メディアグランプリ

久留米の車窓から


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:前原正子(ライティング・ゼミ福岡会場)
 
 
12月。1年の締めくくりの月に入った。
最近、急に肌寒くなってきた。街中でも、ダウンやコートを着ていたり、耳当てまでしている人も見かける。今朝の気温は、9℃。空気が冷たい。青空が広がっているからか、この冷たい空気がとても清々しく心地よい。こんな日には、大きく深呼吸したくなる。12月の始まりの日だから、特にだ。
 
私の通勤手段は、もっぱら車だ。我が家から職場まで、徒歩で20分ぐらいの距離。車だと、5分。運動に歩いて行った方がいいのでは? という声が聴こえてきそうだが、いつも余裕なくバタバタ行くので、車になってしまう。余裕を持って、歩いて通勤すると、きっと色んな風景が見れて楽しいのだろうな、と想像してみる。運動にもなり、色んな風景がみれて、体も感性も磨かれて……、メリットがいっぱいだ。だが、この5分という短い車通勤にも、意外と楽しみがある。
車の中から、色んな風景が見えるのである。歩いていたら見えない風景。車だからこそ見える風景。
 
例えば。
目の前を走る車や対向車、駐車している車のナンバープレート。
1年ぐらい前に職場の仲間と出かけた時、車内での暇つぶし的に、エンジェルナンバー探しゲームをした。エンジェルナンバーとは、「天使からのメッセージが込められている数字」で、ゾロ目が出ると「良いインスピレーションを得られたり、勘が鋭くなっているとき」なんだそうだ。そして、数字にも意味があるということで、2時間ぐらいあらゆる車のナンバープレートを見て、みんなで盛り上がった。それ以来、無意識に探す様になってしまった。見つけた時には、反射的に、『今日もツイテル〜♪』と言ってしまう。これは、車の中だから、言えること。歩きながら、大声で言ったら恥ずかしい。
 
車のナンバーだけでなく、歩いている人も見える。両サイドの歩道を歩いている人や、お店の人、信号待ちをしている人、歩いている時以上に、沢山の人を見る事ができる。人間観察好きには、たまらない。
 
あとは、なんと言っても、街路樹が見える。これまた、両サイドの街路樹が、私が通るのを歓迎してくれている様な、両サイドから包み込んでくれる様な、そんな暖かい気持ちにさせてくれるから、大好きなのだ。
通勤路の街路樹は、季節で色がコロコロ変わり、色でも私を楽しませてくれる。今朝は、黄色! イチョウの黄色の葉っぱが、いっぱい! 木にも沢山あるが、冬に近付いてきた為か、歩道にビッシリと敷き詰められている。まるで、レッドカーペットならぬ、イエローカーペットのようだ。青空の下に、黄色の絨毯。すっごく爽やか! 気持ちが晴々する。
 
そんな悠長に言ってられるのは、車の中にいる私だけ。
黄色の絨毯を、せっせと片付ける人たちが見えた。
右側の歩道には、会社の制服を着た50代ぐらいの女性。竹熊手で、上手にイチョウの葉をかき集めている。竹熊手って、結構いい仕事するんだなぁ〜としみじみ思った。ザ、他人事だ。
反対の左側の歩道にも、目をやった。スーツのジャケットを脱いだ60代ぐらいの男性。こちらは、竹ぼうき。おじちゃんは、中々苦戦していた。でも、真剣さは伝わった。
そして、すぐに隣には、30代ぐらいの女性2人が、プラほうきと、ちり取りを使ってゴミ袋に葉っぱを詰め込んでいた。
 
私は、赤信号に引っかかり、停車した。
 
これは、絶好のチャンス! 色んな風景を見れる!
 
そこで1番に目に入ったのは、20代ぐらいの若い男性だ。この男性もイチョウの葉を集めていた。カッターシャツにダウンベストを着て、なかなかのおしゃれさんだ。若者は、おちゃらけたり、ズルしておサボりしそうなものの、その男性は、とても真剣に葉っぱを集めていた。その姿が、なんとも言えない。不器用なのに、どうにかして集めようとしている。小さい子供を見ている様だ。つい、クスッと笑ってしまった。これも車の中だからできる事。
 
信号の道を挟んで、向かいの歩道には、薬局の薬剤師さんか受付の方か、白衣を着た女性が、落ち葉を片付けていた。
 
世の中、捨てたもんじゃないな〜としみじみ思う。
 
世の中には、タバコやゴミ、空き缶などを、ポイ捨てする人もいる。全人類が、一斉に1人1つのゴミを捨てたら……地球は78億7500万個のゴミで溢れる。逆に、一斉に1人1つのゴミを拾ったら……78億7500万個のゴミが地球からなくなり、キレイになる。
みんなでゴミはゴミ箱へ捨てる様に、そして、落ちているゴミに気付いたら、拾ってゴミ箱へ捨て、地球を綺麗にしよう! と呼びかけがある。
 
だが、皆さんが集めていたのは、ゴミではない。イチョウの葉っぱだ。
故意的に誰かが捨てた物ではなく、自然現象で落ちてしまう葉っぱだ。誰の責任でもない。そして、葉っぱは1枚ではない。大量だ!
それを、この寒い朝に、これだけの人たちが、掃除をしてくださっているのをみた時、今まで以上に心の奥が温かくなった。嫌そうな顔は、ひとつも見えなかった。
 
一人の小さな行い(言動、表情)であっても、大勢の人がやると、大きな大きなものとなる! これは、何においても言えること。良い事も悪い事もだ。だったら、相手が喜ぶことをやりたいものだ。
 
帰宅時に同じ道を通った。歩道の絨毯は、片付いていた。皆さん、ありがとうございました! と呟いた。次は、私も葉っぱを集めようと密かに思った。
 
 
 
 
***
 
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2021-12-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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