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近所という風景画に溶け込んでみたら


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:mihana(ライティング・ゼミ8月コース)
 
 
「あれ、今日誰かと喋ったっけ?」
 
東京で1人暮らしをして、4年が経つ。
 
最初の2年は、順調だった。平日はバリバリ仕事をして、休日は友人と、話題のスポットに遊びに行く。27歳でスタートした初めての1人暮らしを、まさに謳歌していた。
 
ところが突如、新型コロナウイルスが流行し、外出自粛のムードが漂った。ほぼ毎日在宅勤務なので、会社の人との会話も、すべてパソコンの画面越しだ。下手をすると、1日中家から出ないで、誰とも喋らない……なんていう日もあったりした。
 
このままじゃいけない。とはいえ、外出して良いというわけでもない。
そもそも、仕事が終わるのは午後6時なので、遠出はできない。
 
というわけで、やむを得ず、私は夜な夜な、近所に繰り出すことになった。
 
最初は、スーパーとドラックストアに行き、いつまで経っても入荷しないマスクを探しつつ、必要な食材と買うということを、ひたすら繰り返していた。支払いを終え、「ありがとうございました」と言われるだけでも、「今日は人と話したぞ!」という、謎の達成感を抱いたりしていた。
 
何度も同じ道を通るうちに、駅前の商店街に、専門店がたくさんあることに気付いた。魚屋・八百屋・肉屋……どれも一見さんお断りの雰囲気を醸し出している。家の近くに、おしゃれなカフェがあるのも発見した。
 
正直、今まで「入ろう」と思ったことがなかった場所だった。それらのお店は私にとって、例えば風景画に描かれている、一つの建物のようなものだったのだ。
 
けれど、ある日、その風景画の中に世界に、入ってみたいと思うようになった。
風景に溶け込んでいる人々が、皆笑顔だったのだ。
 
「絵の中の世界に入ってみよう!」
そう決心したものの、初めは戸惑いも大きかった。
 
魚屋には値札がないから、商品の値段が分からないし、肉屋は量り売りで、どのくらいが適量かの判断が難しい。八百屋には、見たこともない野菜がたくさんある。「これください」と言うのですら、額に汗が滲んだ。
 
ただ、それは最初だけだった。
次第にお店の人と顔見知りになり、そこでの世間話が、楽しくなってきた。
 
もちろん、専門店なので、味も当然美味しい。
「うちのは、絶対うまいからね!」と、もっと美味しくなる魔法を、かけてくれるのだ。
 
家でごはんを食べる時も、お店の人を思い浮かべると、なんだか楽しい気分になる。
私の生活に、少しずつ、彩りが加わってきた。
 
昼ご飯を食べに、家の近くにある、おしゃれなカフェにも行くようになった。
 
在宅勤務をしていて、昼も自炊をすると、朝起きてから夜まで、全く外に出ないということになる。「昼を食べに行くこと自体が、いい運動になるはずだ」そんな言い訳をしながら、通い続けていた。
 
すると、「いつもので」という注文が、通じるようになった。31年の人生で、初めての経験だ。自分の居場所が出来たみたいで、なんだか嬉しかった。
 
店長のお姉さんとも、よく話すようになった。共通の趣味が入浴であることが分かり、「近所の銭湯は良いですよね」という話をするぐらい、親しくなった。
 
その日、近所の銭湯に行くと、お姉さんが居たので、びっくりした。「偶然ですね……」なんて言いながら、壁に富士山が描かれた内風呂に、一緒に入ったりしたのも、今では良い思い出だ。
 
私は、この2年間で、近所という風景画に、すっかり溶け込むようになった。
それは、私の人生を、確実に豊かにしてくれたと思う。
 
コロナ禍前の2年間、私は日々、忙しくしていた。平日は仕事で疲れて、家と職場の往復。休日は“楽しい場所”を探して、友人と出かけたりしていた。
 
しかし、今なら分かる。
遠くに“楽しい場所”を探さなくても、近所には楽しめる場所が、数多くある。
いつの間にか私が、それを風景のように、捉えてしまっていただけだ。
 
人は、近すぎる場所だと、逆に、その良さに気づけないのかもしれない。
いつの間にか、風景画のように固定されて、視界から消えるのだ。
もっと面白いことはないかと、外に楽しみを求めるようになる。
 
でも、風景画に溶け込んだ私は、思う。
「本当は近くにこそ、幸せがあるのかもしれない」と。
 
次の週末はどこに行こうかと、毎週悩んでいたあの頃よりも、
風景画の中での暮らしは、どこか落ち着いていて、温かくて、豊かだ。
 
だから、今日も私は、絵の中の世界を旅する。
「もしかしたらカフェのお姉さんと会うかもしれない」と、
少しドキドキしながら、銭湯に行くのだ。
 
 
 
 
***
 
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2021-12-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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