片頭痛になったおかげで
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:吉田智彦(ライティング・ライブ福岡会場)
頭痛で悩んでいる人が国内で4000万人もいるらしい。頭痛といっても、種類や原因は様々で対処法も違う。
大きく3種類あり、片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛に分けられる。頭痛持ちの人は、まず自分がどのタイプなのかを知ることが大切だ。
私は20代の頃から片頭痛持ちである。
それは突然起きた。テレビを観ていたら、画面の一部が光で欠けて見えなくなったのだ。てテレビ画面の問題ではなく、私の目がおかしいことにすぐ気づいた。
光で欠ける箇所が徐々に増え、目の前が光でチカチカして、テレビがまともに見えなくなった。
いったい何が起きているのか? このまま目がみえなくなってしまうのか?
私は怖くなって目を閉じた。すると今度は、急に気分が悪くなり、トイレに駆け込んで思いっきり吐いた。
ひとりきり吐いて、少し楽になったと思いきや、頭の片側にズキンズキンと脈を打つような、いやな強い痛みが襲ってきた。
これが、私の片頭痛の症状だ。目の異常は、閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれるもので、吐き気と合わせて、片頭痛の前兆らしい。
不思議なもので、嘔吐すると目は正常に戻った。そして片頭痛だけが残り、痛みは少しずつ弱くなりながらも、2日間ほど続いた。
それから、毎月2~3回ほど発症した。片頭痛は、いつ起きるのかがわからないのが厄介だ。めちゃくちゃ元気な時にでも、急に襲ってくる。
朝起きた瞬間や仕事をしているとき、車の運転中、食事中など、一日の生活の中でいつやってくるか分からないのは恐怖だった。
映画館で上映開始直後になったこともあった。当然、映画を観ることはできなかった。
病院にはすぐに行った。MRI検査を受けたのだが、特に異常なく、先生は「特に問題はないですね」と言うだけで、原因や対処法は教えてくれなかった。「問題あるから来とるねん」私は心の中で叫んだ。
納得できず、いくつかの病院でも診てもらったが、当時はどこも同じような回答だった。
ずっとこのまま、いつ起きるかわからない片頭痛に苦しまないといけないのか、と思うと身体だけでなく、次第に心も病んでいった。
自分と同じような症状の人が周りに全くおらず、理解者がいなかったので、精神的にもきつくなったのだ。
今だと、インターネットで簡単に同じ悩みを抱える人つながることができるし、対処方法など、検索すればいくらでも情報を集めることができる。
しかし、私が発症したのは、Window95が発売された1995年。当時は、インターネットの普及が始まったばかりで、今のようにネットで情報収集することはできず、当然SNSもなかった。
医師から「異常はありません」と言われても、前兆ありの片頭痛は変わらず襲ってくる
次第に、どうすれば少しでも症状を軽く抑えることができるのかがわかってきた。
目の異常を少しでも感じたら、すぐに目を閉じて横になる。1時間ほど、そのままじっとして目を開けると、目は正常に戻る。多少の吐き気はあるものの、嘔吐は減った。ズキンズキンと脈打つような頭痛は変わらないが。
しかし目を閉じて横になるというのは、仕事中だと難しい。そこで編み出した技が、まぶたを少しだけ開けるという方法だ。目を完全に閉じるほどの効果はないが、それでも少し楽にはなった。
15年ほど変わらず前兆付きの片頭痛はやってきた。それが40歳ぐらいから、頻度がだんだん減り、症状も次第に軽くなっていったのだ。
本当の理由は分からないが、1つだけ思い当たることがあった。
それまで夜更かしをすることが多く、不規則な生活で睡眠時間も少なかった。その夜更かしをやめたのだ。できるだけ毎日24時までには布団に入り、睡眠時間を7時間取るようにした。
気づくと、年々回数は減り症状は軽くなった。そして、24時までに寝ない日が続くと、症状が出やすくなることもわかった。
実際はどうか分からないが、私の中では、早く寝て7時間睡眠を取れば、片頭痛は起きない、と信じるようになった。
なので、夜ダラダラ過ごすことはなく、早寝早起きする習慣がついた。そして、今この記事を書いているのは12月なのだが、今年はまだ1度も片頭痛が出ていない。
長い付き合いであったが、ついにお別れがきたのかもしれない。このまま一生出会うことがなければいいが、片頭痛のおかげで得ることができたものがある。
まずは、健康になったことだ。片頭痛持ちで何が健康だ、と思われるかもしれない。しかし私はこの10年ほど、風邪をひいていない。そして、疲れることもあまりなく、元気だと感じることが多い。
早寝早起きをしているからだろう。この習慣がついたのは、片頭痛のおかげだ。
そして、もうひとつ大きなものを得ることができた。それは、人に寄り添うことができるようになったことだ。
片頭痛になる前は、病気で会社を休んだりする人がいても心配するどころか、なんでこんな大変な時に休むんだよ、気が緩んでいるじゃないのか、サボっているんじゃないか、と思っていた。
しかし、片頭痛になって症状に苦しみ、また周りに理解してもらえないことで更に精神的にも苦しんだ経験をしたことで、その人を心配できるようになった。
翌日その人が出社したら、自然と優しく声をかけるようなになった。そして、症状は違っても、苦しんでいる人がいたら、その思いを受け止め、自分にできることがあればサポートできるようになった。あくまでも以前の私を比べてではあるが。
もし、片頭痛になっていなければ、かなり傲慢なヤバい人生を歩んでいたんじゃないかと思うと、片頭痛には本当に感謝しかない。
実は、私の片頭痛がかなり減ったタイミングで、なんと今度は娘に片頭痛が発症した。
父として、また同じ症状を持つ者として、娘にも寄り添っているつもりだ。
脳神経外科で娘を診察してもらった時のことである。
先生から「ご家族に片頭痛のある方はいますか」と訊かれた。
「私が昔から片頭痛あります」
「じゃあ、お父さんの遺伝ですね」
「えっ、私が原因ですか?」
診察のあと、娘から「お父さんのせいやん!」と怒られた。
それでも、私が一番の理解者であることは娘も感じているようだ。
今、娘は偏頭痛持ち3年目の14歳なのだが、親子関係はとても良好である。これも片頭痛のおかげなのかもしれない。
***
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