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外大コンプレックス


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:川端彩香(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
「外大卒なん?」
「留学してたん?」
 
このあとに続く言葉はもれなく、
 
「じゃあ英語喋ってよ!」
 
である。
 
外大卒の方は共感していただける方が多いのではないだろうか。外大卒兼留学経験者の私にとっては、嫌なフリだ。だって喋られないから。
 
英語を好きになったきっかけは鮮明に覚えている。小学生の頃、私は母の運転する車に乗っていた。隣をKitKatの宣伝トラックが走っていった。自分でも何故なのかわからないが、この「a」がすごくかっこよく見えたのだ。他人に話しても意味がわからないと言われる。私もわからない。でも、それがきっかけで私は英語の勉強を始めた。
 
生活している中で見つけた英単語をひたすらメモ帳に書き留め、親や学校の先生や、ECCジュニアに通っていた友人に聞いた。校外学習に行った時は、街中で出かけた外国人に「ペラペ~ラ!」と話しかけた(吉本新喜劇座員・たいぞう氏のギャグである)。担任の先生に怒られたが、その外国人は困惑しながらも英語で返答してくれたのが嬉しかった。英語が話せるようになりたいと強く思った瞬間だった。
 
そしてその情熱を持つ続けた私は、中学でも英語だけは熱心に勉強し、高校は英語科へ進学した。
 
高校は英語科に入ったにも関わらず、年に大晦日と元旦の2日間しか休みのない、ブラック企業ならぬブラック部活に入部してしまった。当然、成績はがた落ちで、英語の成績も例外なく底辺に落ちた。
 
大学こそは! と、部活を引退してから必死に勉強し、第一志望の某外大に入学した。綺麗なキャンパス、たくさんいる留学生、英語を始めとする諸外国語を流暢に話す先輩たち、私はこれから夢のキャンパスライフを謳歌し、卒業する頃には英語を難なく話せるようになっている! ……はずだった。
 
3回生になっても私の英語は片言だった。授業をサボったことはない。前日に遊びすぎて寝坊し、遅刻してしまったことはあったが、欠席したことはなかった。真面目に受けていたつもりだ。でも、ペラペラに喋れるようになる気配は一向にない。
 
3回生の後期、アメリカへ4カ月間の短期留学へ行った。補助金が出るわけでもなく、通常の大学授業料プラス留学費用だ。親に頭を下げ、お願いした。幸い両親は「ずっと行きたがってたの、知ってるから」と、払ってくれた。
 
4ヵ月、真面目に授業を受けた。日本にいたとき同様、授業をサボったことはない。アメリカ人を始めとする、他国の友人もできた。でも、私の英語は、劇的に伸びることはなかった。片言に少し毛が生えたくらいのレベルで成長が止まった。
 
日本に帰国し、授業がすべて英語で行われる授業を取ってみた。少し難易度は高めだが、無理やりにでもついていけば、ちょっとはマシになるかもしれない。
そう思って友人を誘うこともなく一人で受講した授業は、「幼少期にアメリカに住んでました!」レベルの帰国子女ばかりだった。4カ月、付け焼刃のように留学していた私とはレベルが違いすぎた。私の遥か上のレベルで行われるやり取り、予習を完璧にしていてもわからなくなる授業、あまりにもレベルが低すぎて年下の帰国子女に取られるマウント。
 
いつしか大好きだった英語がコンプレックスになっていた。
 
そして2014年春。授業は真面目に出席していたので、卒業するには十分すぎる単位を取得していた。入学当初に思い描いていた姿とはまったく違う自分で卒業してしまった。両親が払ってくれた学費を無駄にしてしまった後ろめたさを持ちながら。
 
卒業後は地元の企業に就職した。特に英語を使わない仕事だった。外大卒で留学経験があると知られると、冒頭のフリがくる。私は外大卒ということも、留学していたということも話さなくなった。とにかく、英語から逃れたかった。
 
数年後、現在勤めている会社に転職した。ここでも特に英語を使う必要はない、はずだった。
 
履歴書に「外大卒」と書いていたのを上司にしっかりと覚えられていた私は、香港のお客様を担当することになってしまった。
「中国語じゃなくて英語で大丈夫だから!」と言われた。先方は大丈夫でも、私が大丈夫じゃない。
 
嫌々ながらも担当したお客様とは、商談時もメールでも、お互い英語が母国語じゃないこともあり、難しい単語が飛び交うこともなかった。わからなければ「ごめん、それどういう意味?」と聞くこともできた。外大時代の感じ悪い帰国子女のようにマウントを取られることもなかった。
 
こうなると欲が出てきて、やっぱり英語が話せるようになりたいと思うようになった。もっと英語が話せるようになれば、この人に対してもっと良い提案ができるはずだ。
 
英会話学校に通うには時間も費用も不足している私は、オンライン英会話を始めた。最初は自分に合う先生を見つけるのに苦労した。私の片言加減に気まずそうな表情を浮かべる先生もいた。でも、自分に合う先生を見つけることができれば、もうこっちのものだった。そしてオンライン英会話は、英会話学校に通うよりも英語力が伸びやすいと感じた。
 
その理由は、やはりマンツーマンであることだ。自分のレベルはどれくらいか、語彙力やリスニング力を鍛えるにはどういう教材を使えばいいか、など丁寧に教えてくれる。そして私の壊滅的な文法も、とりあえず単語を並べて発するだけで、綺麗な文章に言い換えてくれる。私はそれを学んで、次に活かすだけだ。オンライン英会話を利用し始めて1年ほど経つが、日常会話はなんとかできるレベルになったと思う。今では先生とフリーで30分会話することができる。
 
外大出ておいてそのレベル? と思う方もいるかもしれない。けれど、このレベルなのである。コンプレックスが完全に拭えたかと言うと、否だ。
それでも大事なのは変なプライドでマウントを取ることではなく、レベルは低いかもしれないが、自分がなりたい姿を目指して模索し、努力し続けることではないだろうか。
 
だから私は明日も、オンライン英会話で先生と会話をする。
明日は何を話そうかな。先日のガールズトークの続きでもしようかな。仕事の愚痴でも聞いてもらおうかな。
こうやって私はこれからも、理想の私に近づいていくのだ。
 
 
 
 
***
 
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2021-12-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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