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4年越しのヨダレの味は。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:関根夏歩(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
わたしはずっとあなたに愛慕を寄せておりました。
 
 
ある日、ふとテレビをつけたらやっていたグルメ番組。
 
 
そこで紹介されていた、カツカレー。
 
普段はとんかつ屋さんを営んでいる店主がカレーが好きすぎて、できたメニューらしい。
とんかつ屋さんなのでカツのクオリティは言わずもがな、高い。
店主はカレー屋で働いていたことがあり、ルーはスパイスからこだわり抜かれ、小麦粉を一切使用せずに作られている。
さらにお米はこのカツとカレーに合うようにお米マイスターというお米のプロに選んでもらっている。
 
本気のカツカレーだ。
 
息をするのを忘れてそのカツカレーが紹介されている画面を眺めていた。
 
ちょうど深夜の放送で、私は魔法にかかっていた。
 
お腹が空いてきて、体がなにか食べ物を求め始める誘惑の時間。
しかもカツカレーなんて深夜に食べるなんてありえない、ヘビー級の食べ物。
 
手に入らないものほど欲しくなるこの恨めしい心理、
気がついたらヨダレが口いっぱいにたまって、机に落ちる1秒前だった。
 
 
“絶対、ここに行こう!”
 
自分の心と体が握手を交わし、脳に深く刻み込まれた。
 
 
わたしは食べることが大好きだ。
テレビをつけたら料理番組をやっていないか1番に探し、ニュースでも1番集中してみるのは最近注目の飲食店特集。
日々、情報が更新されるため昔の記憶は奥へ奥へ追いやられいつの間にか忘れてしまうことがほとんどだった。
 
しかしこのお店は記憶に刻まれたままで。
番組を見ていた当時、あまりにも美味しそうだったからすぐにその番組を録画したため、思い出す度にまた紹介映像をみて想いを馳せていた。
 
こんなにも想っていたのに、私の重い腰が上がるには時間がかかった。
 
なぜなら食いしんぼうよりも、まず先に面倒くさがりなのだ。
 
どこかに外出するなら複数の用事を一片に片付けたい。
天候が悪いと服が濡れたり靴が濡れるからよっぽどの用事ではない限り外には出ない。
その料理を食べるためだけに、外出をするなんて考えただけで億劫で仕方がない。
 
しかもお目当ての店がある場所は「赤坂見附」
 
普段の生活圏内から外れた場所にあった。
 
 
そうやってグタグタしていたらあっという間に時が経った。
 
 
2019年。令和元年、7月。
 
初めてカツカレーを知った日から4年の月日が経っていた。
そしてついに、その時がきた。
月日を重ねてぶくぶくと育った欲望がついにわたしを動かした。
 
 
 
その日わたしは、カツカレーを食べるためだけに雨の中、赤坂見附に降り立っていた。
いざ行ってみるとたったの40分でいける距離に気分が少し上がるも、
雨でテンションが下がったままマップを見ながら店に向かう。
 
天気が悪かったことと、夕方の営業開始すぐに向かった幸運が重なり、いつも行列がすごいと言われていたが店の外に人影はなし。
 
扉を開けると、すぐに席に案内してもらうことができた。
 
メニュー表を渡され、一瞥するもこれから言うセリフは決まっている。
 
「カツカレーお願いします!」
 
 
“嗚呼、ついに来た。”
実感をしたその瞬間から、何度再生したかわからないカツカレーの紹介VTRが、頭の中で勝手に再生されていた。
 
“このカツ、スプーンで切れるっすよ“
“店主がこだわりにこだわったカツに合うカレー”
“和豚もちぶた使用のカツ、お米マイスター厳選のお米“
 
わたしの心はまるでジェットコースターの落ちる寸前のやう。
店に来る前の憂鬱さはどこかに吹き飛んでいた。
 
ザワザワと心の中で盛り上がっていたら、
 
「お待たせしました」
という言葉とともについに念願の対面。
 
 
実物のカツカレーは想像より大きかった。
 
 
これだけ想いを寄せたから最初に全てを味わってしまったらもったいない。
 
 
だからまずカレーだけをひとくち……
スパイスが効いていてサラサラしたカレー。美味しいけどなんだか物足りない気分。
 
ふたくちめ、
カツをスプーンで切ってぱくり。
本当にスプーンだけですんなりカツが切れたことにまず感動した。
味は肉そのものの味わいが深く、甘い。脂身が甘いことにも驚いた。
豚肉が美味しいことをここで知った。
 
さんくちめ、
すぷーんの上で小さなカツカレーを完成させて
食べてみた。
 
その時の衝撃たるや、
 
“カツに合わせたカレー“の意味を
その時にやっと理解した。
 
ほんの少し前に物足りないと思ったことを
ここで謝罪する。
 
カレーが主役なわけではない、カツに合うカレー。両者を一緒に食べることで完成する料理だった。
計算されたこの味は、わたしの手を休めることを許さなかった。
 
スプーンを置くことなく最後まで食べ、
 
この上ない感動でいっぱいのわたしは
あまり得意ではない付け合わせのポテトサラダもしっかり食べていた。
 
見た目は結構ボリューミーなのにぺろりと平らげてしまった。
あんだけ大きいカツだったのに重くなかった。
 
過ぎた月日に比べて、このカツカレーとの時間は玉響の間のことだった。
 
やっと知れたヨダレの味。
想像より、複雑でシンプルだった。
 
 
 
 
***
 
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