光っている緑など。
 
歳を重ねる自分を受け入れることは、今までできていたことを否定するのではなく、新しくできるようになることかもしれない。
私の場合は、少し早めに行動を起こすとか、早めに床につくとか、食事をゆっくり食べるとか、早めにお風呂に入るとか、生活を変えることで生き方を見直すきっかけを作り出す。それは価値観を変えることにもつながる。
 
歳をとるのは嫌だと思うと、人生の夜が始まってしまう。年を取るのを面白がって俯瞰できると、トワイライトの期間が長くなる。夕暮れ時は空が刻々を変化していってとてもきれいな時間だ。そんな変化を受け入れて眺めていると、やがて美しい日没がきて、周囲の雲を朱色に染めながらうっすらと暮れていく。日が沈んでしまっても、周囲の空はまだ光を惜しむように余韻残して徐々に暮れていく。
そんな人生がいいなと思う。そしてまだ青がのこっている空には、白い月が浮かんでいて、人生捨てたもんじゃない、まだまだ美しいよって微笑んでいるのが理想的。
 
そこを目指して、今生まれ変わろうと思う。
 
 
 
 
***
 
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2021-11-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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